打廻り窺ひ廻るぞふ敵なる早裏門に呼子の笛時分はよしと両人は拍子木合せて天河と貫の木はづして大門をくはらりとひらけば力弥を始め杦野木村三村の一党我も〱と込入て見れば一面雨戸のかため父か教へし雪折は爰ぞと下知して丸竹に弦をかけたを雨戸の鴨居敷居にはさんで一時にひいふう三つの拍子にてかけたる弦をてうど切ば鴨居はあがり敷居はさがり雨戸はづれてばた〱〱そりや乗込と天河の声ひゞかして乱れ入スハ夜討ぞと松明挑燈裏門よりも込入て一方は郷右衛門一方は由良助床几にかゝつて下知をなす小勢なれ共寄手は今宵必死の勇者秘術をつくせば由良助余の者に目なかけそ只師直を討とれと郷右衛門諸共に八方に下知すればはやりをの若者共もみ立〱切むすぶ北隣は仁木播磨守南隣は石堂右馬之丞両隣ゟ何事かと家の棟に武者を上挑燈星のごとくにてヤア〱御屋敷騒動の声太刀音矢さけひ事さはがしく狼籍者か盗賊か但非常の沙汰なるか承はりとゞけよと主人申付られしと高らかに呼はつたり由良助取あへず是は塩冶判官が家来の者共主君の怨を報はん為四十余人の者共が千変万化の戦ひかく申は大星由良助原郷右衛門尊氏御兄弟へお恨なしもとより両隣仁木石堂殿へ何の意恨も候はねば卒尓致さん様もなし火の
打廻り窺ひ廻るぞふ敵なる早裏門に呼子の笛時分はよしと両人は拍子木合せて天河と貫の木はづして大門をくはらりとひらけば力弥を始め杦野木村三村の一党我レも〱と込入ツて見れば一チ面雨戸のかため父か教へし雪折レは爰ぞと下知して丸竹に弦をかけたを雨戸の鴨居敷キ居にはさんで一ツ時にひいふう三つの拍子にてかけたる弦をてうど切ば鴨居はあがり敷居はさがり雨戸はづれてばた〱〱そりや乗リ込メと天河の声ひゞかして乱れ入ルスハ夜討ぞと松明挑燈裏門ンよりも込入て一方は郷右衛門一方は由良ノ助床几にかゝつて下知をなす小勢なれ共寄セ手は今宵必死の勇者秘術をつくせば由良ノ助余の者に目なかけそ只師直を討とれと郷右衛門諸共に八方に下知すればはやりをの若者共もみ立〱切むすぶ北隣は仁木播磨守南隣は石堂右馬之丞両隣ゟ何事かと家の棟に武者を上挑燈星のごとくにてヤア〱御屋敷キ騒動の声太刀音矢さけひ事さはがしく狼籍者か盗賊か但非常の沙汰なるか承はりとゞけよと主人申付ケられしと高らかに呼はつたり由良助取あへず是は塩冶判官が家来の者共主君の怨を報はん為四十余人の者共が千変万化の戦ひかく申スは大星由良助原郷右衛門尊氏御兄弟へお恨なしもとより両隣仁木石堂殿へ何の意恨も候はねば卒尓致さん様もなし火の
ウ:ふ敵なる,フシ:ふ敵なるウ/フシ
地:早,ハル:早地/ハル
中:呼子の中
ウ:よしとウ
ウ:拍子木ウ
ハル:貫の木ハル
色:力弥を色
ウ:杦野ウ
ハル:我もハル
ウ:見ればウ
ウ:爰ぞウ
ウ:敷居にウ
色:一時に色
ウ:ひいウ
ウ:かけたるウ
ハル:鴨居はハル
ウ:ばたウ
ウ:そりやウ
フシ:声フシ
地:スハ,ハル:スハ地/ハル
ウ:一方はウ
色:由良助色
ウ:床几にウ
ハル:小勢なれ共ハル
ウ:秘術をウ
色:由良助色
詞:余の詞
地:郷右衛門諸,ハル:郷右衛門諸地/ハル
ウ:はやりをのウ
三重:切むすぶ,上:切むすぶ三重/上
地:北隣は,ハル:北隣は地/ハル
中:右馬之丞中
ウ:両隣ゟウ
ハル:家のハル
フシ:挑燈フシ
詞:ヤア詞
地:但,ハル:但地/ハル
ウ:承はりウ
ウ:主人ウ
フシ:高らかにフシ
地:由良助,ハル:由良助地/ハル
色:取あへず色
詞:是は詞