OB・OGインタビュー

創立125周年記念
「北大路欣也トークショー」ダイジェスト


 2007年10月31日に大隈小講堂において、「俳優人生50年」と題したトークショーが開催された。「今日は、俳優の北大路欣也ではなく、浅井将勝として来ました」という言葉の通り、一人のOBとして在学中のエピソードや自身の仕事について語っていただいた。気軽に会場へ話かけるその人柄や楽しいトークに、大いに盛り上がった。

■大変話題を呼んだドラマ『華麗なる一族』に出演されましたが、万俵大介という役と、親子の感情、確執などについてお伺いします。


[プロフィール]
 北大路欣也氏は、時代劇俳優の大御所・市川右太衛門の次男として1943年京都府京都市で生まれた。1959年に映画「父子鷹」で勝海舟の少年時代でスクリーン・デビュー。1961年、早稲田大学第二文学部演劇学科入学。在学中に初舞台を経験し、それをきっかけに日生劇場『シラノ・ド・ベルジュラック』のクリスチャン役に抜擢された。劇団四季などの舞台や映画、テレビドラマ・時代劇で活躍。昨年俳優人生50年を迎え、紫綬褒章も授章。またドラマ『華麗なる一族』では、万俵大介役で、息子役の木村拓哉氏との演技のつばぜり合いを見せ、話題を呼んだ。

 『華麗なる一族』で共演した主演の木村拓哉さんとは、ほとんど面識がなかったんです。まず、息子の鉄平をなぐって、怒鳴りつけるシーンがきましてね。いやぁ、木村さんをひっぱたいて、全国の皆さんに嫌われるなと思いつつ、そんなことじゃこんな役はできない! 撮影で、鉄平の頬を思いっきり叩いたその瞬間、何かハッと大介として入って行けた。そこが最初で、何カ月も撮影が続いていく中での積み重ねから、「万俵大介」が出来上がりました。

 役をやっているというイメージがありながら、のめり込み過ぎて役を忘れてしまったり、役者はその微妙な境目で戦っています。

 スタッフや出演者の一人ひとりにいろんな力をもらって、僕の体で再現され、それがインパクトになって皆さんに見ていただけたのだと思います。

 30年前、一ノ瀬という鉄平に心酔している青年役を演じた時は、大介なんか大嫌いでした。当時は、銀行の仕組みも何も分からないまま、役に入った。今回の撮影は、身の周りでTOBとか金融再編などのニュースが入ってきて、遠い昔のある一族を演じているのに、今息づいているような雰囲気でした。実際僕も64歳になり、ひとつの仕事をやっていくうえでは、男としては、ゆれるわけにはいかない、筋を通して一本守らなければならない部分が大きくなっていきます。大介も自分のポジションの中で、真っ直ぐに貫かなければならない宿命を持っていて、その結果、大事な息子や会社の中の人間を傷つけてしまう場合もあるわけです。そう考えれば、大介と僕とは絶対に一致はしないけれど、僕と大介という大きな人物の間に橋がかかり、近づいていった気がします。

■舞台俳優としてのデビュー作と早稲田大学

三島由紀夫氏の戯曲『癩王のテラス』の一場面
▲このポーズは、1969年7月の帝国劇場で上演された三島由紀夫氏の戯曲『癩王のテラス』の一場面。この作品は、北大路氏のために書かれた作品。三島氏はこの場面に思い入れがあり、この一場を見るためだけに劇場に何度も足を運んだという。

 十代のころは、俳優を職業にしようとう気持ちは一切なく、出なさいと言われて出ていただけで、非常に甘く中途半端だったんです。実は、兄貴が理工学部にいたので、早稲田はいい雰囲気だなあと思い、できるならここに進学したいと思いました。そして第二文学部演劇学科に入学してから、素晴らしい恩師や同窓の仲間との大きな出会いがありました。友人は誰もが、演技、映画、作家、カメラマンなど、それぞれ目指す方向が決まっていて、その情熱の凄さに圧倒されました。彼らは、ここでゼロから築き上げて、その道を進んでいく。自分はもうレールを引いてもらっているのに、18才のその時まで、そんな情熱は持っていなかったと気付きました。みんなに負けちゃならんという気持ちで、よし! もう一回このレールの上を思いっきり走ってみようと思ったんです。

 ちょうど「シェイクスピア生誕400年」で、皆で記念公演をすることになりました。大抵そんな時は、裏方で小道具や照明の係をしてました。関係者に知人が多く、機材を借りに行くとか、なかなか便利でしたよ(笑)。それで今回も衣装係をやると言ったら、友だち皆に「早稲田に入ってきたのだから、1回くらいシェイクスピアをやれ! お前、一生チャンバラで終わるのか」と簡単に言われました。確かに、時代劇・映画・舞台・テレビという枠でなく、自由にジャンルも広がっていく、ちょうどそんな時代の始まる頃でした。父親のような時代劇一本では生き残れない時代になっていました。先生もやれと言ってくれ、これは逆にチャンスかも知れないと、本名浅井将勝、一人の学生として、舞台『リア王』のエドガー役を演じました。大隈講堂とイイノホールで何もかも先輩後輩、皆の手作りの公演でした。

 僕には初めての演劇のセリフですから、なかなかできず「違うぞ! 浅井、違うぞ! 浅井」と相当言われましたね。「お前、普段はプロなのになんてヘタなんだ!」と言われて、「いやぁ、そう言わないでください」って。舞台も初めてで、相当緊張し、イイノホールの幕が上がる時にはどうなることかと思いました。でも、一生懸命でした。そして、幕がスーッと降りる瞬間です。お客様の姿が幕によってスーッと消えていく瞬間、舞台と客席の間で共有していたものが二つに分かれるその時、なんともいえない感動を覚えました。初めての経験でした。

 今思えばあの時、友人たちから「お前一生チャンバラで終わる気か、一回やってみろ」と言われなかったら、きっと僕は、こんな経験はしなかったし、自分自身で世界を閉ざしていたかも知れない。あの時、友だちのエネルギーで引っ張りあげられたんですね。

(2008年1月10日掲載)

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First drafted 2008 January 10.