独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業の基盤研究(C)
「子どもの非行・虐待防止のための地域社会ネットワークの実証的研究」活動報告(2013年度)

 2013年度の研究活動の概要は以下のとおりです。

  • 【T】6月7日(金) 第2回東京部会「東京都青少年・治安対策本部訪問」
    1.開催場所 
    東京都庁第一本庁舎25階104会議室

    2.参加者
    (ア)早稲田グループ
     @石川正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
     A小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
     B藤野京子(社会安全政策研究所研究所員、文学学術院教授)
     C小松一枝(社会安全政策研究所招聘研究員、保護司稲門会)
     D矢作由美子(社会安全政策研究所招聘研究員、敬愛大学国際学部兼任講師)
     E渡辺巧(社会安全政策研究所招聘研究員、公益財団法人日本道路交通情報センター理事)
     F宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
     G朴春蘭(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
     H三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
     I李程(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
     J吉満圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

    (イ)東京都青少年・治安対策本部関係者
     @坂田直明(東京都青少年・治安対策本部青少年対策担当部長)
     A佐藤久光(東京都青少年・治安対策本部総合対策部青少年課長)
     B寺出壽美子(日本子どもソーシャルワーク協会理事長)
     C勝又一郎(東京都青少年・治安対策本部総合対策部連絡調整担当課長)
     D大矢和男(東京都青少年・治安対策本部青少年課計画調整係長)
     E大竹真之(東京都青少年・治安対策本部青少年課計画調整担当係長)
     F若山祐樹(東京都青少年・治安対策本部青少年課計画調整係主事)

    3.意見交換会の概要
    本意見交換会では、主に以下3点の報告を踏まえた意見交換が行われた。

    @青少年・治安対策本部の設置経緯・目的及び対策本部による非行少年の立ち直り支援についての報告
     東京都では、「治安の維持こそ最大の都民福祉」との認識に立ち、東京の治安回復のため、2003(平成15)年8月、知事本部内に「緊急治安対策本部」(本部長:竹花副知事)を設置し、外国人組織犯罪対策、少年問題対策、安全・安心まちづくり推進の3点を柱とする取組を開始した。
     その後、治安問題の根底には青少年の問題が深く関連していることから、2004(平成16)年8月に上記少年問題対策担当を中心とする「青少年育成総合対策推進本部」を知事本局に設置し、関係各局の連携により総合的かつ効果的な対策を実施する。
     さらに、青少年対策及び治安対策に係る事業を一体的・総合的に推進するため、2005(平成17)年8月1日に、これまでの組織に生活文化局の交通安全対策部門を加え、新たに局相当の組織として「青少年・治安対策本部」(以下、「対策本部」という。)を設置。その後、ひきこもり対策や非行少年の立ち直り支援など、新たな行政課題への迅速な対応を図るため、2007(平成19)年4月に組織改正を行い、若年者対策係の新設等の体制を整備した。この体制のもと、引き続き、警察庁、東京入国管理局、警視庁、教育庁などから幅広く人材を集めるとともに、庁内関係局等と連携し、青少年の健全な育成に向けた総合対策、治安・交通安全に係る都民の安全確保対策を一体的、総合的に推進している。
     対策本部による非行少年の立ち直り支援についての主な取り組みは以下のとおりである。
      ・非行少年立ち直り支援ワンストップセンター「ぴあすぽ」
      ・非行少年立ち直り支援に係る講演・シンポジウム
      ・少年支援ガイドブックの作成・配布
      ・少年院出院者の立ち直りを図るための保護司活動支援協議会の運営

    A非行少年等立ち直り支援事業「ぴあすぽ」についての報告
     本事業は、2008(平成20)年8月より東京都が特定非営利活動法人日本子どもソーシャルワーク協会に委託をして実施しているもので、支援を受けること等について本人及びその保護者から同意を得た少年に対し各種支援を行っている。
     支援においては、少年と上記協会職員の1対1の個別対応を基本とし、就学支援・就労支援・生活自立支援の3本柱の下、調理体験やレクリエーションなども行っている。
     ケースの紹介元は、少年本人や保護者・保護司・保護観察所・警察・児童相談所・学校等である。各関係機関の窓口にパンフレットを置いたり、地元の保護司会に働きかけたりして周知を図っている。
     
    B区市町村青少年立ち直り支援モデル事業についての報告
     本事業は、非行少年の立ち直り支援について地域社会が適切に支援していくことが、少年の再犯を防止し良好な地域社会の構築に繋がるとの考えにより、2009(平成21)年7月から2011(平成23)年度末まで、東京都が大田区と八王子市に委託をして行ったもので、各地域に総合相談窓口などを設置したりして各種支援を実施した。
     もっとも、これまで自治体が非行少年の立ち直り支援に関わることがほとんどなかったため、個別・具体的な支援を行うことはなかなか難しかったという。委託終了後は、各区において地域からの理解を得るための広報・啓発活動に努めているとのことである。

     <研究会風景>
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  • 【U】5つの研究グループの発足
     科研費共同研究では、2013年8月3日に、以下の5つの研究部会を発足させ、調査研究を実施することになりました。

     @警察関係グループ(民間防犯・健全育成団体などを調査。グループリーダー:渡辺巧 招聘研究員)

     A学校関係グループ(コミュニティ・スクールなどを調査。グループリーダー:三村隆男 研究所員)

     B児童相談所関係グループ(被虐待児支援団体、発達障害児支援団体などを調査。グループリーダー:小西暁和 研究所員)

     C家庭裁判所関係グループ(少年友の会、補導委託先などを調査。グループリーダー:棚村政行 研究所員)

     D研究代表者・更生保護関係グループ(学校担当保護司、BBS会、協力雇用主などを調査。研究代表者・グループリーダー:石川正興 所長)
  • 【V】10月25日(金)東京保護観察所訪問
     研究代表者・更生保護関係グループにて、10月25日に東京保護観察所を訪問しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     東京保護観察所

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @石川正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
      A小松一枝(社会安全政策研究所招聘研究員、保護司稲門会)
      B志賀ツヤ子(大和・綾瀬保護司会保護司)
      C朴春蘭(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      D三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      E李程(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)東京保護観察所関係者
      @武藤睦己(東京保護観察所/首席保護観察官)
      A中島明(東京保護観察所/首席保護観察官)
      B藤井淑子(東京保護観察所/統括保護観察官)
      C富田潤一(東京保護観察所/保護観察官)

     3.意見交換会の概要
     @社会貢献活動について
     2013(平成25)年6月13日付で成立した「刑法等の一部を改正する法律」により、更生保護法も改正され、保護観察の特別遵守事項の類型に「社会貢献活動」が追加されることとなった。もっとも、当該改正規定はまだ施行前であるが、各保護観察所では施行後を見据え、対象者の同意に基づき、現在でも先行的に行っている。
     2012(平成24)年度に東京保護観察所では、「介護補助」や「清掃等」の活動を58回実施した。実施の際は、保護観察所単独ではなく、NPO団体等と協力して行うこともある。

     A就労支援について
     都内における協力雇用主登録者数は、2012(平成24)年度は349社である。2006(平成18)年の刑務所出所者等総合的就労支援対策が開始されてからは、より積極的にハローワークと連携するようになり、トライアル雇用制度や身元保証制度などが始まった。
     また、2011(平成23)年度より、更生保護就労支援モデル事業が開始され、東京都もそのモデル地域となり、都内に「就労支援事業所」が開設された。当該事業所では、最近は少年院と協力し、少年院入所中の少年に対して、入所中から出所後を見据えた支援も行っている。

     C学校と保護司との連携について
     学校と保護司は、従来から連携するようにしていたが、例えば「学校との連携を担当する保護司」を指名するなどして、より連携を深めるようになった。
     2007(平成19)年度に行われた調査によれば、同保護司が担当しているのは、2006(平成18)年度当時において、都内公立中学校約800校中、約500校である。
     同保護司の主な役割は、学校教員やPTAとの情報交換であるが、それぞれの地域の実情に応じて学校と協力し、高校入学試験を控えた中学3年生への面接練習への協力や、セーフティ教室への協力などを行っている保護司もいる。

