ワセ歴

第5回 創立30周年
 建学の理念「教旨」と校旗 ―式服式帽の制定・深紅のガウン姿の大隈総長―


創立30年祝典での大隈重信・高田早苗たち
創立30年祝典での大隈重信・高田早苗たち
創立30年を祝賀する鶴巻町通り
創立30年を祝賀する鶴巻町通り

早稲田大学大学史資料センター所蔵写真

 明治から大正へと改元した2年後の1913(大正2)年10月17日、創立30周年の式典が戸塚運動場(後の安部球場で、現在の総合学術情報センター)で、1万余の学生生徒と2千余の来賓・校友が見守る中を3百余の教職員の入場行進と着席によって挙行された。30周年は実は前年であったが、7月に明治天皇が死去したため、この慶事が1年延期されて実施されたのである。

 この式典で特筆すべきは、早稲田大学の憲法とも言うべき建学の理念「教旨」が大隈重信総長により宣言されたことである。冒頭、

「早稲田大学は学問の独立を全うし、学問の活用を效し、模範国民を造就するを以て建学の本旨と為す」
に始まる「教旨」は、当時の日本の国家社会を反映して、中に「立憲帝国の忠良なる臣民」の語がある。この部分は戦後1949年5月に公式に削除改訂されていることを銘記しなければならない。だが、当時、「模範国民」には、「所謂模範国民とは世界に対しては世界的国民として働き、国家に対しては立憲思想を有し、自己に対しては自敬、自重の念、健剛・不屈の意力を有する人を謂ふ」(中島半次郎)という国際的日本人の育成を目指す理念や、「政治に間接に関係する者が〔政治に対する意識や見識が〕健全であるといふことが国家の為めに必要である」として、「今の世に於てして立憲的活動以外に於て忠君愛国の道無し」(高田早苗)との国民像の育成をはかりたいという創立以来の教員陣の極めて強固な志が含意されていたことに留意しておかなければならないのである。(「教旨」の碑は長らく正門の階段を上った左の「校歌」の碑の所に在ったが、現在は正門の外側左に歴史的碑文として大学の外から内外の人々に自由に見られるように移転されている。)

 実は、この時の3百余の教職員の入場はこれまでの式典には全くなかった装いでの入場であった。この式典時に制定された校旗を先頭に式服式帽のガウン姿の教職陣が登場して来たため、参会者はアッとどよめき驚愕の声を上げてしまったのである。特に深紅のガウンを総長の式服と定めて、初めてこの姿で登場した大隈総長の威容は異彩を放った。式典に際して、これらを考案した高田早苗らがこのガウンを大隈に献じたところ、大隈はこれを纏ってみて子どもの如く喜悦の情を満面に浮かべて「オレは大僧正になった」と言って喜んだという。


<執筆者>
佐藤 能丸(さとう・よしまる)政治経済学部講師
歴史学(日本近代史・大学文化史)専攻

(2007年6月21日掲載)

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First drafted 2007 June 21.