詰たとなせ様の心底小浪殿の貞女志がいとをしささせにくい祝言さす其かはり世の常ならぬ嫁の盃請取は此三方御用意あらばと指置ば少は心休まつて抜たる刀鞘に納め世の常ならぬ盃とは引出物の御所望ならん此二腰は夫が重代刀は正宗指添は浪の平行安家にも身にもかへぬ重宝是を引出と皆迄云さず浪人と侮て價の高い二腰まさかの時に売拂へといはぬ斗の婿引出御所望申は是ではないムヽそんなら何が御所望ぞ此三方へは加古川本蔵殿のお首を乗て貰たいヱヽそりや又なぜな御主人塩冶判官様高の師直にお恨有て鎌倉殿で一刀に切かけ給ふ其時こなたの夫加古川本蔵其座に有て抱留殿を支た計に御本望も遂られず敵は漸薄手計殿はやみ〱御切腹口へこそ出し給はね其時の御無念は本蔵殿に憎しみがかゝるまいか有まいか家来の身として其加古川が娘あんのんと女房に持様な力弥じやと思ふての祝言ならば此三方へ本蔵殿の白髪首いやとあればどなたでも首を並る尉と婆それ見た上で盃させうサヽサアいやかおゝかの返答をと尖き詞の理屈詰親子ははつとさしうつむき途方にくれし折からに加古川本蔵が首進上申お受取なされよと表に扣へし薦僧の笠ぬぎ捨てしづ〱と内へはいるはヤアおまへはとゝ様本蔵様爰へはどふして此形は合点が
詰たとなせ様の心底小浪殿の貞女志がいとをしささせにくい祝言ンさす其かはり世の常ならぬ嫁の盃キ請取ルは此三方御用意あらばと指置ケば少シは心休まつて抜イたる刀鞘に納め世の常ならぬ盃キとは引出物の御所望ならん此二タ腰は夫トが重代刀は正宗指添は浪の平行安家にも身にもかへぬ重宝是を引出と皆迄云さず浪人と侮て價の高い二タ腰まさかの時に売拂へといはぬ斗の婿引出御所望申スは是ではないムヽそんなら何が御所望ぞ此三方へは加古川本蔵殿のお首を乗セて貰たいヱヽそりや又なぜな御主人塩冶判官様高の師直にお恨有て鎌倉殿で一ト刀に切かけ給ふ其時こなたの夫ト加古川本蔵其座に有ツて抱留殿を支た計ツに御本望も遂られず敵は漸薄手計リ殿はやみ〱御切ツ腹口へこそ出し給はね其時の御無念ンは本蔵殿に憎しみがかゝるまいか有まいか家来の身として其加古川が娘あんのんと女房に持ツ様な力弥じやと思ふての祝言ンならば此三方へ本蔵殿の白髪首いやとあればどなたでも首を並る尉と婆それ見た上で盃キさせうサヽサアいやかおゝかの返答をと尖き詞の理屈詰親子ははつとさしうつむき途方にくれし折からに加古川本蔵が首進ン上申スお受ケ取なされよと表テに扣へし薦僧の笠ぬぎ捨てしづ〱と内へはいるはヤアおまへはとゝ様本蔵様爰へはどふして此形リは合点が
地色:請取は,ハル:請取は地色/ハル
フシ:御用意フシ
地色:少は,ウ:少は地色/ウ
ハル:抜たるハル
色:鞘に色
詞:世の詞
地:是を,ハル:是を地/ハル
色:云さず色
詞:浪人と詞
地:おゝかの,ハル:おゝかの地/ハル
ウ:尖きウ
ウ:理屈詰ウ
ウ:親子はウ
フシ:さしうつむき,中:さしうつむきフシ/中
ノル:途方にノル
詞:加古川詞
地:表に,ウ:表に地/ウ
ハル:笠ハル
ウ:内へウ
詞:ヤア詞
地色:爰へは,ハル:爰へは地色/ハル
ウ:合点がウ