独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業の基盤研究(C)
「子どもの非行・虐待防止のための地域社会ネットワークの実証的研究」活動報告(2012年度)

 2012年度の研究活動の概要は以下のとおりです。

  • 【T】8月20日(月) 神奈川県警察本部少年育成課関係者との意見交換会
    1. 開催場所:かながわ県民センター会議室

    2. 参加者
    (1) WIPSS関係者
    @石川 正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
    A石堂 常世(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院教授)
    B棚村 政行(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院教授)
    C藤野 京子(社会安全政策研究所研究所員、文学学術院教授)
    D渡辺 巧(社会安全政策研究所招聘研究員)
    E江ア 澄孝(前神奈川県警察本部生活安全部長)
    F宮古 紀宏(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助教)
    G帖佐 尚人(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助手)
    H宍倉 悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    I朴 春蘭(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    J三枝 功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    K吉満 圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)
    (2) 神奈川県警察関係者
    L山田 眞也(前神奈川県警察本部少年育成課長)
    M村松 康夫(神奈川県警察本部少年育成課管理官)
    N阿部 敏子(神奈川県警察本部少年育成課少年相談・保護センター所長)
    O西谷 晴美(神奈川県警察本部少年育成課課長補佐)

    3. 意見交換の概要
    (1) 「子どもの非行・虐待防止のための地域社会ネットワークの実証的研究」の概要について
    @本共同研究会では、子どもの非行や虐待の防止を目指す地域社会のネットワークに関して、実態解明を行うとともに、より良いネットワークを構築するための諸条件を探る。
    A地域社会ネットワークを構成する「民間ボランティア・組織」としては、以下のものを研究対象とする。
     ・学校運営協議会(コミュニティ・スクール)
     ・スクールカウンセラー(SC)
     ・スクールサポーター
     ・被害少年サポーター
     ・ガーディアン・エンジェルス
     ・民生委員・児童委員
     ・学校担当保護司
     ・少年サポートチーム

    (2) 神奈川県で実施する研究会について
    @月1回程度のペースで、神奈川県域で活動する民間ボランティア・行政事業実施者から、その活動についてご報告をいただき、意見交換を行う。
    A意見交換会の名称を「科研費研究神奈川部会」とし、報告者の人選については神奈川県警察本部少年育成課の協力を得ながら進める。
        
    <研究会風景>
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  • 【U】9月28日(金) 第1回科研費研究神奈川部会実施報告
    「滝頭地区子どもの幸せを実現する会、大鳥中生徒を守り育てる会、神奈川警察署スクールサポーターの活動について」
    1. 開催場所:かながわ県民センター会議室

    2. 報告者
    @神ア 良嗣(滝頭地区及びその周辺地区子どもの幸せを実現する会会長)
    A谷知 恵美子(滝頭地区及びその周辺地区子どもの幸せを実現する会事務局長)
    B齋藤 宗明(横浜市立大鳥中学校校長(大鳥中生徒を守り育てる会))
    C長橋 文雄(神奈川警察署スクールサポーター)

    3. 参加者
    @石川 正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
    A石堂 常世(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院教授)
    B藤野 京子(社会安全政策研究所研究所員、文学学術院教授)
    C小西 暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
    D渡辺 巧(社会安全政策研究所招聘研究員)
    E宮古 紀宏(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助教)
    F江ア 澄孝(前神奈川県警察本部生活安全部長)
    G村松 康夫(神奈川県警察本部少年育成課管理官)
    H扇山 剛(神奈川県警察本部少年育成課課長補佐)
    I太田 広明(神奈川県警察本部少年育成課課長補佐)
    J小林 万洋(法務省矯正局少年矯正課企画官)
    【事務局】
    @帖佐 尚人(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助手)
    A宍倉 悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    B朴 春蘭(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    C三枝 功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    D吉満 圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

    4. 意見交換の概要
    (1) 横浜市立岡村中学校の取組について
    @滝頭地区にある岡村中学校は1998(平成10)年代半ばごろから再び問題行動が顕著となり、区長を中心とした住民が、2008(平成20)年9月に、市の「身近な地域・元気づくりモデル事業」を活用して「滝頭地区及びその周辺地区子どもの幸せを実現する会」を発足させ、学校と連携した活動を開始した。
    A「子どもの幸せを実現する会」は、11の班に分かれ、校内の清掃や花壇づくり、教室に入らない生徒の学習支援・生活支援、地域パトロールなどを実施。教職員の日頃からの懸命な努力、寄り添う指導に側面から支援した。
     その結果、教室外で怠学する生徒がいなくなり、窓ガラスの破損行為もなくなるなど、校内に次第に落ち着きが戻りつつある。また、卒業生と地域住民との間の交流も生まれている。

