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研究活動

研究プロジェクト

現代アメリカ政治の構造的変動とその政策的含意—イデオロギー的分極化と超党派主義のあいだで

計画書

研究代表者
(所属)
久保文明(東京大学大学院法学政治学研究科・教授)
研究関係者
(所属)
古矢旬(東京大学)、川人貞史(東京大学)、松本礼二(早稲田大学)、田中愛治(早稲田大学)、渡辺靖(慶應義塾大学)、岡山裕(慶應義塾大学)、菅原和行(釧路公立大学)、西川賢(日本国際問題研究所)、宮田智之(在ワシントン日本大使館専門調査員・慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程)、飯田連太郎(ジョージタウン大学博士課程・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、小浜祥子(ヴァージニア大学博士課程・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、平松彩子(ジョンズホプキンズ大学博士課程・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、梅川健(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、石川葉菜(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、松井孝太(東京大学大学院法学政治学研究科修士課程)
研究期間 2010年4月~2011年3月
研究概要

 今日、アメリカ政治のイデオロギー的分極化が著しい。オバマ政権発足後だけをみても、2009年2月の大型景気刺激策に対して共和党下院議員は1人も賛成投票をせず、同年12月に上院で可決された健康保険改革案についても共和党からの賛成票はゼロであった。他方で、外交・財政・社会保障・貧困・宗教などに関わる争点において、超党派主義を回復ないし模索する具体的な動きや提案は少なからず存在する。分極化についての批判的研究は、日米ですでに多数蓄積されているが、それを克服する動き・対話・試み(たとえばスタンレー財団によるDerek Chollet、Tod Lindberg, and David Shorr eds, Bridging the Foreign Policy Divide, 2007 はその試みである)、およびその政治的基盤についての分析はさほど多くは存在しない。ここに、本プロジェクトを実施する大きな意義がある。
 とくに外交については、オバマ政権自身、民主党左派・反戦派と共和党保守強硬派および新保守主義者を排し、民主党穏健派と共和党穏健派からなる連合的チームを構築した。今後、この試みがどのように展開するかは、学術的にも実践的にもこれ以上ない格好のケース・スタディといえる。
 本研究はアメリカ政治の理解にとって中核的重要性をもつテーマについての研究プロジェクトであるが、同時にこんにちの日米関係についても、イデオロギー的分極化で特徴づけられるアメリカ外交における対日政策という文脈から考察する。アメリカ政治においては例外的に、対日政策はこれまでイデオロギー対立の埒外にあり、アーミテージ=ナイ報告書にみられるように、日米同盟に対してはほぼ超党派的な支持が存在してきた。ただし、かつて通商問題が突出していた時代には党派的な性格は強く存在した。また、こんにち日本側の政権交代により従来と異なる対米政策をもつ日本と直面することを余儀なくされ、アメリカにおいて、これまでの対日政策を維持しようとする議論と同時に、かなりの譲歩を伴ってでも同盟国としての日本を維持しようとする主張、そして潜在的には日本の重要性を落としていく発想が生まれる可能性も存在する。これと、オバマ政権の対応、政党政治およびイデオロギー政治との絡み方、および価値観重視の外交論と経済重視の外交論の交錯の仕方を慎重に分析していく必要がある。このように、アメリカの対日政策を、単に日米関係の日々の展開のレベルで分析するのではなく、アメリカ政治全体のダイナミクスのなかで、そしてその一部として観察していこうとするのが、本プロジェクトの特徴である。
 研究手法としては、イデオロギー的分極化とのその動向については、計量的な手法(主として川人、田中)と聞き取り調査および文献調査(久保、古矢、松本、岡山、渡辺)に依拠する。政治思想・市民権については、松本が比較政治的視座および憲法論的視座を交えて分析する。外交政策全般および日米関係については、久保が担当する。ただし、今後、日米関係の専門家を数人日米において補充することも計画している。聞き取り調査、資料の収集整理、データの加工などに関しては、部分的にサポート・メンバーにも作業を依頼する。

