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第22回「小説すばる新人賞」受賞の現役早大生

朝井リョウさん(文化構想学部)2010年度取材

これまで多彩な文筆家を生み出してきた早稲田大学の第一文学部と第二文学部は、2007年に文学部と文化構想学部とに再編成されました。2009年その文化構想学部から、初のメジャーな文学賞の受賞者が誕生! 桐島が部活をやめるという噂によって、地方の公立高校に通う高校生に広がる小さな波紋を描いた『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウさんです。

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Asai Ryo

1989年生まれ、岐阜県出身。文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回「小説すばる新人賞」を受賞。受賞時は「平成生まれの現役早大生が受賞」と評判になった。

「小説すばる新人賞」を受賞して

 2010年4月、受賞作のポスターが地下鉄早稲田駅の構内にデカデカと貼り出され、早稲田界隈の本屋では目立つところに平積みに!という経験をした朝井さんは、現在、文化構想学部3年生。2009年に「小説すばる新人賞」を受賞して、「現役早稲田大学生作家」「文化構想学部初」などとキャッチコピーがつけられるほどの評判となりました。そんな賞を取ると、大学から褒められたり祭り上げられたりするんじゃないでしょうか。

 「文構(文化構想学部)って、作家や創作にたずさわることを目指している人が多いので、すごくキビしいんですよ。むしろ『一作賞獲ったからって何?』みたいな雰囲気で(笑)。大学側が喜んでくれてるのかもイマイチわかんないんですよね。別に先生から何か言われたこともないですし」

 コメントすらなしですか!・・・それもある意味早稲田らしい反応なのかもしれません。なので日々の生活も、執筆の時間が増えたという以外は授業に出たり友達と遊んだりと、まったく変わらないとのこと。

 「ほかにもいろんなことやってる人がいるので、そんなに珍しくないんじゃないですかね(笑)。でも、もともと一文・二文は作家とか脚本家とか文化の面で活躍されている方をいっぱい輩出している学部だったんで、文構もそうなればいいなと思っています。とりあえず、そのリストに載せてもらえるようにはなったのかな~と思うとすごくうれしいですね」

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足を引きずりながら現れた朝井さん。「100ハイ(※)に出たら、足痛めちゃったんです。サークルの友達と完歩してきましたよ!」

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先生は褒めてくれなくても(!?)戸山キャンパス生協は朝井さんを応援しています!

(※)100ハイ(100キロハイク)
埼玉県本庄市の本庄キャンパスから、東京都新宿区の早稲田キャンパスまでの、100キロ超の道のりを2日間かけて歩き通す!という学生主催のハードなイベント。早慶戦、早稲田祭とともに「早稲田三大行事」と並び称され、凝った仮装で参加する人も多い人気のイベントとなっている。

「創作」を学ぶということ

 文化構想学部は6つの「論系」に分かれていますが、朝井さんは文芸創作を学ぶ「文芸・ジャーナリズム論系」を専攻しています。創作の授業とは、どういうものなのでしょうか。

 「僕が以前受けていた授業で刺激的だったのが・・・課題の本を与えられて書いたコラムが匿名で印刷されて、投票で順位をつけられて。それで先生が1つずつ評価してくださるんですが、あまり褒めないんですね。だいたい厳しいことを言われてしまう」
作家を目指しているとはいえ、さすがにこの授業は精神的なダメージが大きそうです。
「実際すごくヘコみはするんですけど、先生がプロの作家だったり評論家だったりという方々なので、信頼できて、けなされても受け入れられるというか、そうかそうかという気持ちになって聞けるのでいいですね」

 現在は、堀江敏幸先生のゼミに所属しています。ゼミに入るための試験は、「鐘」「白」「砂」のどれかをテーマに4000字書くというもの。見事合格した朝井さん(ちなみに選考があったのは受賞より前)ですが、その提出課題は選考に使われただけでなく、現在教材としてゼミ生に回され、合評を行っているのだそうです。

 ゼミの様子を拝見すると、意外と(?)和気あいあいとしていて、先生も優しい口調。とはいえ穏やかな雰囲気の中にも「この言葉を選んだ理由は」「表現方法が独特。作者はこんな人なんじゃないか」「この表記は正しいのか」など、各作品を細かく読み込んだ批評が次々飛び出します。自分の作品への批評を聞くのも緊張するものですが、批評する方も真剣勝負。感じたこと、共感できなかったこと、疑問点などあらゆる面から、明確に言葉にして発表しなければなりません。お互い感性を試され、ぶつけ合い、それを消化して自分の次の作品につなげる。これが『創作」の学び方のひとつなのですね。