     D覚せい剤事犯者処遇プログラムについて
     保護観察所では、専門的処遇プログラムとして覚せい剤事犯者処遇プログラムを実施しており、対象者には特別遵守事項として課せられる。
     刑の一部執行猶予制度施行を見据えて、東京保護観察所では集団処遇も検討しており、既に試行的に集団処遇も実施している。
  • 【W】11月1日(金)防犯寺子屋視察
     警察関係グループにて、11月1日に横浜市港南区における防犯教室「防犯寺子屋」の視察を行いました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     <第一部>「防犯寺子屋」による防犯教室の視察
     会場:横浜市立下永谷小学校
     <第二部>「防犯寺子屋」実施者との意見交換会
     会場:神奈川県港南警察署

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @江ア澄孝(前神奈川県警察本部生活安全部長)
      A吉満圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

     (イ)防犯寺子屋関係者
      @岡崎敏明(神奈川県港南警察署生活安全課長)
      A島藤直謙(神奈川県港南警察署生活安全課少年係)
      B清水一明(港南少年補導員/会長)
      C鈴木政子(港南少年補導員/事務局)
      D二見正子(港南少年補導員/会計)
      E池田みゆき(港南少年補導員)
      F斉藤陽子(港南少年補導員)
      G関口昇(港南少年補導員)
      H石井惠(港南少年補導員)
      I村上武(港南防犯指導員)

     3.「防犯寺子屋」視察の概要
     @「防犯寺子屋」概要
     2007(平成19)年から横浜市港南区において、港南区防犯協会、区役所、警察そして学校が協力して、区内の小学校で防犯講習「防犯寺子屋」を実施している。少年補導員や防犯指導員の方々が先生役となり、子どもたち自身に危機回避力を身に着けてもらうために、声掛けや連れ去りへの対処方法等を盛り込んだ講習を行っている。
     2013(平成25)年度は区内の小学校全21校で計48回実施される予定である。

     A視察内容
     小学1年生と小学3年生を対象に、別々の時間で行われた防犯講習を視察した。
     1年生は全クラス合同で開催され、標語を用いた防犯指導を行い、「防犯寺子屋」が作った標語に関する歌を生徒と一緒に歌うなどとして、生徒の印象に残るような指導をしている。その他にも、絵や文字カードを用いた指導など、生徒が積極的に興味をもてるような工夫がされている。
     3年生は各クラスに分かれて指導を行っている。標語や絵を用いて指導をすることは1年生と共通しているが、なぜ標語で言われていることが大切なのか、なぜ絵に描かれている行為がいけないことであるのか等、生徒1人1人に考えさせることを中心とした、1年生を対象としたものより少し発展した指導が行われている。

     4.意見交換会の概要
     @「防犯寺子屋」開催の経緯と発展について
     当時の港南警察署長に、少年補導員は、警察官と一緒の場合にしか街頭補導をしないのかと問いかけられ。当時、学校での安全問題があり、区役所地域振興課でも学校担当制の防犯リーダーを作ろうとの話が出ていた。そこで、港南らしい、少年・防犯ボランティアの活動を実施しようと考え、当時の生活安全課長などに指導をしてもらいながら活動を模索していった。

     Aボランティアという立場について
     ボランティアと言っても、自己満足によるところは大きい。ただ、お金ではなく、自分がやったという実感や自分への気付きが重要ではないか。ほんのわずかな事かもしれないが、自分ができる範囲で他の活動を補うことができれば良い。

     B「防犯寺子屋」の活動成果について
     清掃活動などのボランティアはその行為自体が成果であると言えるため、目に見えた形で成果を実感することができる。他方で、犯罪防止という防犯活動においては犯罪を減らすことが目的のため、自分自身の活動の成果が実感できない。成果を実感できないところが、防犯活動が活気づかない要因の1つではないか。

     C「防犯寺子屋」というボランティア組織のあるべき姿について
     生徒の親や教員ができないことをやるという、補充的なプログラムが良いのではないか。
     また、行政機関が学校に入ろうとすると学校は敬遠しがちであり、「防犯寺子屋」のような方法で、ボランティア組織が学校に入っていく体制は非常に良い。また、学校内の問題は、なかなか外部に相談しにくいため、「防犯寺子屋」メンバーが事案を然るべき機関へつなげる役割を果たすこともできるのではないだろうか。

     Dボランティア活動を行ううえでの限界について
     自分自身に体力があることが必須条件である。そして、学校の要望を伺いながら自分たちができることを決め、踏み越えてはならない限界を見極める。警察官とは異なり、自分たちは自分自身の身を守るスキルを身に着けていないため、危ないときには身を引くことも重要である。また、自分の仕事もあるため、ボランティア活動の時間にも制限がある。
  • 【X】11月1日(金)子どもの家足立訪問
     研究代表者・更生保護関係グループにて、11月1日にNPO法人「子どもの家足立」を訪問しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     子どもの家足立

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @石川正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
      A藤野京子(社会安全政策研究所研究所員、文学学術院教授)
      B小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
      C矢作由美子(社会安全政策研究所招聘研究員、敬愛大学国際学部兼任講師)
      D宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      E三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)子どもの家足立関係者
      @竹中ゆきはる(仮名)(NPO法人子どもの家足立)
      A寮母  妻 (仮名)(NPO法人子どもの家足立)

     3.意見交換会の概要
     @施設の性質
    (a)協力雇用主としての活躍
     竹中ゆきはる氏は少年院に入所経験があり、少年院出院後、「第2種電気工事士」の資格を取得した。その後、本資格を活かし、2000(平成12)年11月より電気工事業を開業する。なお、現在竹中氏は「1級電気工事施行管理」、「職業訓練指導員電気科」「職長教育RSTインストラクタ」など、30以上の資格を有している。
     2005(平成17)年4月にはさいたま保護観察所、2007(平成19)年10月には東京保護観察所の協力雇用主に登録し、非行少年の立ち直りに尽力している。

    (b)NPO法人「子どもの家足立」の設立
     2010(平成22)年2月に、「恵まれない子ども達の保護施設」として「子どもの家足立」を発起し、2011(平成23)年9月にNPO法人化認証を受ける。一時は、更生保護法人化も検討したが、現在は認定NPO法人化を目指している。
     竹中ゆきはる氏の妻が寮母を務め、家族ぐるみで施設を運営しているが、人件費もなくほぼボランティアである。その他食材等については、知り合いから野菜を分けてもらったり、近くの寺の住職から菓子類を寄付してもらったりもしている。

    (c)自立準備ホームとしての登録
     NPOの法人化認証を受けた翌日の2011(平成23)年10月1日より、「自立準備ホーム」として保護観察所へ登録していただけた。2013(平成25)年11月現在、収容定員は2名である。
     各ケースの受託期間は2か月程度であり、その期間は法務省から委託費が支給される。
     受託期間終了後、少年の出所先が未定の場合、任意保護としてNPO法人の裁量で少年を引き受けることもあった。

     A少年に対する就労支援の現状
     近郊にハローワークがあり、少年たちの就職活動に利用している。40社近く不採用となる者もおり、ハローワークを利用しても就労先が見つからなかった場合、個人的に繋がりのある協力雇用主に依頼することもある。
     それでも、就労先が確保できなかった場合、竹中氏の電気工事会社で雇用することもあるが、雇用するのは年1件程度である。少年が「子どもの家足立」にいる間は父親的な存在として接することができるが、電気工事会社に就労すると「社員」として接する必要がでてくる。朝寝坊など就労をする上で少年たちに問題もあり、1名雇用するだけで職場に迷惑が生じてしまうこともある。なお、これまでに、委託保護で33名、協力雇用主としては20名程度の雇用をしてきた実績がある。
  • 【Y】11月14日(木)社会福祉法人カリヨン子どもセンター訪問
     児童相談所関係グループにて、11月14日に「社会福祉法人カリヨン子どもセンター」を訪問しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     社会福祉法人カリヨン子どもセンター

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
      A小松一枝(社会安全政策研究所招聘研究員、保護司稲門会)
      B宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)カリヨン子どもセンター関係者
      @坪井節子(社会福祉法人カリヨン子どもセンター理事長)

