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Uberの日本参入戦略はなぜ遅れをとったのか

 ~ロビイングを含めた競争ダイナミクスの事例研究~ 安永 修章 (早稲田大学大学院経営管理研究科)
根来 龍之(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 / IT戦略研究所所長)

Uberがなかなか意図どおりに日本市場に参入できてこなかった経緯について、過去の論評の多くは、その理由を規制の壁、既得権益・既存業界の反対が強すぎたからということで結論づけることが多く、それ以上の考察はなされていない。これは、Uberは、参入のために熱心にロビイングに取り組んできたが、その活動が必ずしも思い通りの成果をあげられなかったということでもある。
ロビイングの位置づけ、さらに非市場戦略についての先行研究はいくつかあるが、市場参入の背景にある各プレーヤーの意図へのロビイングの関与だけでなく、その反作用について、市場戦略と統合的に考察した研究は筆者の知る限り行われていない
筆者自身はUber Japan最初のロビイストとして、政府渉外を主としたロビイング活動に関わり、Uber Japanのビジネスモデルの変遷の一端を担ってきた。このような背景から行われた本研究の目的は2点ある。1点目は、Uber Japanのビジネスモデル変遷について、ステークホルダーの行動と、行動の関係を時系列に記述し、その上で、Uber Japanのロビイング活動が自社・他のプレーヤーのメンタル・モデルにどのような影響を与え、同時に、他のプレーヤーの行動が、Uber Japanのビジネスモデル変遷にどのような影響を与えたのか、そして、Uber Japanの参入をめぐるロビイング活動が結果として果たした役割についての事例研究である。2点目は、この事例研究をもとに、ロビイング活動について明示的に含めて議論されてこなかった従来の競争ダイナミクスの議論に、ロビイングが果たす役割を含めて考えるべきことを示唆することである。
本研究では、まず、Uber 創業時から2019年までの各ステークホルダーの活動を時系列で記述し、Uber Japanのビジネスモデルの変遷を戦略モデルおよびその前提となるメンタル・モデルの形で整理した。その上でUber Japanと各プレーヤー間の相互作用を競争ダイナミクスの観点で分析した。それぞれの先行研究として、非市場戦略についてはDavid P. Baron(1995)、メンタル・モデルはPeter M. Senge(2006)、競争ダイナミクスについてはMing-Jer Chen & Danny Miller(2012)を参照した。戦略モデル、自己強化型(成長)ループのモデルについては、根来・徳永(2007)を参照した。
本研究の成果は、Uberの日本参入時から2019年までの事象をステークホルダーごとに時系列で記述し、Uber Japanが選択したその時々のビジネスモデルの意図、自己強化型(成長)ループが、Uber Japanと新経済連盟のロビイング活動にどのように影響を与えたかを明らかにしたことである。そして、Uber Japan(及び新経済連盟)のロビイング活動が競争相手(タクシー事業者)からどのような反応を引き出したかを明らかにすることで、ロビイング活動を含めた競争ダイナミクスの議論を行った。また、本研究では、従来の議論において自社に有利な方向性に導く役割を果たすと素朴に位置づけられてきたロビイングが、時に結果として企業の成長を阻害する活動になってしまう場合があることを示した。

キーワード

戦略モデル、ロビイング、非市場戦略、メンタル・モデル、競争ダイナミクス

掲載

2020年3月掲載

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