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二輪ヘッドライトの技術進化とエコシステムがシェアに与える影響

~Adner & Kapoor(2010)仮説の追試~ 桑原 彩乃(早稲田大学大学院経営管理研究科)
根来 龍之(早稲田大学大学院経営管理研究科教授/IT戦略研究所所長)

要旨

本研究の目的は、Adner & Kapoor(2010)にて半導体リソグラフィーツール業界を対象に、パネルデータ分析によって検証された三つの仮説を、二輪車ヘッドライト業界を対象に追試を行い、その仮説が他業界でも支持されるのか検証することである。企業の持つ技術優位性とその企業のパフォーマンスがどう影響するかという研究は古くから行われて来たが、Adner & Kapoorは、上流(部品企業)、下流(顧客企業と、対象企業提供品とは別のセット部品企業)の間にいる企業を対象企業とすることで新しい主張を行った。その主張は、対象企業から見て、上流の構成品(部品)の技術的課題は対象企業のパフォーマンスにプラスに働き、下流の補完品(他部品)の技術的課題はマイナスに働くという仮説である。これは上流の技術課題は技術リーダーの学習機会が増すために、結果的にその企業のパフォーマンスにプラスの影響を及ぼす。反面、下流の技術課題は技術リーダーの学習曲線の下降スピードを遅らせ、他社にキャッチアップする機会を与えることから、その企業のパフォーマンスにマイナスの影響が及ぶといった主張である。加えて、先行論文では技術世代の後半になればなるほど、垂直統合による優位性が増すと主張している。これは構成品サプライヤーの行動の不確実性を低減することは難しいため、自社内製化することが優位に働くといった仮説である。
先行論文では、半導体リソグラフィーツールの製造企業を対象とし、技術世代別の変数を設定し、対象企業の指定年でのシェアを被説明変数として回帰分析を行っている。当研究においては、二輪車ヘッドライトの製造企業を対象として、先行論文と同様の変数設定を行った上で、追試を行った。
当研究の貢献は二つである。一つ目は先行論文での主張が他産業でも支持されるのかを考察したことである。結果、三つの仮説はいずれも支持されず、先行論文で主張された理論の限界を示した。二輪車ヘッドライト業界特有の外観魅力度や顧客企業の調達方針変数を反映し、再度追試を行ったが、いずれも統計的有意とはならなかった。これは二輪車ヘッドライト業界においては、顧客企業である二輪車メーカーのモデルチェンジタイミングでのみ技術世代の更新が行われ、技術優位性の変数を新世代の投入タイミングからの年数で測る方法が有効ではなかったためと考えられる。また補完品が他の部品とも関連しているため、車体全体の仕様変化の影響を受けるという理由もある。また垂直統合は、元来専門部品メーカーによる集中生産品であり対象企業による後からの垂直統合がほとんど行われないため、統計的観測数が不足していることが挙げられる。
二つ目の貢献は、当研究の考察から、Adner & Kapoorの3仮説が支持されるための四つの業界条件を示唆したことである。第一に顧客企業によって技術更新のタイミングがコントロールされていないこと、第二に補完品が他の部品と連携しておらず、エコシステムが閉じているという条件である。第三に、垂直統合については、対象企業が統合能力を有しているということ、そしてそもそもそれが後から進む業界であるという条件が必要である。最後に、対象企業と顧客企業のオープンな取引関係の存在である。

キーワード

構成品、補完品、エコシステム、技術課題、技術の世代交代

掲載

2019年3月掲載

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