報告書

研究代表者
(所属)
久保文明(東京大学大学院法学政治学研究科・教授)
研究関係者
(所属)
古矢旬(東京大学)、川人貞史(東京大学)、松本礼二(早稲田大学)、田中愛治(早稲田大学)、渡辺靖(慶應義塾大学)、岡山裕(慶應義塾大学)、菅原和行(釧路公立大学)、西川賢(日本国際問題研究所)、宮田智之(在ワシントン日本大使館専門調査員・慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程)、飯田連太郎(ジョージタウン大学博士課程・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、小浜祥子(ヴァージニア大学博士課程・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、平松彩子(ジョンズホプキンズ大学博士課程・東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、梅川健(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、石川葉菜(東京大学大学院法学政治学研究科博士課程)、松井孝太(東京大学大学院法学政治学研究科修士課程)
研究期間 2010年4月~2011年3月
実績概要

1. 下記のシンポジウムを開催し、本プロジェクトの中間報告とした。
USJI Week Seminar "The Partisanship and Bipartisanship in Contemporary US Politics." September 9th, 2010. 報告者: 以下4名、コメンテーター: クライド・ウィルコックス(ジョージタウン大学)、清原聖子(明治大学)、司会: 久保文明(東京大学)
平松彩子、"Ideology Caucuses and Party Polarization in the U.S. House of Representatives."
梅川健、 "Presidential Signing Statement and Conservative lawyers,"
飯田連太郎、“Interest Groups, Party Polarization, and the Structure of Abortion Debate”
菅原和行、 “Did President Obama's Appointments Overcome Ideological Differences?”
アメリカ議会下院におけるイデオロギー的な議員連盟が果たす役割について、人工妊娠中絶問題とイデオロギー的分極化との関係について、保守派法律家と大統領署名声明との関係について、そしてオバマ大統領による政府高官人事とイデオロギーの関係について、4つの報告が行われた。
2. メンバーおよびサポート・メンバーが担当領域に関して研究を進め、下記のような研究成果を挙げた。とくに、オバマ政権の性格、人事、妊娠中絶問題との関係、保守派法律家集団の役割と性格、およびシンクタンクなど、いわゆる政治的インフラストラクチャーが果たす党派的および超党派的役割について、研究の進展をみた。

活動内容・
研究成果

1.上記シンポジウム
2.久保文明他編『オバマ政治を採点する』日本評論社、2010年10月(久保、菅原が執筆)
3 3. 久保文明編『アメリカ政治を支えるもの—政治的インフラストラクチャーの研究』日本国際問題研究所、2010年12月
4.菅原和行『アメリカ都市政治と官僚制―公務員制度改革の政治過程―』(慶應義塾大学出版会、2010年11月)。i-296頁。
5. IIida, Rentaro. “Inside the Issue Evolution: Dynamic Network Analysis of the Abortion Debate 1970-1994” American Political Science Association Annual Meeting, Washington, DC. 2010-09-04.
6. Iida, rentaro. "Inside the Issue Evolution: Dynamic Network Analysis of the Abortion Debate 1970-1994" Political Network Conference, Duke University, Durham, NC. 2010-05-20.
7. 宮田智之「政治インフラの形成と財団」久保文明編『アメリカ政治を支えるものー政治的インフラストラクチャーの研究』(日本国際問題研究所、2010年)、20−42頁。
8.宮田智之「アメリカのシンクタンク業界の変容ーリベラル系の躍進を中心にー」(研究発表)東京財団・アメリカ研究会2010年12月17日
9. 梅川健「レーガン政権における保守的法律家の憲法解釈と政権運営」、比較政治学会研究大会報告、2010年6月於東京外国語大学。

関連イベント
のURL

https://www.waseda.jp/usji/week/sep2010#event5

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