    (2) 横浜市立大鳥中学校における取組について
    @大鳥中学校は、1970年代後半から生徒指導が困難な学校として有名だった。近年では、日常的な対教師暴力、トイレの破壊、十数年飼っていた鯉の生徒による惨殺など、問題行動が頻発していた。
    A齋藤校長赴任後、対教師暴力行為は警察に被害届を出す、「悪いことは悪い」と伝えるなど、「社会で許されないことは学校でも許されない」という毅然とした態度で応じていくという指導方針を遵守した。
     また、生徒が主役の学校づくりをすすめるため、生徒会の防犯ボランティアの参加などの活動を推進した。その結果、規範意識が醸成され、学校が非常に落ち着き始めた。
     その他、県警主導のサポートチームが行っていた朝の声かけ運動を契機とする「大鳥中生徒を守り育てる会」が、2012(平成24)年4月に発展的に解消され「学校運営協議会」となった。現在では、この協議会を通じて地域との連携・協力が図られている。

    (3) 神奈川県警スクールサポーターの活動について
    @神奈川県警のスクールサポーターは、警察と学校・地域を結ぶ連絡調整役として、子どもの安全対策の支援、また子どもの非行防止に関する支援を行っている。その内容は主として、以下の4つに大別される。
     (i)児童等の安全確保のための学校への支援
     (ii)地域安全情報の収集と提供、
     (iii)非行防止・犯罪被害防止教育の推進
     (iv)少年の非行防止および立ち直り支援活動
     また、主な活動として、小・中・高等学校における犯罪被害防止教室、薬物乱用防止教室の開催、不審者侵入対応訓練、ケータイ・ネットの使い方教室、規範意識を育てる紙芝居、PTAと教職員への講演などを行っている。
    A学校関係の各種協議会へも出席しており、児童支援専任と生徒指導専任が出席する専任教諭協議会、区児童指導協議会、各小学校が開催するスクールゾーン対策協議会、各中学校区で開催される学校・家庭・地域連携事業実行委員会、学校運営協議会などに参加している。

     <研究会風景>
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  • 【V】11月16日(金)  第2回科研費研究神奈川部会実施報告
    「横浜市立大鳥中学校における警察・地域社会との連携について」
    1. 開催場所:横浜市立大鳥中学校

    2. 報告者
    @齋藤 宗明(横浜市立大鳥中学校校長(大鳥中生徒を守り育てる会))
    A鈴木 聖一(大鳥中生徒を守り育てる会会長)
    B興梠 教三(神奈川県警警察本部少年育成課少年相談・保護センター少年相談第一係)

    3. 参加者
    @石川 正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
    A石堂 常世(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院教授)
    B棚村 政行(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院教授)
    C小西 暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
    D渡辺 巧(社会安全政策研究所招聘研究員)
    E大越 篤(大学院教職研究科教授)
    F江ア 澄孝(前神奈川県警察本部生活安全部長)
    G阿部 敏子(神奈川県警察本部少年育成課少年相談・保護センター所長)
    H小林 万洋(法務省矯正局少年矯正課企画官)
    I森 康(横浜少年鑑別所統括専門官(考査担当))
    【事務局】
    @帖佐 尚人(社会安全政策研究所研究所員、教育・総合科学学術院助手)
    A宍倉 悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    B朴 春蘭(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    C三枝 功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    D吉満 圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

    4. 意見交換の概要
    (1)大鳥中学校と警察との連携について
     2010(平成22)年度までの大鳥中学校は、中学2、3年生の不良グループが、日常的に土足で校内を徘徊し、授業離脱などをしていた。そこで神奈川県警察本部少年育成課少年相談・保護センターに所属していた横浜第一方面係長を始め少年相談員が20〜30回ぐらい学校訪問を行い、サポートチームの立ち上げに向けて動いた。
     2011(平成23)年度に齋藤宗明氏が校長となってようやくサポートチームが結成。朝のあいさつ運動、校内巡回などを実施するとともに、個々の生徒との人間関係の構築にも努めた結果、問題行動も徐々に減少していった。校長の統率力が学校の問題行動の沈静化に大きく影響した。

