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法学部で学ぶキューバの文化 「スペイン語圏」から現代社会を考える

ゼミ紹介

法学部で学ぶキューバの文化 「スペイン語圏」から現代社会を考える

公開日:2011/09/22

このゼミは3、4年生対象の教養演習科目の一つで、スペイン語圏、特にキューバの文化や思想について扱っています。カリブ海の小さな島の歴史や社会という「一点」を徹底的に掘り下げることによって、現代社会を説明するグローバルな問題に接近します。与えられたテーマ(場合によっては自分でさがしたテーマ)について、資料を探し、調べ、自分の考えをまとめ、みんなの前でそれを説明し、その上で全員で議論をする、という作業を行います。

研究室DATA

岩村 健二郎 准教授
教養演習(スペイン語圏)A(法学部 教養演習)
所在地:早稲田キャンパス8号館

「キューバ」を突破口に現代社会の問題に迫る

 「主専攻」で法学を学びながら、希望者は「副専攻」で人文科学系の学問も修められる。これが早稲田大学法学部の特色のひとつでもあります。法律を勉強したくて入学したのに・・・?「法学部は語学の単位数がすごく多いんですけど、その語学の教員が中心となって専門領域に関するゼミを開講しているのが教養演習なんです。法学部には、一般教養を身に付けた人間を法曹界に送りたいという理念があるので、こういうカリキュラムになっています」。スーツにネクタイをビシッと着用、という「法学部の先生」のイメージとはかけ離れた岩村先生(なんとミュージシャンでもあります)が、ワセダの法学部ならではの、教育の幅広さを説明してくださいます。

 キューバの歴史学が専門の岩村先生のゼミでは、スペイン語圏、特にキューバの文化や思想を学び、キューバを糸口に現代社会の問題に迫ります。南米の社会主義国、キューバ。ここからどんな学問が広がっていくのでしょうか?

 取材した日の発表は、アメリカのドキュメンタリー映画『シッコ SiCKO』などを参考資料に、キューバをはじめアメリカ、イギリス、日本などの医療制度と保険制度について考察したものでした。社会主義国で医療費無料のキューバ、資本主義国ながら国営化された医療機関と無料の医療費で社会主義的な医療制度を持つイギリス。社会主義アレルギーから国民皆保険制度が導入されないアメリカ、国民皆保険ではあるけれども財源不足に直面する日本。各国の状況の比較・分析により、健康を維持するための制度ひとつとっても、世界の歴史の積み重ねが影響していることが実感できます。

 「過去に起こったことは、現代に影を落としています。冷戦以降も冷戦の影響は世界に残っていて、社会主義的理念も脈々と生き残っているんです」と先生がおっしゃるのはこのことで、これもキューバを通じて現代社会を考える理由のひとつなのでしょう。

グループで研究して、それぞれの分担分を発表します。今回のテーマ医療費に関しては、学生のみなさんはまだ自分で支払っていないために、肌で感じることは難しそう。先生からは「どういう医療費を払ってどういうサービスを受けているかという視点が必要」との指導。

発表後、今後掘り下げるといい部分などについて先生からアドバイス。メールでも研究内容についての相談に乗ってくださっているそうです。

考えるきっかけとなる映像を指南してくれる先生

 このゼミでは、発表のテーマは「キューバと各国の医療制度について」などと先生から指定されるわけではありません。資料と映画のDVDなどの映像がセットで渡され、そこから自力でテーマを見つけて取り組むというやりかたです。時には先生の思惑とは離れてしまうこともあるそうですが、意義のある方向ならばそのまま任せてしまうとのこと。書籍をテーマにするのはどのゼミでも一般的ですが、映像資料が必ずつくというのは珍しいような・・・?「考えるきっかけとして、ですね。今の若い子たちはまず映像ありきで育ってきているので、文字だけじゃなくて映像を見せると発想が生まれやすいし、問題意識を持ちやすいようです」。

 通常、先生のおすすめ書籍を紹介しているこのページ右下の囲み記事でも、岩村先生からのレコメンドにはフィクション、ドキュメンタリー取り混ぜた映像作品も含まれています。『ゴッドファーザー Part II』(『I』なら観た、という人もいるかもしれませんね)はキューバの利権を狙うアメリカマフィア、そしてキューバ革命へ...と、アメリカとキューバの関係も描いた作品ですが、「ケーキを分けるシーンがあって、それが合衆国がキューバの利権を分けることを示していて...」と、鑑賞のポイントを解説してくれます。ゼミ終了後には、先生の勧めで本作を観たという女子学生さんが、内容を先生と語り合う姿も見られました。