     3.意見交換会の概要
     @事業の種類
     カリヨン子どもセンターは、4種類の事業を実施している。
    (a)子どもシェルター
      定員は15歳から20歳までの女子4名、男子2名。シェルター利用期間は2ヶ月間で、虐待等を理由として緊急の保護を要する者が生活する。

    (b)自立援助ホーム
     男子・女子ともに定員6名。ホーム利用期間は半年から2年間程度であり、就労して自立を目指す子どもが生活する。

    (c)デイケア事業
     子どもシェルター・自立援助ホームに滞在中の者や退所者に対して、カウンセリングや学習支援といったケアや、遊びなどためのデイケア事業を実施している。

    (d)司法面接室
     2012(平成24)年から、虐待を受けた子どもから事実を聞き出すための面接を実施する「司法面接室」も開設している。既に20件以上の面接を実施した。

     A設置の経緯
     2002(平成14)年に「こちら、カリヨン子どもセンター」という芝居を行ってから、設立準備会が発足した。その後シェルターは非公開、居室は個室とするという方針で、2004(平成16)年にNPO法人カリヨン子どもセンターを設立。東京都の児童相談所と一時保護に関する協定を締結し、シェルター「カリヨン子どもの家」が開設された。

     B入居の流れ
    (a)入居の相談は東京弁護士会子どもの人権救済センター「子どもの人権110番」にて受ける。相談を受けた弁護士がそのまま子どもの担当弁護士になる。
     シェルターへの入居に際して、子どもの担当弁護士とカリヨンの担当弁護士との二人で子どもと面会する。子ども自身の自発的な意思で入居することの証明書として、入会申込書を子どもから受け取ることになる。そのうえで、児童相談所に虐待通告をする。
     現在、都内の子どもについては、東京都の児童相談所を通じ、18歳未満の者は一時保護委託として、(児童相談所に係属していなかった、又は東京都の児童相談所に係属していた)18歳・19歳の者は自立援助ホーム委託として受け入れをしている。都外の子どもについては、その地元の児童相談所を通じ、18歳未満の者は一時保護委託を、(地元の児童相談所に係属していた)18歳・19歳の者は自立援助ホーム委託をしてもらう。

    (b)他方、子どもシェルターには家庭裁判所から試験観察対象者の入所依頼が、自立援助ホームには少年院仮退院者の入所依頼が来る。少年院から来た場合はまず保護観察所に連絡する。迅速に連携が取れるように、保護観察所に担当の保護観察官を置いてもらっている。

     C他機関との連携
    (a)厚生労働省との関係づくり
     2010(平成22)年に日本弁護士連合会から厚生労働省に対し「子どもシェルターの制度化について」という意見書を出したところ、「自立援助ホーム」の特別形態としてシェルターを位置づけるということであれば、厚生労働省内部の決済で可能ということになった。
     子どもシェルターには自立援助ホームの条件をそのまま適用できなかったので、「子ども一人ずつに必ず弁護士をつける」「定員については年間の利用者数で定員の二倍を超えればよい」「『子どもシェルター』という名称を用いる」といった条件を厚生労働省側に認めてもらい、児童家庭局家庭福祉課指導係長・措置費係長から「子どもシェルターに自立援助ホームを適用する場合の留意事項について」という通知を出してもらった。結果、自立援助ホームの一形態として認可を受け、2012年から補助金が支出されるようになった。

    (b)児童相談所との関係づくり
     児童相談所が虐待事件への対応に多忙を極め始めていた頃に、児童相談所の援助を目的として児童福祉司の法律相談を受けるようになった。その後、家庭裁判所への審判申し立てに必要な書類作成の援助を通じ関係づくりを進めた。このことが、カリヨン設立の際に児童相談所から信頼を得るうえで大きな意味を持った。

    (c)保護観察所との関係づくり
     子どもの医療費の捻出のために、家庭裁判所に送致された子どもも要保護児童として措置してもらうことを望んでいたが、そうした子どもは児童福祉の範囲外なので手続が困難であるとされていた。そこで、少年院仮退院者をカリヨン子どもセンターが引き受けることなった場合には、保護観察所から児童相談所に連携依頼を出してもらう体制を作った。
     その後、保護観察所の方で、カリヨン子どもセンターの関係機関が集まれる仕組みが作れないか検討してもらった結果、少年院、保護観察所、家庭裁判所、児童相談所等とともに「少年相談ネットワーク会議」を設置することになり、現在、年1回会合を開催している。

    (d)連携のコツ
     連携をといっても、子どもが救えないのでは「連携」とはいえない。「糸電話的な連携」では仕方がない。子どもを間に落とさない「スクラム型」の連携が重要である。そして、子どもを保護することに対して、一つの機関だけではできないという無力感を持つことが必要になる。さらに、協力関係は、あくまでも行政と対等の立場で結ぶことも重要である。

     D今後の展望
     一番問題となるのは、親元へ帰れないうえに、精神障害等を有し、退所後就労できないケースである。自立援助ホームは基本的に働いたり進学したりする者が対象のため、就労ができないと行き場がない。精神科へ入院をしても、治療の場であって生活の場ではないので、いずれ退院することになる。そうした者のコミュニケーション力等を育てる場として、ハーフウェイ・ホームの設置を考えている。
  • 【Z】12月12日(木)社会福祉法人嬉泉訪問
     児童相談所関係グループにて、12月12日に「社会福祉法人嬉泉」を訪問しました。概要は以下のとおりです。
     
     1.開催場所
     社会福祉法人嬉泉

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
     @小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
     A宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)嬉泉関係者
     @石橋悦子(東京都発達障害者支援センター(社会福祉法人嬉泉)主任支援員)

     3.意見交換会の概要
     @法人の概要及び発達障害者支援センター受託の経緯
     現在の法人常務理事は、日本社会事業大学の教員であり、大学で自閉症の相談を担当していたところ、現在の嬉泉の法人代表が関心を示し、相談事業を実施することになった。初めに相談業務と通所療育業務を始めた。その後、千葉県の袖ヶ浦に土地を買い、子どもの入所型施設を作った。さらに、児童だと18歳までしか対象にならないため、同じ場所に成人の入所型の施設も作った。
     現在は、「袖ヶ浦のびろ学園」において、ショートステイや地域の方の育児支援を、「袖ヶ浦ひかりの学園」において、成人の方の短期入所やデイケア事業を行っている。その他、板橋区において「赤塚福祉園」、清瀬市において「子どもの発達支援・交流センター『とことこ』」を受託運営している。また、大田区の「若葉の家」では療育部分を区から受託しており、世田谷区船橋でも、「世田谷区発達障害相談センター」を受託運営している。多くは、障害者自立支援法の下での運営である。その他、独自事業として、通所療育機関「こぐま学園」を運営している。
     これら自閉症支援の長い歴史もあり、発達障害者支援法成立後に、「東京都発達障害者支援センター(TOSCA)」を受託することとなった。

     A「袖ヶ浦のびろ学園」について
     「袖ヶ浦のびろ学園」は設立当初は、国指定の「第二種自閉症児施設」であった。自閉症に特化した処遇のため設立された入所施設である。障害者総合支援法の下では、この名称はなくなり、「福祉型障害児入所施設」(児童福祉施設最低基準第48条)の一種となっている。かつての「第一種自閉症児施設(医療型施設)」、「第二種自閉症児施設(福祉型施設)」は今ではかなり少ない。
  • 【[】12月17日(火)NPO法人東京都更生保護就労支援事業者機構・東京都更生保護就労支援事業所訪問
     研究代表者・更生保護関係グループにて、12月17日にNPO法人東京都更生保護就労支援事業者機構・東京都更生保護就労支援事業所に訪問しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     東京都更生保護就労支援事業者機構

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @石川正興(社会安全政策研究所長、法学学術院教授)
      A志賀ツヤ子(社会安全政策研究所招聘研究員、大和・綾瀬保護司会保護司)
      B三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)就労支援事業者機構関係者
      @松本明久(東京都更生保護就労支援事業者機構常務理事)
      A深井伸次(東京都更生保護就労支援事業所長)

