
ゼミ紹介
人と人とのかかわりを読み解く社会科学専修(大学院)若林ゼミ
公開日:2009/04/01
学部3・4年生のゼミでは、「時間と空間の社会学」をテーマにしています。「時間」も「空間」も言葉にしてしまうと抽象的で捉えどころがありませんが、学校の時間割、季節の移り行きと年中行事、家屋やビルなどの建築物の形や都市空間のあり方など、私たちの社会生活はさまざまな時間と空間を「枠」として営まれています。そうした「時間と空間」の社会的なあり方と、「時間の中の社会」「空間の中の社会」について考えることで、「社会って何だろう」という問いに迫るのが、このゼミのテーマです。大学院ではそうした問題意識をより専門的に深め、大学院生個々の研究テーマに即した指導をしています。
研究室DATA
若林 幹夫 教授
若林研究室(教育・総合科学学術院)
所在地:早稲田キャンパス16号館

研究テーマには“愛”が必要!
高校までの学科にはない「社会学」。ゼミではどんな研究をしているのでしょうか? 「ゼミで何をやっているか説明するのは難しいです。みんな違う研究をしてるから・・・。だから、あくまで例えばですけど、ぼくのテーマは『都市的アイデンティティ』です。都市のような周りの環境が、人間の内面にどう影響するのかを、小説やドラマ、映画などを手掛かりに考えています。」(修士1年・山口 朋彦さん)
どんな映画を題材に? と聞くと「今は『男はつらいよ』とか」。寅さんと社会学、ちょっと変わった取り合わせのような気がしますね。
若林先生は「社会学は、広く言えば、お互い他人でしかない人と人が集まったときに生ずる、かかわりやつながりを読み解いていく学問です。」と言います。「もともと、あまり枠にはまった学問ではない。はめてしまうと面白くないしね。ドラマや映画など、一見すると社会学じゃないようなものも扱うし、テーマは本当にひとりひとり、まったく違いますよ」。
ゼミ生は各自で研究を進めながら、年に4~5回、皆の前で成果を発表。発表の際には先生のアドバイスを受けたり、学生どうしで議論をしたりしますが、ゼミの基本は「自立した研究者の卵として、研究を助けるだけ」なのだそうです。
「研究って大変だから、続けるには個人のモチベーションが大事です。テーマに対する問題意識と、それへの“愛”か“怒り”がないとやっていけない。だから大学院ではこちらからテーマを与えてもダメ。きみ、あの人を愛しなさいって言われて愛せるものじゃないでしょ?(笑)」と若林先生。
なるほど、逆に言えば、これをやりたい! という“愛”か“怒り”があれば、どんなテーマにも取り組めそうです。

修士1年・山口 朋彦さん
この先生が早稲田にいる!
修士1年の平沢 桂さんは、学部生のときは社会学が専攻ではなかったのだそう。「学部生のときはあまり勉強してなかったから、このまま卒業したら大学で何を学んだのか、よくわからなくなってしまう気がしました。それで、2年くらいは一所懸命勉強してみたいと思って、大学院に進むことを決めました。もっと早く気がつけ!という感じですけど(笑)」。
このゼミを選んだのは「『熱い都市 冷たい都市』『都市のアレゴリー』などの、若林先生の本を読んで、こんな見方もあるんだ! と感動したからです。この先生が早稲田にいると知って、会いたくなって」。
実際に指導を受けてどうでしたか? と聞くと「やっぱりすごい先生でした。発表をするたびに、新しい視点を提案してくれるんです。とても引き出しの多い先生だと思います」。
「実は私も大学生のときは社会学専攻ではなかった」と若林先生。先生の“引き出しの多さ”は、さまざまな分野を歩いてきた経歴にもあるのかもしれません。
このゼミには、平沢さんのように他学科から進学してくる人もいれば、一度社会に出てから入学する人も多いそうです。現役の高校の先生が入学してくることもあるのだとか。
ひとりひとり違う経歴と研究テーマを持ちながら、若林先生を慕ってやってきて、社会学というフィールドで学び合う。大学院のゼミは、そんな「研究者の卵」たちの集まりなのです。

修士1年・平沢 桂さん

この日のゼミの発表は修士1年・浅川 雄一さん。分厚い資料を配って説明中。
このゼミを目指すキミに先生おすすめの本
『社会学入門』見田 宗介著(岩波新書)
『社会学入門一歩前』若林 幹夫著(NTT出版)
上記2点は社会学の入門書として。
『時間の比較社会学』真木 悠介著(岩波現代文庫)
『集落への旅』原 広司著(岩波新書)
上記2点は時間と空間の社会学として。
『郊外の社会学―現代を生きる形』若林 幹夫著(ちくま新書)
『東京スタディーズ』吉見俊哉・若林 幹夫編(紀伊国屋書店)
最後の2点は応用編。前者は戦後日本の郊外から見た現代社会論、後者は都市ガイドブックの形をとっていろいろな分野の論者に現代の東京を論じてもらった本です。どちらも、読んだ後に周囲の景色が変わって見えてくるかもしれません。