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国内ネット系ベンチャーの「早すぎる」海外進出の理由

~90年代/2000年代と2010年代の米国進出の理由の比較事例分析~ 標  千枝(早稲田大学大学院経営管理研究科)
根来 龍之(早稲田大学大学院経営管理研究科教授/IT戦略研究所所長)

海外では1980年代から、設立当初からグローバル市場を目指すベンチャー「Born Global Company」が登場してきた。一方日本ではそのようなベンチャーは一般的ではなかったが、近年になりメルカリのように、日本のネット系ベンチャーにおいて国内事業がまだ赤字であるにも関わらず米国進出を行う企業が登場してきた。
本研究では、このような最近の日本のネット系ベンチャーの海外展開を「早すぎる海外展開」と名付け、それらベンチャー事業がなぜ早すぎる米国進出を行うのかの理由を分析する。
まず、日本国内で起業し、米国市場に進出し製品の販売やサービスの提供を行った事業を90年代から2010年代まで挙げ、それらのうち、「早すぎる」すなわち国内事業が黒字になる前に米国進出した事業と、国内事業が黒字化してから米国進出した事業とに分類を行った。その結果、2010年代に国内事業を開始したネット系ベンチャーの多くが、「早すぎる」米国進出を行っているということがわかった。
さらに、それぞれの事業の米国進出理由について、インタビュー記事等の二次情報と直接インタビューによる一次情報に基づいて、因果連鎖図を用いて整理を行った。次に「早すぎる」米国進出を行った事業については、因果連鎖図で分析した事業毎の様々な進出理由から最も重要な理由を反事実的条件法により抽出を行い、重要な理由毎に抽象化・共通化を行うことで一般化した。その結果、2010年代の「早すぎる」米国進出を行ったネット系ベンチャーは、コア資源がグローバル性を必要としているため早い米国進出が必要、早く米国進出しないと海外市場が獲れない、早く米国進出しないと日本市場を競合に奪われる、日本市場だけでは近いうちに成長できなくなる、といった「早すぎる米国進出をせざるを得ない」環境認識が主要因となり、米国進出をしていることがわかった。
また次に、国内事業で黒字化してから米国進出をした90年代、2000年代の事業について、これら理由が当てはまるかを検討したところ、「早すぎる米国進出をせざるを得ない」環境認識を持っていないことがわかった。
以上から、90年代、2000年代と比較し、2010年代のネット系ベンチャー企業は、コア資源のグローバル性が高まっていること、また日本市場の閉塞感がさらに進み、日本市場だけでは成長できないという認識が深まっていることにより、追い立てられ、「早すぎる」米国進出を行っているのだと考えられる。
このようなベンチャーの米国進出傾向は、今後も継続すると考えられる。今後これらの「早すぎる」米国進出を行ったベンチャーが、実際に成功できるかどうかについても今後観察が必要である。

キーワード

ネット系ベンチャー、アメリカ進出、Born Global、Rapid & Early Internationalozation

掲載

2019年3月掲載

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