     3.意見交換会の概要
     @NPO法人就労支援事業者機構の設立
     2009(平成21)年1月に、中央の経済諸団体や大手企業関係者等が発起人となり、「全国就労支援事業者機構」が設立され、同機構は2011(平成23)年6月に認定NPO法人となった。また、地方単位のものとして、各都道府県就労支援事業者機構も設立されるようになり、2010(平成22)年7月に全国50か所(北海道のみ4か所)に設立された。
     東京都では、東京都更生保護就労支援事業者機構と称し、2009(平成21)年7月にNPO法人の認証を受け、また、2011(平成23)年度からは、法務省の委託事業である「更生保護就労支援モデル事業」も受託しながら活動を展開している。

     A更生保護就労支援モデル事業の現状
     法務省では、2011(平成23)年度より「更生保護就労支援モデル事業」を開始することとなり、事業運営は民間の法人に委託され、公募のなかから各保護観察所が委託法人を決定する。当事業は「就職活動支援業務」「職場定着支援業務」「定住支援業務」「雇用基盤整備業務」を行うこととなっており、2011(平成23)年度は東京、宇都宮及び福岡の3庁、2012(平成24)年度からはさらに札幌、名古屋及び大阪の3庁の計6庁において実施している(なお、2012年1月からは「更生保護被災地支援対策強化事業」として類似の枠組みで盛岡、仙台及び福島でも実施)。
     東京都では、2011(平成23)年度より「東京都更生保護就労支援事業者機構」が受託し、「就労支援事業所」を設置して事業を行っている。保護観察所の長が、受刑者等又は保護観察対象者等のなかから「支援対象者」を決定し、支援を事業所へ依頼する。依頼を受けた事業所は、支援として、就労意欲の喚起、職業情報の提供、就職面接の助言・付添い等を行うほか、就職先が協力雇用主等である場合は、就職活動が功を奏した後も「職場定着支援」として支援対象者及び企業主双方に対して職場定着に必要な助言等も行う。
     2011(平成23)年度の開設以降、訪問日である2013(平成25)年12月までに「就職活動支援業務」は300件程度あり、年齢幅は16歳〜70歳代までと幅広く、少年はうち1割程度、女性は3名のみ、更生保護施設入居者が7割程度とのことである。
     なお、就職活動支援を行ったもののうち、就職に結びついたものは、1週間程度の短期も含めると90%を超えるが、刑期満了後等も継続して職場に定着できるのは1割程度であり、今後の課題となっているという。

     B協力雇用主活用への課題
     東京都内の協力雇用主は現在450社程度あるが、うち7割が建設業であり、不況もあって実際に矯正施設出所者等を雇用できるのは全体の1割程度である。
     また、矯正施設出所者等のうちでかなりの者が前歴を公表することに消極的であり、その場合には協力雇用主や、公共職業安定所の専用窓口を活用することができない。そのため、前歴秘匿を希望する者の場合は、縁故、街中の就職情報誌、派遣業者などを利用するほか、公共職業安定所の一般窓口を主に利用することになる。
     なお、協力雇用主である場合、職場定着支援として就労支援員が職場を訪問し、支援対象者や企業側に助言等を行うことが可能であるが、一般企業である場合はそういうことができないため、その点も課題になっているという。
  • 【\】2月3日(月)〜5日(水)札幌関係機関訪問
     2月3日〜5日に札幌市学校教護協会、北海道警察本部生活安全部少年課少年サポートセンター、並びに札幌市若者支援総合センターに訪問しました。概要は以下のとおりです。

     一.札幌市学校教護協会
     1.開催場所
     札幌市立米里中学校・札幌東高等学校

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @石川正興(社会安全政策研究所長、法学学術院教授)
      A棚村政行(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院教授)
      B小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
      C宮古紀宏(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助教)
      D矢作由美子(社会安全政策研究所招聘研究員、敬愛大学国際学部兼任講師)
      E江ア澄孝(社会安全政策研究所招聘研究員、神奈川県指定自動車教習所協会専務理事)
      F宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      G三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      H李程(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)札幌市学校教護協会関係者
      @競和之(札幌市学校教護協会理事長)
      A深尾暢(札幌市学校教護協会幹事長)

     3.意見交換会の概要
     札幌市学校教護協会は、中学生・高校生の非行防止や健全育成に重要な役割を果たしている組織であり、当研究所としても2009年10月〜2012年3月のJST石川プロジェクト当時から調査を行っている。この度は、その後の状況及びさらなる実態解明を図るべく調査を行い、今回新たに判明した主な点は以下のとおりである。なお、JST石川プロジェクト当時の調査結果は、『子どもを犯罪から守るための多機関連携の現状と課題』(成文堂、2013年)を参照いただきたい。

     @学校教護協会と商工会議所等との連携
     2011(平成23)年から、学校教護協会は商工会議所やその関連団体との関わりをもつようにしている 。当時の教育次長(2013年4月1日からは教育長)が札幌市の商工会議所とのつながりが長いこともあり、その方を通じて関係をもつことができたのが契機である。
     生徒がたむろするのは、カラオケ店やアミューズメント施設などである。しかし、例えばカラオケ店で学校教護協会関係者が巡視しようとした際、これまでは店側から断られ、うまく巡視が行えないこともあった。この度、商工会議所等と関わりを持ったことでそういった場所での巡視もしやすくなり 、ここ1・2年の指導効果も高まったほか、商工会議所等のなかにも活動の意義を感じてくれる人もでてきているという。

     A学校教護協会と札幌市若者支援総合センターとの連携
     中学校卒業後に進学も就職もしない者や、高校に進学したものの中退をし、その後に就労にうまく繋がらない者がおり、その者たちへの就労支援及び居場所づくりが課題となっている。これらの点については、札幌市では、後述の「札幌市若者支援総合センター」が精力的に活動しており、学校教護協会としても、研修会に招聘して当該センターから活動内容を紹介してもらうなど、当該センターとの連携に力を入れ始めている。

     B学校教護協会と少年友の会との連携
     札幌市教育委員会のとある職員が退職後、札幌家庭裁判所家事調停委員とともに、少年友の会に入会したこともあり、その方を通じて、学校教護協会と少年友の会とで関わりを持ち始めるようになった。2013(平成25)年度は、使用済み切手の整理活動などで共に活動をするほか、少年友の会の活動を紹介する講演を研修会で開くなどし、今後のさらなる連携体制を模索している。

     二.北海道警察本部生活安全部少年課少年サポートセンター
     1.開催場所
     北海道警察本部生活安全部少年課少年サポートセンター

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @石川正興(社会安全政策研究所長、法学学術院教授)
      A宮古紀宏(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助教)
      B矢作由美子(社会安全政策研究所招聘研究員、敬愛大学国際学部兼任講師)
      C江ア澄孝(社会安全政策研究所招聘研究員、神奈川県指定自動車教習所協会専務理事)
      D宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      E三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      F李程(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)少年サポートセンター関係者
      @馬場孝司(北海道警察本部生活安全部少年課少年サポートセンター所長)
      A大澤光男(北海道警察本部生活安全部少年課指導官)
      B井川一彦(北海道警察本部生活安全部少年課非行対策第二課長補佐)
      C高瀬早苗(北海道警察本部生活安全部少年課少年サポートセンター補導員)
      D中村真紀(北海道警察本部生活安全部少年課少年サポートセンター補導員)

     3.意見交換会の概要
     北海道警察本部少年サポートセンターの取り組みについては、JST石川プロジェクト当時から調査を行っている。この度は、その後の状況及びさらなる実態解明を図るべく調査を行い、今回新たに判明した主な点は以下のとおりである。

     @居場所づくり事業の実施
     北海道警察本部少年課では、2004(平成16)年1月から非行少年や不良行為少年等の継続補導の一環として「居場所づくり事業」を実施している。新規に立ち上げられた「居場所づくり実行委員会」が活動を推進しており、同委員会は、北海道少年補導連絡協議会及び北海道防犯協会連合会が中心となり、少年課が事務局である。居場所づくり事業を展開していたことは、後述の「学習支援・就労支援」を行う上での土台となっている。

