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社会の在り様を探るための思考力を身に付ける 若林ゼミ

ゼミ紹介

社会の在り様を探るための思考力を身に付ける 若林ゼミ

公開日:2014/11/14

社会学の視点を通して、私たちが所属する社会がどのような仕組みで成り立っているのかを考えていくゼミです。そのために人類学、歴史学、地理学、建築学、文学、認知科学、哲学なども用いながら、多角的な視点で物事を考えていきます。自らが設定したテーマに即した資料を読み込んだり、同級生たちと熱のこもった議論を交わしていくことで、独自の意見をまとめ上げる力を醸成していくのを一つのゴールに定めています。

研究室DATA

若林 幹夫 教授(教育学部 社会科 社会科学専修)
演習I(社会学)A/演習II(社会学)A
所在地:早稲田キャンパス16号館

身近なテーマを切り口に、社会を分析する

 一見すると同じように見える社会であったとしても、時間や空間が変わればその形は大きく変化していきます。たとえば、大人と子どもでは過ごす時間軸が異なりますし、東京と大阪といった空間の違いも社会の形に微妙な変化がもたらされるもの。そうした違いがあるのにもかかわらず、私たちは自分の身の回りの出来事を“当たり前”のように繰り返されているものだと認識してしまいがちです。

 テーマに「時間と空間の社会学」を掲げる若林ゼミでは、そうした“当たり前”をいったん括弧にくくって、改めて自分たちが生きている世界がどういう仕組みで出来上がっているのかをフレッシュな視点から考えていこうとしています。社会は複雑に多様な要因が絡み合って成り立っていますので、社会学では文系理系を問わない多種多様な手法を使うことで、様々な方向性から分析していくのが大きな特色となっています。

 実際、若林先生は自身の研究で電話や地図、あるいは夏目漱石など身近な存在を切り口に、時間と空間の違いによる社会の在り様を浮き彫りにしてきました。学生たちも身近な場所から多彩なテーマを取り上げて学びを重ねており、選ばれているテーマもディズニーランド、ソーシャルワーク、商店街、深夜ラジオ、ワセジョなど、まさにバラエティ豊か。守備範囲が広範な社会学ならではのことでしょう。

 ゼミ生の一人、4年生の川田さんは、子どもと触れ合うサークル活動での経験から、「子どもの本から見る社会」を卒論テーマに選びました。
「サークル活動を通して、子どもの本が病院などの公共の場に置かれていることに気づいたんです。調べてみると、出版不況にもかかわらず児童書の売れ行きは堅調に推移していることがわかりました。そうした状況を見る中で、社会そのものが子どもに何かを期待しているのではと考えるようになり、このテーマを掘り下げていくことにしたんです」
自分の日常の中の興味をきっかけに、社会というものを見つめていく。まさに社会学の醍醐味を川田さんは体現しています。

ゼミ開始時は自分の意見の発表の仕方がつかめなかった3年生も、ゼミ合宿での4年生の様子に刺激を受け、秋ごろからは発言が飛び交うようになっていく。それが毎年のパターンだそうです。

3年生のゼミの直後に行われる4年生のゼミ。3年生の1年間で大きく成長したゼミ生たちによる、さらに活発な議論が繰り広げられます。

自ら調べ、考える力を身に付ける場として

 4年生は基本的には卒論の完成を目指してゼミを進めていきますが、3年次はその前段階の基礎を身に付けていくことになります。テクストとなる本の輪読を行いつつ、夏季休暇でレポートを作成し、年度末にはゼミ論文を仕上げていく。3年生がまとまった分量の論文を書くというのは、すべてのゼミでやっていることではありません。慣れない作業でどの学生も悪戦苦闘をするそうですが、そこで悩んだ経験が貴重な財産になると若林先生は指摘します。
「上手に書けずとも、3年生でそれだけの長さのものを作ったことが自信に繋がりますし、心の余裕を生み出す“蓄え”となります。そもそも文字として書いてみて初めて気づくこともたくさんあるんですよ」(若林先生)

 大学は学生が勉強をするきっかけを提供する場。ならば、学生自らの力でモノを考えていく力を身に付けさせていきたい――若林先生はそんな風にもおっしゃっています。実際、ゼミでの指導においても、若林先生は学生の意見に対して的確な指摘を入れる一方で、決して結論をご自身で提示するようなことはせず、「あの本を参照するといいよ」というような形で自主性を促していました。

