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高度情報化社会に欠かせない最先端のシステム設計をソフトウェアとハードウェアの両面から行う柳澤研究室

ゼミ紹介

高度情報化社会に欠かせない最先端のシステム設計をソフトウェアとハードウェアの両面から行う柳澤研究室

公開日:2012/12/28

現代社会が抱える問題のうち、電子や光の技術を使って解決が図れるものについて検討する研究室です。暗号回路、画像処理、センサネットワーク(無線ネットワークの一種)、低消費電力回路など、研究テーマは多岐に及びます。あるときはソフトウェアの開発による解決をめざし、またあるときは新たなハードウェアの設計で方法を探るという、ソフトとハードの両方を扱っているのが特徴であり、強味です。

研究室DATA

柳澤 政生 教授
柳澤研究室(基幹理工学部 電子光システム学科)
所在地:西早稲田キャンパス63号館

「ハードウェアは、ソフトウェアより柔らかい」とは!?

 情報通信関連のシステムやセンサネットワーク(無線ネットワークの一種)など、ネットワーク工学を専攻分野とする柳澤研究室。具体的には、現代社会のさまざまな問題解決のために、ソフトウェアつまりコンピュータのプログラムと、ハードウェアの開発・設計をしています。

 実は、ソフトウェアとハードウェアの両方を扱っていることが、柳澤研究室の強みなのだとか。「ハードウェアはソフトウェアより柔らかいですからね」と柳澤先生。え? ハードなのに柔らかいって、どういう意味ですか? 「ソフトウェアは、ハードウェアの上で動くものです。言い換えれば、ハードウェアという固いガードの中でしか自由が利きません。ハードウェアの設計を超えて、ソフトウェアだけでなんとかしようとしても限界があるんですよ」。

 けれども、柳澤先生の研究室のようにハードウェアから開発ができれば、自由度はもっと広がります。それが、「ハードウェアのほうが柔らかい」ということなのだとか。「ハードウェアを作れるメリットは、そこにあるんです」。もちろん、適材適所でケースバイケース。常にハードウェアがよいということではなく、ソフトウェア的な解決方法が効率的で効果的であれば、そのときはソフトウェアでの問題解決を探るそうです。

 では、具体的にはどんな研究をしているのでしょうか? 現在、主力となっている研究のひとつが暗号回路です。 インターネットや電子機器を通じて多様な情報をやり取りする現代では、暗号化の技術は欠かせません。たとえば、電車を乗るときに利用するSuicaなどのICカードにも、情報を盗まれないように暗号回路が入っています。「悪い人がいたら、プロテクトを壊して情報を盗もうとするかもしれません。それを防ぐには、強固な暗号回路を作る必要があるんです」と柳澤先生。

 修士1年の谷口さんは、この暗号回路の研究に携わっています。「暗号回路に攻撃が加えられた場合、その攻撃を検出する方法を研究しています」。 ユニークなのは、強固な暗号回路の作成を研究する人がいる一方で、どんな強い暗号回路をも破れる攻撃のための回路を研究している人もいるということ。「守ったり、攻撃したりそれぞれの立場で研究している学生がいることで、切磋琢磨し合ってよりよいものが開発できるんです」(柳澤先生)。

取材に伺った日は、3年生が『Data Structures in C』という、ソフトウェア開発に欠かせないC言語について書かれた英書を、ひとり数ページずつ分担の上、和訳して発表していました。発表には何日もかけた準備が必要です。

3年生ひとり一人に、4年生と大学院生がそれぞれ「指導担当」として付きます。発表後は、指導担当を中心に、発表内容や発表の方法に対する感想や意見、質問などが相次ぎました。

「電気がなくても動く回路」の開発で、停電時も安心に!?