     A学習支援・就労支援の実施
     北海道警察本部少年課少年サポートセンターでは、まだ試行的ではあるが、非行少年や不良行為少年等への「学習支援・就労支援」を開始している。対象者は、1年以内に非行や不良行為をなしたが、立ち直りが見込める少年などである。どちらの支援も、少年サポートセンターが最後まで抱え込むのではなく、規範意識や対人スキルの向上を図って、復学を目指したり、学習支援・就労支援を行っている他機関へ引き継いだりすることを目標としている(警察は他機関への「橋渡し役」)。

     BJUMPERSの取り組み
     JUMPERSとは、2009(平成21)年10月から発足した大学生ボランティアである。方面毎に募集をかけており、札幌方面では毎年4月ころに、札幌近郊の大学・短大計9校程度に募集を行っている。応募者には研修を行った上で委嘱をしており、現在49名が所属している。JUMPERSには上記の「学習支援・就労支援」のほか、「居場所づくり事業」にも協力してもらっている。

     三.札幌市若者支援総合センター
     1.開催場所
     札幌市若者支援総合センター

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @石川正興(社会安全政策研究所長、法学学術院教授)
      A宮古紀宏(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助教)
      B矢作由美子(社会安全政策研究所招聘研究員、敬愛大学国際学部兼任講師)
      C江ア澄孝(社会安全政策研究所招聘研究員、神奈川県指定自動車教習所協会専務理事)
      D宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      E三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      F李程(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)札幌市若者支援総合センター関係者
      @松田 考(札幌市若者支援総合センター副館長)

     3.意見交換会の概要
     札幌市若者支援総合センターは、引きこもり・不登校や非行少年の立ち直り支援の上で重要な役割を果たしている機関であり、当研究所としても2009年10月〜2012年3月のJST石川プロジェクト当時から調査を行っている。この度は、その後の状況及びさらなる実態解明を図るべく調査を行い、今回新たに判明した主な点は以下のとおりである。

     @所在地の移転
     若者支援総合センターは、2013(平成25)年4月に、札幌市中央区北8条西24丁目から現在の住所に移転された。市の中心部に移転されたことは、相談件数が増える一因となった。

     A札幌市学校教護協会との連携
     中学校を卒業しても進路が決まらない生徒を若者支援総合センターへつないでもらうことを目的に、札幌市学校教護協会との連携体制を築いた。中学校の時点で不登校の子どもの情報を共有するために、中学校の校長OBをスタッフとして採用し、センターの取り組みを紹介した。その後、札幌市学校教護協会を通して、各学校へセンターの広報をしてもらった。

     B若者支援総合センターの特徴
     若者支援総合センターは、相談機能・居場所づくり機能・アセスメント機能から就労まで、一連の機能をワンストップ体制で実施している。対象者をアセスメントしながらキープする「仕掛けのある居場所づくり」を実現できている点がポイントである。
     ※一連の機能のうち、アセスメント機能と就労支援は厚生労働省地域若者サポートステーション事業の実施によって対応を可能にしている。

     C札幌市子ども・若者支援地域協議会との関係
     札幌市子ども・若者支援地域協議会は継続しており、今年度はインターネット依存の問題、生活困窮の問題、相談機関特有のリスクの問題(個人情報の取り扱い、対応の仕方や成果に結びつかなかったことに対する相談者からの不満など)を扱った。テーマによっては構成機関に加え、関連分野の担当者等を加えたりすることもある。
  • 【]】2月13日(木)・20日(木)子ども安全セミナー講師養成講座の視察
     2月13日・20日に、日本ガーディアン・エンジェルス主催による「子ども安全セミナー講師養成講座」を視察しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     かながわ県民センター

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @江ア澄孝(社会安全政策研究所招聘研究員、神奈川県指定自動車教習所協会専務理事)
      A小松一枝(社会安全政策研究所招聘研究員、千代田区保護司会保護司)
      B渡辺昭一(社会安全政策研究所招聘研究員、元財団法人社会安全研究財団研究主幹)
      C三枝功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
      D吉満圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

     (イ)先方対応者及び受講者
      @日本ガーディアン・エンジェルス講師(講師でもある江ア氏を含む) 4名
      Aセミナー一般受講者 10名

     3.視察の概要
     @本講座の位置づけ
     神奈川県では、「NPOやボランティアなど、地域課題の解決や活性化に向けた活動に取り組む人材を育成する『県民の学び場』」として「かながわコミュニティカレッジ」という事業を実施し、そこでは、毎年30以上の各種テーマの講座が開講されている。今回の講座も、県が募集する「かながわコミュニティカレッジ」に日本ガーディアン・エンジェルスが応募して採択されたものである。
     日本ガーディアン・エンジェルスとしても、子ども向けの安全セミナーは数多く実施しているが、当該セミナーを行う講師を養成するための本講座のような取り組みは数少ない先駆的なものという。

     A本講座の内容
     防犯には、「地域の防犯力」と「個人の防犯力」が存在するが、今回の講座では後者、特に子どもたち自身に自分の身を守る力(レジリエンス)を身に付けてもらうためにどのようなことを大人がすればいいかを、大人自身が学ぶことを目的とする。
     「個人の防犯力」向上には、「目の力」と「耳の力」に関わる「危険察知」能力の向上と、「手の力」と「足の力」と「声の力」に関わる「危険回避」能力の向上とがある。本講座では、子どもたちが上記能力を向上させるために、どのような子ども向けのセミナーを実施すればいいのかを、実践と座学を通じて学習していた。
     実践例としては、不審人物の特徴を押さえる際のポイント、不審者の見分け方と不審者を見つけた際の対応方法、パーソナル・スペースの重要性、周囲に助けを呼ぶ際の注意事項などのほか、不審者から距離をとることが最も重要ではあるものの、万一近づかれた際の子どもでもできる間合いの取り方(簡単な護身術)などが紹介された。また、座学では、いじめ防止対策推進法の紹介や、子どもの安全・安心に関する施策を行う際の「仕掛け」の重要性、ボランティア組織が学校などで子ども向けのセミナーを行う際の心得などが紹介された。
  • 【XI】2月14日(金)防犯ライブ2014の視察
     2月14日に、港南区防犯団体「こうなん防犯寺子屋」による「防犯ライブ2014」を視察しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     港南区民文化センター「ひまわりの郷ホール」

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
      @江ア澄孝(社会安全政策研究所招聘研究員、神奈川県指定自動車教習所協会専務理事)
      A吉満圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

     (イ)主催者
      こうなん防犯寺子屋ライブ実行委員会
     
     3.視察の概要
     @本ライブの位置づけ
     「防犯寺子屋」がこのような防犯ライブを主催するのは今回が初めてであり、本ライブは、様々な地域の方に参加をしてもらうなかで地域の防犯力の強化を図るとともに、連携の絆を深めることを開催趣旨としている。また、開催にあたっては神奈川県港南警察署も協力をしており、ライブの合間に現職警察官が地域防犯に関する講演を行っていた。
     さらに、本ライブは活動資金確保の一手法としての位置付けもなされており、参加者から参加費(1人1,000円)を募るほか、当日配布されたプログラムに広告を掲載して広告費を得ていた。ボランティア活動といえども、その活動に諸経費がかかることは必至であり、本企画は活動費を確保する上での斬新な取り組みといえる。

     A桂歌助氏による「防犯落語」
     防犯ライブの第一部では、落語家である桂歌丸氏の2番目の弟子にあたる桂歌助氏による「防犯落語」が披露された。通常の落語にみられるような古典落語や新作落語の類ではなく、「振り込め詐欺」をテーマとした自作の落語であった。
     ライブ参加者のほとんどが高齢の方ということもあり、落語をストーリー仕立てにした上で、振り込め詐欺への注意喚起を実施していた。なお、港南警察署では「携帯電話が変わったという連絡は、サギ」、「『お金』という言葉がでたら、サギ」という標語を用い、「振り込め詐欺」の撲滅キャンペーンを行っている。