 学生同士の議論も活発。取材に訪れた日のゼミでは、一人の学生が「観光と社会」をテーマに発表をしていましたが、「バーチャルリアリティが観光地の代替になるかもしれない。富士山の頂上の風景を登山せずに楽しむという選択肢もある」という見解には、「自力で登山すること自体が楽しみだから、そうなる可能性はない」と言う人もいれば、「苦しい運動が苦手な人は、山の頂上の風景などを労せずに見られるのはうれしいと思う」という正反対の意見を発する人もいるなど、熱のこもった議論が繰り広げられていました。このゼミのメンバーは、飲み会でも社会学についての議論を本気でかわすことが多いとのこと。こうした議論や読書経験を通して多様な視点を吸収することで、多角的に考えていく力をゼミ生たちは知らず知らずのうちに身に付けているのです。

 人と意見を交わすことで考えの引き出しを増やし、自分の中で思考のキャッチボールができるようになれば、学問上、有用なのはもちろん、卒業後、仲間とともに仕事をしていく際にも重要な力となるはず。若林先生は社会に出た先を見据えた指導も心がけているそうです。

夏休みの課題としてまとめたレポートを発表中。若林先生は学生が自分で結論を導くことができるように促すような質問を重ね、さらにゼミ生の体験談なども飛び出し、盛りあがります。

毎年3月には論文集を発行します。4年生の卒業論文だけではなく、3年生も論文を掲載。長い文章を書いて考えをまとめた自信が、学生たちをより深い学びに導くのです。多彩なテーマに興味がそそられます!

先生からのメッセージ

みなさんが大学に入学した後、専門分野の学びを進めていく中では、遅かれ早かれ行き詰ってしまう場面に遭遇することになります。高い壁を前に諦めてしまいそうになるかもしれませんが、その瞬間こそがチャンスなのです。行き詰ったということは、過去の自分の蓄積だけでは解決できないのが明らかになったということ。今までとは違う方向を見ていくための絶好の機会だと捉えて、さらなる自己研鑽に励んでほしいですね。知的好奇心と諦めないタフさがあれば、そうした場面に遭遇してもしっかり学びを進めていけるのだと思います。

先輩からのメッセージ

振り返ると3年生の頃はうまく自分の考えが話せないでいたように思います。けれども、1年半にわたって若林先生や同級生たちとじっくり議論を交わしていくうちに、考え方を論理的に発信することができる自分がいることに気づきました。思ったことを言葉にして表現できる力が身に付いたことこそが、若林ゼミで得た大きな収穫です!

4年・川田 奈々さん

先輩からのメッセージ

社会学といっても具体的にイメージできない受験生も多いでしょうが、日常の疑問を明らかにしていくことができる学問だと言えば、興味が沸いてくるのではないでしょうか。僕自身「当たり前のことについて科学する」という紹介文に魅かれて、社会学を専門とする若林ゼミを選びましたが、まさに思ったとおりの醍醐味があふれているゼミだと思っています。

3年・大内 佑介さん

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本

社会学入門一歩前』若林幹夫・著(NTT出版)

高校生くらいの人たちに、社会学を勉強する前の準備運動のように読める本を書きたいと思って、この本を書きました。タイトルの「一歩前」という言葉には、「入門の一歩手前」と、「入門して一歩前に進む」という二重の意味を込めました。学者の名前や学説の教科書的な説明はなるべくせず、普通に社会を生きている当たり前の事実から、「社会学すること」の感覚を掴めるように書いた本です。

社会学入門』見田宗介・著(岩波新書)

『一歩前』の後は、やっぱり入門しなきゃ、というわけで、真木悠介のペンネームでも知られる現代日本を代表する社会学者・見田宗介先生による入門書です。大学1年の時に見田先生の社会学の授業をとることがなければ、私は社会学者にはならなかったかもしれないし、もしなったとしてもまったく別のタイプの社会学者になっていただろうと思います。詩的・文学的な言語と社会学の論理の結晶のような本。

※おすすめ書籍の紹介文は、若林先生によるものです