 さて、柳澤研究室で自分が興味を持ったテーマを研究できるようになるまでの道のりを見ておきましょう。
 現在、研究室には3年生の後期に配属されます。もちろん、いきなりソフトウェアやハードウェアは作れないので、最初はプログラム言語の習得から。C言語(ソフトウェア言語のひとつ)の英書購読などもあって、3年生はなかなか苦労しているとか。柳澤先生によると英書で読む意味はきちんとあって、「この業界独自の専門的な単語が多いので、原書で正しい意味を理解しておかないと国際的に通用しません」とのこと。ただ、文法自体は難しくないそうなので、最初は読むのに時間がかかっても、慣れればみんなスラスラ読めるようになるそうですよ。基本を学んだら課題が与えられ、それを解決するプログラムを実際に作成して練習を積みます。

 ハードウェアについても、ソフトウェアと同様にVerilogという専用の記述言語を勉強します。ハードウェア言語を学ぶと、自分の好きな回路が作れるようになります。さらに、LSI(大規模集積回路)の仕組みについて書かれた英書なども読み込んで、4年の前期に卒業論文のテーマを見つけて、自らの研究をスタートさせます。

 研究自体は、試行錯誤の繰り返しで簡単ではありませんが、研究室の雰囲気は非常によいそうです。「研究室の入り口にスペースがあって、みんなでよくしゃべったりしています。 リラックスしつつ研究も一生懸命できる感じですね」(谷口さん)。そして、先生やOBの面倒見がいいのも、柳澤研究室の特徴。修士1年の若林さんは、大学の授業以外でも研究室OBを訪ねて、直接研究の話を聞くことがあるそうですが、「そんなときも、柳澤先生は忙しいのにわざわざ時間を空けて一緒に来てくれます。先生、OB、先輩がそれぞれサポートしてくれるので、研究はしやすいですね」。

 最後にもうひとつ、 柳澤研究室で現在行われている研究をご紹介しましょう。通常、ハードウェアやソフトウェアを動かすのには電気が必須。しかし、電気がなくても自ら発電して動く回路作りに取り組んでいる学生がいるそうです。「もし自分で発電する回路ができれば、たとえば大震災で停電になったとしても最低限のシステムを稼働できて、人々の安全に貢献できます。実用化まではまだまだ遠いと思いますが、ぜひ実現させたいですね」(柳澤先生)。

 ソフトウェアとハードウェアのいずれか、あるいは両方を使えば、非常に多くの問題を解決できる気がしてきました! 実際にプログラムやハードウェアを完成させるまでは、たくさんのハードルがありそうですが可能性は無限大と言えそうです。

柳澤研究室で過去に設計した回路の一例。ボードの仕組みによって、自分たちで完成させられる場合もあれば、設計図のみを作成して専門業者に仕上げてもらう場合もあるそうです。

柳澤先生のネクタイピンの中には、なんとLSIチップが!(LSIは、多くの半導体素子を組み込んだ大規模集積回路のことです)

先生からのメッセージ

 まずは、高校の勉強をしっかりやってください。それがとても大切です。プログラミングが好きな人は大歓迎ですが、研究室に入ってからみっちり鍛えますから(笑)、やる気さえあれば心配は要りません。プログラムは少しでも間違いがあると正しく動きませんから、細かい間違いを見つけて修正するのは大変です。でも、たとえば「間違いを自動的に修正するソフトウェア」を開発する、という解決法があります。このように、困ったことや問題は次の研究につながります。柔軟な発想を大切にして欲しいですね。

先輩からのメッセージ

 この研究室を選んだのは、扱っている分野に興味があったことと、いろんなことに挑戦できると思ったからです。現在は、スマートフォンなどに内蔵のセンサーを使って周囲の情報を取得し、人間の行動を推定するという研究をしています。高校の頃はつい得意な科目ばかりを勉強しがちですが、大学の研究では幅広い知識が求められます。今のうちから、さまざまな勉強に目を向けて、興味の幅を広げておくといいですよ。

修士1年・若林 賢さん

先輩からのメッセージ

 早稲田の理工系は人数が多く、研究室のジャンルも数も多彩です。 だから、気になることがあれば他の研究室にちょっと話を聞きに行くことができ、私も自分の研究で考えがコリ固まったときに、同じフロアの別の研究室に話をしに行ったら思わぬ発見をしたということがあります。これって、早稲田の理工ならではのメリットだと思います。

修士1年・谷口 寛彰さん

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本

「ひらめき力」の育て方』大嶋光昭・著(亜紀書房)

 早稲田理工のOBであり、パナソニックでカメラなどの手振れ補正技術を発明・開発した人の著書です。手振れ補正の技術を発想してから、実際に完成に至るまでの苦労話や、製品化までの具体的な流れが書かれています。
 ひらめきは、何もしないである日突然パッと浮かぶものではありません。普段からいろいろなことを注意して見ておくと、それがある瞬間につながりあって生まれるのだということが理解できるのではないでしょうか。