     Bまつざき幸介氏による歌謡リサイタル
     防犯ライブの第二部では、港南区出身の歌手であるまつざき幸介氏によるリサイタルが行われた。まつざき氏ご自身が神奈川県の出身ということもあり、神奈川の各地名にちなんだ歌が多く披露された。
  • 【XII】WIPSS科研費共同研究会更生保護関係部会(第1回)
     WIPSS科研費共同研究会更生保護関係部会では、非行少年の更生保護場面におけるボランティア団体の活動を調査していますが、この度その一環として高坂朝人氏に報告をお願いし、質疑応答を行いました。概要は、以下のとおりです。

     日時:2014(平成26)年3月8日(土)14:00−16:30
     会場:早稲田大学早稲田キャンパス26号館7階702号教室
     報告者:高坂朝人氏(NPO法人セカンドチャンス!副理事長・名古屋代表他)

     1.高坂氏の報告概要
     (ア)報告者が現在関わっている団体
     報告者は、少年期に非行歴があり、少年院入院経験などもある。しかし、その後、特別養護老人ホームで働いていく中で、お金よりも大切なものがある、こんな自分でも必要とされることがあるなら損得勘定抜きで当時の経験を活かさせてもらいたいと思うようになり、非行少年と関わるボランティアを行うようになった。現在は、「BBS会」、「東海・『非行』と向き合う親たちの会」、また「NPO法人セカンドチャンス!」に所属し、様々な立場から非行少年たちの非行防止・立ち直り支援に尽力している。

     (イ)報告者からみたBBS会の良さ
     BBS会とは、法務省HPや日本BBS連盟HPにも記載のとおり、更生保護に関わる青年ボランティア団体である。報告者からみて、BBS会の良さは主に以下の点とのことである。
     @歴史と信頼があるため、ダイレクトに非行少年と「ともだち」になれる。
     A更生保護の裾野を広げ、ユニークにしている。
     B教科書やメディアから非行少年を知るのではなく、非行少年と直接触れ合うことができる。

     (ウ)「『非行』と向き合う親たちの会」の概要
     自身の息子・娘の非行で悩んでいる親たちは、どこにこのような悩みを相談すればいいかがわからないことがあることを踏まえ、春野すみれ氏が、親たちで集まり、我が子の非行の悩みを話し合える団体が必要ではないかと思い設立したもの。親同士で日ごろの悩みを打ち明けることで、「悩んでいるのは自分だけではない」といった、励ましや勇気を得ることができるという。なお、高坂氏は、「東海・『非行』と向き合う親たちの会」の世話人として付添人活動もしており、参加している親の子どもと、一緒に食事をしたり相談に乗ったりして立ち直りを支援しているという。

     (エ)「セカンドチャンス!」の概要
     「セカンドチャンス!」とは、少年院出院者等が経験と希望を分かち合い、仲間として共に成長することを目的とし、2009(平成21)年1月に設立された団体である。本会では、「正直・平等・尊敬」をポリシーとし、現在、全国9地区に分かれて活動をしている。その他の詳細は以下のとおりである。
     @会員の構成及び入会について
     会には、少年院出院者のほか、少年院に行ったことはない少年鑑別所や刑務所経験者、さらには、元法務教官・大学教員・学生など、年齢制限なく、幅広く受け入れている。関係者からの紹介や、セカンドチャンス!公式ブログなどを通じて繋がり、会の仲間となっている。会員による少年院などでの講演活動を通じた入会の相談が最近は多くなっている。
     A活動内容について
     各地区での交流会と、全国での合同合宿とがある。各地区での交流会では、食事会や釣りといった課外活動のほか、ミーティングも行う。ミーティングでは、テーマ(例:10年後の自分について)を決めて話をしたりするが、「言いっぱなし、聞きっぱなし」を基本とし、批判も賛同もしない。全国合同合宿は年2回程度であり、最近は富士山登山なども行った。なお、本会の活動を他の団体等に紹介するべく、上記のほか、各種講演活動も行っている。


     2.質疑応答の概要
     Q1:矯正施設出所者の立ち直りにおいて「社会における居場所作り」の重要性が指摘されているが、その際「物理的な居場所作り(物理的定着)」のみならず「心理的な居場所作り(心理的定着)」が重要となる。この点から、少年院出院者の自助グループである「セカンドチャンス!」の実践には大いに関心がある。
     そこで質問だが、第一に、「セカンドチャンス!」の活動に参加する少年院出院者は、どのようなルートから集まってくるのか?第二に、ボランティア団体とは言え、その運営には少なからず資金が必要になろうが、その資金をどのようにして調達しているのか?
     高坂氏の回答:第一の質問についてだが、全国で「セカンドチャンス!」の講演会をやっていて、出院したら会おうということで繋がることが多い。あとは「非行と向き合う親たちの会」などで、「子どもが少年院から出院したらお願いします」ということで繋がることもある。それから自分が付添人になったらほぼ100%紹介するようにしている。
     次に第二の質問に関してだが、「セカンドチャンス!」の設立後数年は外部助成金をいただいたが、そのときでも各地区の交流会は、全部参加者の自腹で行っており、会場は2,000円位の場所を借り、できるだけお金をかけないようにしてきた。2014(平成26)年度は、助成金をもらうという話は出ていないので、出院者や、それ以外のサポーターの人から会費を集めて、運営メンバーが集まる交通費を何とか賄っていけたらいいということで動いている。
     Q2:少年院に入ったり、保護観察所に関わったりしている際、どういうふうに接してもらったり、どういう支援があったりすれば、犯罪から離れることができると思うか?
     高坂氏の回答:自分自身で「俺は悪い不良になるんだ」と言い聞かせていると、周りの大人が手を差し伸べてくれても、なかなかそこから脱出するのは難しい。自分の体験談で言うと、24歳のとき大きな転換があった。それは、自分が「親になる」ということである。それ以外にも要素はあったと思うが、最大のものは「親になるから、真面目になる」ということであった。自分自身に対しても、不良の仲間に対しても、大人に対しても、いい言い訳になった。たとえ親になるといった大きな転換はないとしても、何か一つ自分自身や周りにちゃんと説明のつく「言い訳」がつくれるようになるといいと考えている。

      <研究会風景>
      title

  • 【XIII】WIPSS科研費共同研究会警察関係部会・学校関係部会(第1回)
     WIPSS科研費共同研究会警察関係部会・学校関係部会では、それぞれ非行少年の警察場面・学校場面におけるボランティア団体の活動を調査しています。この度その一環として、警察関係部会では警察関係グループサブリーダーの江ア澄孝氏がこれまでの調査研究の中間報告を行ったほか、学校関係部会では半沢通氏に報告をお願いし、質疑応答を行いました。概要は、以下のとおりです。

     日時:2014(平成26)年3月22日(土)13:00−16:50
     会場:早稲田大学早稲田キャンパス8号館4階411号教室
     報告者:
     @江ア澄孝氏(社会安全政策研究所招聘研究員、神奈川県指定自動車教習所協会専務理事)
     A半沢通氏(郡山女子大学学生生活部相談・学外生活指導担当、元福島県警察本宮警察署長)

     1.警察関係部会(江ア澄孝氏報告)関連
     (ア)研究課題と目的について
     本研究では、子どもの非行防止・犯罪被害防止のためのボランティア組織において、持続・継続・発展させること、同じ目的を有する複数の組織を繋げること、さらには、「子どもの安全」確保のための活動を拡げていくことについて、どのような組織マネジメントを行えばいいのかを明らかにすることを目的とする。
     具体的には、警察関係グループとして、「神奈川県港南防犯寺子屋」、「鎌倉ガーディアンズ」並びに「日本ガーディアン・エンジェルス」を主な対象とし、それらの実態調査研究をとおして、ボランティア組織が抱える「現在的課題」、「人的課題」、「金銭的課題」、「情報発信・提供の課題」、「評価方法」を明らかにしていく。

     (イ)3つのボランティア組織の概要
     @防犯寺子屋
     神奈川県警が誘拐防止のため「おおだこポリス」を作成したことを契機として、現在の活動に至っている。現在の組織メンバーは45名であり、その協力機関として港南警察署や港南区役所地域振興課がある。活動内容は「おおだこポリスの4つのおやくそく」という標語による啓発活動など、約束やルールの指導を中心としたものである。港南区全小学校を対象に活動を行っている。

