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飲食チェーン業界のCRM戦略におけるPF活用方針に関する研究

〜各機能に関する自社保有とPF活用の選択要因〜 相馬 汐美(デジタル経営研究センター)
根来 龍之(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 / IT戦略研究所所長)

近年、多種多彩なツーサイド・プラットフォームが登場し飛躍的な発達を遂げている。今やプラットフォームを全く活用していない人を探すのは困難なほどである。一方、自社だけりーちできなかった顧客との接点創出を可能とするプラットフォーム(以下PF)を積極活用せず、あえて自社アプリで顧客との接点を強化する企業も存在している。
本研究の目的は、顧客接点を担う機能について、事業会社がプラットフォームを活用するべきか、または自社機能を構築すべきかを事実に基づいて議論することである。
本研究が事例対象とするのは、顧客接点を担うPFが多く存在する飲食業界である。具体的には自社でスマートフォンアプリを保有するチェーン店企業35社を抽出し、「クーポン」「オーダー」「決済」「ポイント」「デリバリー」という顧客接点を担う5つのバリューチェーン機能において、それぞれのPF活用状況と自社機能の保有実態を調査した。この調査により、顧客接点を担う各機能の導入方針には、たとえ類似の商品を扱っている企業であっても、各社それぞれに多様な選択があることが判明した。そこからさらに特徴的な企業を8社取り上げ、顧客接点を担うバリューチェーン機能において、現状の選択を行った意図をインタビューにて調査した。
本研究の成果は、実態調査及びインタビュー調査により判明した各企業の選択とその選択理由に基づき提案する2つの規範的モデルである。1つ目のモデルは、各社の実際の選択内容から帰納した「機能別選択チェックリスト」である。このモデルは、顧客接点を担うバリューチェーンの機能別に、PF活用と自社構築のどちらを選択するべきかを示唆する。2つ目のモデルは、各企業のCRM戦略別に定めた「規範的選択マトリックス」である。これは、自社のCRM戦略に基づいて、バリューチェーン内のどの機能を保有すればよいか、また個人情報をどの程度取得するべきかを判断する論理的基準を示唆するものである。
本研究は、より抽象的には事業会社とPFは、機能の実装についてどちらが担うかを「競争」しあう関係にあることを示唆する。この点は従来のPF戦略論とは異なる新しい着眼点であると考えられる。今後飲食業界以外の分析も行うことで、より自社での機能保有とPF活用の関係性に関する議論が進むと思われる。

キーワード

CRM、プラットフォーム活用方針、飲食チェーン業界、機能別選択チェックリスト、規範的選択マトリックス

掲載

2021年2月掲載

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