 「『試されてる感』のある授業が多くて。めちゃめちゃヘコんだりするんですけど、アメとムチというか、たまにアメが来たときにテンション上がる。ちょっとでも褒められると、そこでがんばれる感じです」

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朝井さんが文化構想学部を目指したきっかけはなんと、過去問で出会った、堀江先生の『スタンス・ドット』(新潮社刊『雪沼とその周辺』に所収)という短編。「僕も学生の頃は参考書に出てた本を買ったりしていたんで、こうして若い人につながれば、こんなうれしいことはないですね」(堀江先生)。受験勉強の中にも、こんな出会いがあるんです。

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堀江先生自身が、三島由紀夫賞、芥川賞、川端康成文学賞などを受賞という経歴の持ち主である贅沢なゼミ。批評者はその場で指名されることもあって、誰もが気を抜けない状況で活発に意見を述べ合っています。ゼミ生の作品が終わったら、既製の有名作品を読むのだそうです。

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「朝井君は気さく、気取らない」と口を揃える、堀江ゼミの仲間の山本 和(より)さん(右)、藪下 周さん(左)と。「明るくて、幹事の役割なんかを率先してやってくれて、生活を楽しんでいて・・・すごくフツーな感じです(笑)」。ゼミ中とは打って変わって、ふざけ合いながら写真に収まるみなさんでした。

次回作のテーマは「男子チア」

 『桐島、部活やめるってよ』で高校生活を描いた朝井さんの高校時代は、文芸一色というわけではなかったようです。バレー部で活躍し、友達と騒いだり遊んだりしながら、底の方に創作が好きという気持ちを持ち続けました。そして、「部活や文化祭や体育祭を楽しんでいる自分の様子をどっかで見てる自分がいる」という客観的視点を携えて書き上げた本作品には、現役高校生からの共感も広く得ています。

 現在は秋に刊行予定の次回作に取り組んでいるとのこと。執筆と学業を2本の柱としているのでアルバイトやサークル活動は押さえ気味ですが、「みんなとワイワイ」が大好きな朝井さんは友人と温泉に行ったりと充実した毎日を送っています。
「高校生のとき思い描いていた大学生活は、1年生のときに全部やってしまった感じがあります。早稲田っていう響きから、行ったら何でもできる、なんでもあるんじゃないかって夢を見ていたんで、大学入ったらすっごい遊んでました(笑)。今はちょっと落ち着いたかな?」

 多くの学生にとっては大変な苦行!である「早起き」を自らに課し、執筆時間を確保しているとのこと。次回作は早稲田大学の男性チアリーディング・チーム「SHOCKERS」に取材した作品。世界的にも珍しい男子チアの生むドラマを、高校時代に応援団で「バカみたいに」練習した経験を持つ朝井さんが、独自の視点で描いています。「SHOKERSそのものもすごく魅力的なので、これはチアリーディングを世の人達に知ってもらうためにも書きたいと思って」。その迫力と笑顔で観客をとりこにするSHOKERSがどんな小説になるのか楽しみです! 文化構想学部で学んでいるということは、朝井さんにどんな影響を及ぼしていますか?

 「ここに入らなかったら自分は書いてないかもしれない。この学部に入ったからこそ、今の自分があるんだなと思います。高校のときは作家の人が教鞭を取ってるっていうのが現実感なくて。堀江敏幸さんて実在するんだ、みたいな感覚だったんで、その人に教えてもらえるってのは早稲田じゃないとないのかなって思いますね」

 「文構は入ってから何をするかなので、受かって『やったー』で終わったら、本当になんにもしないまま卒業することになってしまいます。入ったらこの先生の授業受けたいとか、この先生のゼミに入るために1年のうちにちゃんとした成績を取っておきたいとか、考えておいた方がいいと思いますよ」

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ストリートダンスのサークルにて。朝井さんが得意なのは、「ロッキン」という、SMAPの中居くんがよく踊っている種類のダンスなのだそう。執筆が忙しくなり、あまり練習に参加できなくなってしまったにも関わらず「早稲田祭には出なよ」と温かく迎えてくれるサークルです。

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空き時間には戸山キャンパスの図書館で執筆することも。「外のほうが集中できることも多いので」。

『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ・著 (集英社)1260円

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地方の公立高校の野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部に所属する5人の日常。バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が部活をやめたことから、小さな波紋が広がっていく・・・。

「なかなか決められず、結局最初の一文を持ってきた」という印象的なタイトルは、週刊誌で「鳩山、県外移設やめるってよ」とモジられて見出しにされたことも。

「桐島、部活やめるってよ」特設サイト