     A鎌倉ガーディアンズ
     本組織の代表は鎌倉が好きで鎌倉に住むようになったが、そこには暴走族やコンビニにたむろしている人たちがおり、また、夏には海がライブハウス化していて、その状況をどうにか変えたいと思うようになった。パトロールをし、それが徐々に広まって現在に至っている。構成メンバーは自治会や町内会の役員を終えられた方たちである。鎌倉の町を好きな人々が自治的に行っている。活動内容として祭りのパトロールや子どもの見守り活動、交通整備などがあり、活動資金はほとんどを寄付で賄っている。

     B日本ガーディアン・エンジェルス
     港区にある小学校のPTAからの依頼をきっかけとして、子どもが自分でできる危機管理方法を身に付けるためのプログラム開発に取り組み、現在までの活動に繋がっている。主に首都圏や北九州市からの委託で活動を行っており、協力機関として北九州市、新宿区、埼玉県和光市教育委員会などがある。また、子どもたちに危険に対するレジリエンス(耐性)を身に付けさせるために、目と耳の力で危険を察知する指導や、手と足と声の力により危険を回避する指導も行っている。また、活動の一内容として、子ども安全セミナーの講師を育てるために、神奈川県内で2014(平成26)年2月に講師養成講座を開催した。

     (ウ)質疑応答の概要
     Q1:町内会という組織は、近年は加入率が課題となっているものの、全国的に存在しており、活用の仕方によって、地域の防犯・少年の健全育成・環境の美化活動など、様々な点において効果を発揮すると思われる。コミュニティ・スクールなど、新たな取り組みも見られるが、その活性化の方途についてどのようにお考えか。
     江ア氏の回答:本日報告したもののほか、横浜市での岡村中学校(滝頭地区及びその周辺地区子どもの幸せを実現する会)や大鳥中学校(大鳥中生徒を守り育てる会)の取り組みのように、学校を地域に開放し、地域の活動拠点となることで、地域も学校も改善された例が存在する。近年は、「多機関連携」が重要視されているが、その連携には「地域」も取り込んだものになりつつあり、今後、ますますその活性化が必要であると感じている。


     2.学校関係部会(半沢通氏報告)関連
     (ア)郡山市の少年非行の概要
     郡山市は、人口約33万人であり、他都市からの通勤・通学者も多い福島県内最大の都市である。警察署としては、郡山警察署と郡山北警察署とで郡山市を管轄している。非行少年や不良行為少年の検挙・補導件数は、全国的な減少傾向と同様に、郡山市でも減少傾向である。もっとも、交通網の発達などで、少年の行動が広域化しており、広域的な地域社会ネットワークの構築が課題となっている。

     (イ)郡山市における非行防止のための地域社会ネットワークの概要
     郡山市では、72団体で構成された「郡山市青少年健全育成推進協議会」がネットワークの中心を担い、そこでは各団体の全体的な意思統一などが図られている。実際に非行防止活動を担っている主な団体としては、「少年センター」、「青少年健全育成地区協議会」、「少年サポートチーム」、「要保護児童対策地域協議会」、「地域サポートチーム」、「郡山署グリーンフォース」、並びに「郡山地区保護司会」などが挙げられる。参加者との質疑応答でも特に取り上げられた「少年センター」と「郡山署グリーンフォース」の概要は後述のとおりである。
     なお、郡山市においては、このように多様な団体があるものの、各団体の存在や活動内容が把握しにくくなっているのが課題となっている。また、各団体全般的に高齢化傾向で、女性も多く、活動時間等に制約も多くなっている。

     (ウ)少年センターの概要
     郡山市における少年センターは、1965(昭和40)年5月に設置されており、市教育委員会等が所管したりした後、現在は郡山市こども部こども未来課が所管している。3名の職員のほか、10名の運営協議会と、150名の補導員で構成されている。主な活動は「街頭補導」であり、警察署や少年警察ボランティアとの合同補導なども行っている。補導内容は、喫煙・自転車二人乗り・無灯火・愛の一声等であり、年間、補導人数はおよそ3,000人前後となっている。少年センターの補導では、警察のように補導票などは作成しておらず、「姿を見せる活動」が主となっている。
     現在は、警察の補導活動と違って明確な法的裏付けがないため、少年センターの補導でどの程度まで声掛けを行っていいのかなどが不明確であることが課題となっている。

     (エ)郡山署グリーンフォースの概要
     グリーンフォースとは、2009(平成21)年7月より、県内の警察署毎に行っているものである。地域安全活動・交通事故防止・少年非行防止を目的とし、月2回、ラジオ出演・チラシ配布・被害防止教室・仮設住宅訪問・クリスマスパトロール等の警戒活動・清掃活動・有害環境浄化活動・自転車防犯点検・花の移植といったグリーン活動などを行っている。構成は、管内の中学生・高校生・専門学校生・大学生等であり、2012(平成24)年は113名が参加した。

     (オ)質疑応答の概要
     Q1:少年センターによる補導活動について、警察による補導活動と違って、法的裏付けが明確でなく範囲などがあいまいになっている部分があるとのことだが、警察や少年警察ボランティア協会を始めとした各種機関・団体との研修会などで、そういった部分の具体的な研修は行っていないのか。
     半沢氏の回答:郡山市の場合、当該研修会などでは、少年非行の情勢紹介や講和のようなものが主であり、具体的な補導活動の方法などが取り上げられることはほとんどない。補導員は学校教員・PTA・民間のボランティアの方が委嘱されていて補導活動の専門家ではないので、そういったより突っ込んだ研修や情報交換が今後より必要になってくると思われる。
     Q2:今現在、ボランティアをやっている大人の活動は、いずれ今の若者が引き継がなければならない。その点、「グリーンフォース」活動は、次世代をリードする若者を育てるには重要な活動であると思われる。本活動は、現在は警察署単位で行っているようだが、さらに拡充するためにも学校と協力したりして行ったりする予定などはないのか。
     半沢氏の回答:今のところ、学校に対しては、ボランティア活動の募集という依頼文のやり取りをしているくらいである。警察と学校とで協力した組織作りというところまではいっていない。

      <研究会風景>
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  • 【XIV】3月24日(月)稲城市発達支援センター・レスポーいなぎ訪問
     児童相談所関係グループにて、3月24日に「稲城市発達支援センター・レスポーいなぎ」を訪問しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     稲城市発達支援センター・レスポーいなぎ

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
     @小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、早稲田大学法学学術院准教授)
     A宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)稲城市発達支援センター・レスポーいなぎ関係者
     @堀内太郎(稲城市発達支援センター・レスポーいなぎ(社会福祉法人正夢の会)支援課長・ケースワーカー)

     3.意見交換会の概要
     (ア)センターの沿革
     社会福祉法人「正夢の会」では、設立以来「発達障害支援セミナー」の開催を継続するなど、支援を必要とされる方が主体性をもった生活ができるよう、その心に添った支援を実践する事を目的に啓発活動を行っていた。
     他方、東京都は「発達障害者支援センター」の機能を区市町村の役割と考え、各自治体にその機能を求めているが、現稲城市長の選挙公約に「市発達障害支援センター設立」を載せた経緯もあり、従来より発達障害支援の普及に携わってきた社会福祉法人正夢の会に事業が受託され、2013(平成25)年4月1日に「発達障害者支援センターレスポーいなぎ」が開所されることになった。

     (イ)相談対象者
     @対象者および相談経路
     年齢別で見ると、相談の4割は学齢期の子どもである。他方、障害別にみると、相談の8割以上が知的障害のない高機能自閉症スペクトラムの者である。特に、知的障害のない発達障害の成人の方の支援が近年の課題と考えている。
     経路別では、家族からの相談が大半を占める。反対に、本人から相談は少ない。
     A支援上の課題
     我々が「明らかにスムーズに暮らしていない」と思っていても本人がそう思っていなければ支援が難しい。相談に来て、話したいことを話してもらい、自分で問題に気づいていくことが理想と考えている。そのような「支援付き試行錯誤」の実施が望ましい。また、発達障害は個別性が強い。支援の方法は、発達障害の特性の強さ、発達の段階等によって変わる。
     また、ハイティーンになると自分に障害があるというのを自認しにくいが、保護者も認めたがらない傾向が出てくる。診断を進めるかは家族や本人の受け止め方次第である。

