「ゆるぎ岩」のでき方


高木秀雄
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 2018年12月22日にテレビ朝日で放映された「ビートたけしの超常現象」の中で,「ゆるぎ岩」が取り上げられていました.この番組で,鈴鹿山脈御在所岳の「地蔵岩」の解説で出演しましたが,その時画面で紹介されていた「ゆるぎ岩」も地質学的に説明可能と話しました.ただ,番組ではそれは謎のままで取り上げられませんでした.そこで,この場を借りて簡単に説明しておきたいと思います.
 ゆるぎ岩を説明するためのキーワードは,花崗岩,節理,風化,侵食 です.

1. 花崗岩は地下10-20kmの深さでマグマがゆっくりと冷えて固まった火成岩です.それが冷却するときや,隆起・侵食によって地表に顔を出す間に,たくさんの平らな割れ目(節理と言います)が鉛直方向や水平方向にできます.

2. 節理を伴う花崗岩が地表に露出すると,雨風や氷結などによって節理面に沿って風化が進みます.

3. 花崗岩が風化すると,中に含まれている長石や雲母などは変質して粘土のように柔らかくなりますが,石英は変質しにくいので,全体としては砂(真砂と言います)のように変化します.水平な節理面に沿って真砂に変化すると,風雨による侵食により砂の部分が削られて,残ったかたい花崗岩(コアストーンと言います)が丸みを帯びてきます.

4. 丸みを帯びた花崗岩どうしが上下に接するようになると,接触面積が小さくなるので,その面にかかる力が大きくなり,圧縮されて風化されにくくなります.

5. その時に上の岩が傾こうとすると,傾いた方の接触面に力がよりかかりますので,反対側の持ち上げられた岩の方の力が解放されて風化が進みます.そうすると,その部分が削られるために,上の傾きと逆方向に岩が傾こうとします.

6. このようなことを長時間繰り返しながら,上に乗った岩の重心が,下の岩との接触面の中心と一致するため,バランスをとるようになります.

7. 国内外でそのような岩は多数知られており,バランスロックとも呼ばれています.写真は岐阜県恵那峡の花崗岩のバランスロック(傘岩).

https://www.jalan.net/kankou/spt_21210ab2070007775/

8. ゆるぎ岩は,バランスロックの接合面が完全に外れて,やじろべえのように丸みを帯びた接触部が上の岩の重心と一致し,手で動かすことができるようになったものと考えられます.隙間の空間は,真砂化が進んで侵食でなくなった部分です.写真は岡山県赤磐市の花崗岩に見られる2重のバランスロック(ゆるぎ岩).

http://tikinavi.jp/?act=shop_detail&shop_id=1586

 自然界では,このような隆起,風化,侵食などが何百万年~何万年とかけてゆっくりと進行するため,その長い時間に驚くべき地形を生み出すことがあります.地蔵岩も含めてここに取り上げた花崗岩は,8,000~7,000 万年前に生まれたものです.地球の歴史を1年の暦に例えれば,これらの花崗岩は番組が放映された冬至の頃に生まれたものです.

以上