    (2)大鳥中学校への地域的な支援の経緯について
     2009(平成21)年度・2010(平成22)年度の大鳥中学校の状況はPTAの方でも問題視していた。そこでPTAでは、学校の行事に際して生徒たちに食べ物を振る舞う活動や校内清掃を開始し、大人の見守る目が常にあるということを生徒に伝えた。
     齋藤校長が赴任してからは、教師にも活気が戻り、会の発足とも相まって、学校組織としての一体化がもたらされた。その結果、次第に生徒たちが落ち着いていった。

    (3) 意見交換
     意見交換では、学校における生徒指導のうえでの組織力の重要性や、スクールソーシャルワーカー・特別支援教育の専門家・児童相談所・少年鑑別所などの関係者・関係機関を交えた校内のケース会議の必要性などが指摘された。

    <研究会風景>
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  • 【W】12月7日(金) 東京都立白鷺特別支援学校「公開研究会」への参加
     江戸川区内にある東京都立白鷺特別支援学校では、研究活動の成果を広く公開し、参加者との意見交換を通じて今後の教育活動の一層の充実を図る趣旨で、12月7日(金)に「公開研究会」(授業改善研究会分科会報告)が開催された。
     当校では、自閉症教育推進指定校として、家庭・地域社会から特別支援教育に対して寄せられる様々な期待に応えられる授業作りを目指し、本年度も教員の方々が授業改善研究会を通して研究活動に取り組んで来られた。
     このように当校では地域社会との連携を重視しており、本科研費研究グループも「公開研究会」に参加した。

    1. 参加者
    @石川 正興(社会安全政策研究所所長、法学学術院教授)
    A小西 暁和(社会安全政策研究所研究所員、法学学術院准教授)
    B宍倉 悠太(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    C朴 春蘭(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    D三枝 功侍(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科博士後期課程)
    E吉満 圭祐(社会安全政策研究所事務局員、大学院法学研究科修士課程)

    2.東京都立白鷺特別支援学校の概要
    @白鷺特別支援学校は、知的障害を有する、または特別な支援の必要な生徒が通う学校であり、中等部と高等部を有している。現在318名(中学部83名・高等部235名)の生徒に対し、中学部16学級・高等部34学級、教職員数125名の体制で教育を行っている。
     障害の程度は多様であり、軽度・中度・重度の知的障害のほか、中・重度の発達障害、軽度の精神疾患を有する生徒もいる。
    A中学部の教育課程は学年別と、障害の程度別に「普通学級」「自閉症学級」「重度重複学級」に分けられており、少人数に対し複数の担任制で授業が行われる。これに対し高等部では、学年別と類型別(1類〜4類)に分けられ、類型別の作業学習が行われている。また、中学部ではキャリア教育として作業学習と職業(清掃活動)を推進しており、
     高等部では「学級職業」の授業を通じて個別の課題に向けた取り組みを展開している。
    B卒業後の進路として、中学部の生徒の大半は高等部へ進学するという。高等部卒業者は、一般就労のほか、就労支援を行う授産施設、生活介護や自立訓練を行う厚生施設等へ入所している。
  • 【X】3月5日(火) 第1回東京部会実施「東京都子供家庭総合センター関係者との意見交換会」
     2013(平成25)年2月から、東京都で「警視庁新宿少年センター」、「東京都児童相談センター」及び「東京都教育相談センター」が同一建物に同居した「東京都子供家庭総合センター」が開設されたことを踏まえ、この度、当該センター関係者との意見交換会を開催致しました。 
     なお、「東京都子供家庭総合センター」の概要については、こちら(東京都福祉保健局HP)をご参照ください。

     <研究会風景>
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  • 【Y】3月14日(木) 第3回神奈川部会実施「スクールサポーターの活動の現状と課題について」
     2007(平成19)年4月以降、神奈川県警察でスクールサポーターを配置して子どもの非行・虐待防止に積極的に活動されていることを踏まえ、この度、当該関係者との意見交換会を開催致しました。
     当日の実施報告については、『WIPSS紀要第6号』(2013年度末発刊予定)に掲載を予定しております。

     <研究会風景>
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    以上