     (ウ)他機関・団体との連携
     @親の会(ボランティア団体)との連携
     まだ地元のボランティア団体とは連携はしていない。今後、当事者の家族会との連携や家族同志の連携体制を構築していくことが地域の課題である。さらに、家族へのメンター(指導者)や、ペアレントトレーニングも必要と考えている。
     A学校との連携
     学校からの相談が増えてくるようになったが、学校で対応しきれない部分をどうすべきか苦慮している。学校と事業所では対応の仕方や考え方も異なる部分があるので、その点の連携が必要と考えている。
     B教育センターとの連携
     教育委員会が所管する教育センターから、レスポーいなぎへ相談がくることもあるほか、並行利用している家族もおり、情報共有のための会議を開催することもある。ワンストップでの対応ができるような体制作りが今後求められる。

     (エ)今後の展望と課題
     @サポートファイルの活用
     早期介入がなく、触法ではなく、そのうえひきこもりのような状況になってしまうケースがある。こうしたケースは、より早い段階で支援に繋げられれば良い。
     この点、稲城市では、本人およびその家族が、これまでの受診歴や相談歴を一つにまとめて保存する「サポートファイル」の活用を進めている。サポートファイルを活用することによって、本人に関する情報の一元化、本人及びその家族から関係機関への情報提供の適正化、関係機関同士の情報連携等が可能になり、他機関同士が互いの連携のメリットを知ることにもつながると考えている。
     A虐待との関係
     被虐待の影響で、子どもが発達障害と同じような症状を呈するという問題がある。他方、発達障害が原因で子育てがうまくいかず、虐待を行ってしまうと言う場合もある。
     また、保護者も発達障害で適切な養育ができないというような「多問題家族」の問題もある。カウンセリングを通じて自発的・自立的に生活の質を高めていけるように自分を吐露できる場があるかということと、その後のサポートのための社会資源が求められる。
     B親の情報不足の問題、関係機関同士の情報連携の問題
     自閉症スペクトラムの小児の家族は、子どもの就学時の学級をどのように決めていくかや、その後の将来をどのように設計していくかという青写真のなさに悩んでしまっている。そもそも、どこに何を相談すればよいかが分からない、「情報難民」と言える状況が存在している。また、学校と福祉の現場が、発達障害児に関する互いの問題状況を十分に把握し切れていないという問題もあり、こうした情報連携不足を補う必要がある。
     C課題
     つなげられる資源・団体を増やしていくことが課題である。確かに電話で相談するだけでも連携と言えるが、各事業所との支援の担当範囲をどう一緒に話していけるかとか、発達障害自体の理解についてもまだまだ課題がある。
     また、高機能自閉症スペクトラムの場合、相談に来ても、受け皿がないために相談を継続しているというケースもある。
     「発達障害者に対するライフ・ステージに応じた支援」という視点を考えていく必要がある。ライフ・ステージを進む上で事前に練習しておけば、将来問題を起こすことを防ぐこともできる。関わっている今の時点だけでなく、その先まで見たうえで今どうするかという姿勢が支援者には求められる。
  • 【XV】3月24日(月)特定非営利活動法人子どもセンターてんぽ訪問
     児童相談所関係グループにて、3月24日に「特定非営利活動法人子どもセンターてんぽ」を訪問しました。概要は以下のとおりです。

     1.開催場所
     新横浜法律事務所(特定非営利活動法人子どもセンターてんぽ事務局)

     2.参加者
     (ア)早稲田グループ
     @小西暁和(社会安全政策研究所研究所員、早稲田大学法学学術院准教授)
     A宍倉悠太(社会安全政策研究所事務局員、早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程)

     (イ)特定非営利活動法人子どもセンターてんぽ関係者
     @高橋 温(弁護士、特定非営利活動法人子どもセンターてんぽ理事)

     3.意見交換会の概要
     (ア)「てんぽ」の運営事業
     @「てんぽ」は現在、以下の3種類の事業を実施している。
      (a)子どもシェルター運営事業
      2007年4月から運営。定員は男女6名。
      (b)電話相談事業
      (c)自立援助ホーム「みずきの家」
      2010年6月から運営。児童福祉法6条の2第1項および33条の6に位置づけられている児童自立生活援助事業を実施する。定員は女子のみ6名。
      なお、自立援助ホーム退所後の退所者支援施設を法人の独自事業で設置しており、ラップ(LAP。Life Assistance Programの略称)と呼ばれるプログラムを実施している。
     A東京では既に「カリヨン子どもセンター」が開所していたが、神奈川県でも同様の問題に対応する必要が生じていた。そこで児童相談所の対象年齢を超えた子どもの居場所作りについての問題意識を基に、弁護士達が勉強会を立ち上げたことを契機に開所へ至った。設置は全国で2番目である。

     (イ)対象者の特徴
     @年齢は15歳から20歳未満の者が中心である。子どもシェルターの入所者は18歳の者が3分の2以上を占めており、児童相談所で保護できない子どもを引き受けることが主である。一時保護所に入れられない年長の子どもを受け入れるということが多い。
     Aその他に、被虐待児や、非行により家庭裁判所による試験観察や、保護観察処分になった少年の帰住先となることもある。
     B入所の背景因は、被虐待経験が圧倒的に多い。虐待ケースは学校に相談したり他人の家を泊まり歩いたりしている場合に、大人から連絡が来るというものである。性別で見ると女子の方が多い。また、シェルターの平均滞在期間は約75日である。

     (ウ)スタッフ
     @子どもシェルターは常勤スタッフ3名、「みずきの家」は常勤スタッフ3名+非常勤スタッフ1名体制で運営している(いずれも2014年度)。その他、子どもシェルターには常勤を補うボランティアがいる。
     Aボランティアは初めは人伝手で募集していた。現在は、年1回法人が独自に行う養成講座や、神奈川県民活動サポートセンターでボランティアのマッチングを行う「ボランティア連携講座」によって募集する。

     (エ)予算
     @法人全体の収入のうち、6割程度は国と県の補助金によって賄っている。その他、会費や寄付の収入があるが、安定した経営には足りないのが現状である。
     A子どもシェルターと自立援助ホームは、スタッフの日中活動の内容などが全く異なる。そこで、予算に関して、児童自立生活援助事業における子どもシェルターと自立援助ホームの施設種別を別にしてほしいという申出を去年の11月位に厚労省に対してしている。

     (オ)他機関との連携
     @児童相談所との連携
     神奈川県内の各児童相談所と協定書を結んでいる。神奈川の場合、児童相談所の設置主体に政令市の三市と横須賀市が含まれるので、4か所とそれ以外の神奈川県の児相の計5自治体の児相と協定書を結び、情報連携・行動連携のガイドラインを設定している。
     Aその他、女性相談所のシェルターや市町村の窓口、学校などとは緊密な連携体制を構築している。
      (a)女性相談所との連携がかなり密接である。女性相談所のシェルターに入った若年ケースを「てんぽ」に移したいという相談や、逆に「てんぽ」からの対処ケースの依頼などがある。
      (b)市町村の窓口では、女性と子どもの相談がくっついていることが多いため、「てんぽ」の紹介を実施している。
      (c)学校へは、居場所の無い子のために電話相談カードを配っている。

     (カ)今後の展望
     @神奈川県内の自立援助ホームは、まだ数が足りないと思われる。就労を前提としない施設も必要である。18歳を超えても入所できる、就労・就学等に向けた多様な施設が必要である。こうした施設が充実すれば児童相談所も対応のスキルが上がり、18歳に近い年齢の児童の受け入れもさらに積極化すると思われる。
     A子どもシェルターについては、都道府県に1か所は最低必要である。また、すでに開設している地域でも、男子への対応が必要と考える。

    以上