社会安全研究財団からの受託研究−共同研究(B)英米少年司法の生成と展開に関する研究

 研究代表者:石川正興
 構成員:小西暁和・宍倉悠太・田口敬也・脇坂成実

 研究概要:本共同研究は、英米の少年司法制度を多角的に検討することを目的としている。19世紀末、アメリカ合衆国において、国が非行 少年等の親代わりになるという「国親思想」の理念の下、少年裁判所が創設されることになった。このアメリカ合衆国における少年裁判所の 展開は、その後、わが国も含めた世界各国の少年法制に大きな影響を及ぼした。また、この「国親思想」は、そもそも中世のイングランドお いて、封土の法定相続人となる未成年者に対して国王が後見人になるというエクイティから発生したとされている。このように、少年法制の 歴史的淵源を辿ると、英米の少年法制に繋がっていくことが分かる。こうした英米の少年法制の動向は、現在においても、わが国の少年法の 立法政策・運用政策に多大な影響を及ぼし続けている。したがって、それを多角的に検討することは、十分に今日的意味がある。本共同研究 では、多角的な検討を実施するため、わが国の制度との比較対照を行いながら、英米の少年司法制度の歴史的経緯や現状を明らかにしていく。 その結果として、わが国の少年司法制度に対し、重要な示唆が得られるものと考えている。
 本共同研究では、共同研究参加者が、歴史的経緯をも踏まえた英米の少年司法制度に関する英語文献を翻訳した上で、順次刊行していく。 また、その翻訳成果に関する論評を各種紀要に順次掲載して発表することも予定している。
 2011年度内は、シカゴ少年裁判所の創設を法史学的に分析した基本文献であるDavid S. Tanenhaus“Juvenile Justice in the Making”の 全訳を確認する作業を行う。そして、本年度内には、本文献の邦訳版を出版する予定である。また、2012年度以降には、新たな文献を選定し、 翻訳を開始していく計画である。