 「学生は、新しいものを観るのに忙しくて名作を観ていないので、機会を作ってあげたくて」と、岩村先生。「音楽など、いろんな活動をしながらやっている先生だから人間として幅が広く、魅力的」と評される先生だけに、ゼミ生にはいろんなものを吸収してもらいたい、との気持ちを強く持っていらっしゃるようです。インタビューに答えてくれた板野さん、宜保さんとも、視野を広く持ち、世界で活躍できる人材になりたいと将来の夢を語ってくれました。「国際的な感覚を持つ学生を育てる」ことを目標のひとつに掲げた早稲田大学法学部の教養教育の幅広さ、岩村先生の人間的な幅広さ。この環境下で学べば、間違いなく視野が広がりそうです。

自身も学部生時代は早稲田大学で学んだ岩村先生。早稲田大学のおすすめポイントは?とお聞きすると、「常にシンポジウムや参加型のイベントが開催されていて、積極的にかかわれる好奇心があれば、暇がないほどずっと楽しめますよ」。なるほど、それは参加しなきゃ損ですね!

先生からのメッセージ

 私たちが生きている現代社会に無関係な「勉強」などありません。もし受験生のみなさんが、そう感じている「受験(のための)勉強」があるとすれば、それは勉強内容のせいではなく、勉強する側の捉え方の問題かもしれません。実は入試でそうしたことも問われること、また大学に入った後は、詰め込み型の「知」や「~しなければならない」という意識の持ち方がほとんど役に立たないことを知ることになります。問題意識や好奇心、「~したい」という意識こそが、大学では常に求められます。

先輩からのメッセージ

 主専攻が国際関係論で、それに加えて中南米の国について勉強したく、また、視野を広く持ちたいことからこのゼミを副専攻で選択しました。法律だけでなく、食文化や歴史などの面からアプローチできるのは楽しいです。岩村先生は知識豊富で、ゼミもジョークを交えながらの楽しい雰囲気です。

3年・板野 誠也さん

先輩からのメッセージ

 「大学に入ったらこれをやろう」という目的意識も大切ですが、大学に入って、初めて触れた世界や、無駄だと思えるようなことにも溶け込んでみる勇気を持ってほしいです。大学時代にしかできないことですから。ほかの学部の授業をのぞいてみたりして自由に過ごしてください!

4年・宜保 有季子さん

このゼミを目指すキミに先生おすすめの本・映像

キューバを知るための52章』後藤政子、樋口 聡・編(明石書店)

キューバの社会、歴史などを網羅的に知ることができ、それぞれのトピックが簡潔に説明されている読みやすい概説的入門書。

キューバ史研究 先住民社会から社会主義社会まで』神代 修・著(文理閣)

1959年にキューバ革命が起き、その後どんな社会が模索されたのかを詳しく知ることができる。

『現代キューバ経済史:90年代経済改革の光と影』新藤通弘・著(大村書店)

社会主義ブロック消滅後のキューバが、どんな困難をいかに克服したのか、またできていないのか、について明確に知ることができる。

ゴッドファーザーPartII』(1974年、アメリカ、フランシス・フォード・コッポラ監督)

革命直前、アメリが合衆国の「保護国」時代のキューバの姿が垣間見られる。

キューバ危機・戦慄の記録』(1992年放送『NHKスペシャル』)

第三次世界大戦の危機が、いかなる体制のもとに醸成されたのかがわかる。

スカーフェイス』(1983年、アメリカ、ブライアン・デ・パルマ監督)

80年にキューバから「政治亡命」した一人のキューバ人の物語。

永遠のハバナ』(2003年、キューバ=スペイン合作、フェルナンド・ペレス監督)

ハバナの街の「普通の」人々の生活に、こっそり寄り添っている気分になれる映像表現。

シッコ SiCKO』(2007年、アメリカ、マイケル・ムーア監督)

キューバ社会が成し遂げたことが、米国の民主主義社会のジレンマの中に浮かび上がる。