婿殿殿
婿殿殿
理も法も忘れたなナウ小浪今いふ通の男の性根しやうねさつたといふを面当つらあてほしがる所は山々外へ嫁入する氣はないかコレ大事の所泣ず共しつかりと返事やコレどふじや〱と尋る親の氣は張弓はりゆみアノ母様のどうよくな事おつしやります国を出る折とゝ様のおつしやつたは浪人しても大星力弥行義といひ器量きりやうといひ仕合な婿をとつた貞女ていちよ両夫りやうふにまみへずたとへに別れても又の夫もうけなよぬし有女のふ義同前必々寝覚ねさめにも殿御大事を忘るゝな由良助夫婦の衆へ孝行かう〱つくし夫婦中むつまじい迚あじやらにも悋氣りんきばししてさらるゝなあんぜうか迚隠さずと懐妊みもちに成たら早速さつそくにしらせてくれとおつしやつたをわたしやよう覚て居るさられていんでとゝ様に苦に苦をかけてどふいふてどふ云訳いひわけが有ふ共力弥様より外にの殿御わしやいや〱と一筋に恋を立ぬく心根を聞にたへ兼母親の涙一突詰つきつめ覚悟かくごの刀抜はなせば母様是は何事と押とめられて顔を上何事とは曲がない今もそなたがいふ通時も早う祝言しうげんさせうゐ孫の顔見たいと娘にあまいはてゝの習ひ悦んでござる中へまだ祝云もせぬ先に去れて戻ました迚どふ連いなれふぞといふて先に合点せにや仕様もやうもないわいの殊にそなたは先妻せんさいの子わしとはなさぬ中じや故およそにしたかと思はれてはどふも生てはゐられぬ義理此通

地:コレ,ハル:コレ地/ハル

ウ:〱と

ウ:尋る

ウ:母様の

ウ:国を

中:おつしやつたは

ウ:浪人

ウ:行義と

ハル:仕合なハル

ウ:貞女

サハリ:譬サハリ

ウ:夫に

中:主,ウ:主中/ウ

ハル:必ハル

中:忘るゝな

ウ:由良助

ウ:睦じい迚

ウ:悋氣ばし

ナヲス:してナヲス

フシ:さらるゝな,中:さらるゝなフシ/中

地:案ぜうか迚,ウ:案ぜうか迚地/ウ

ウ:懐妊に

ハル:早速にハル

ウ:しらせて

ウ:わたしや

ウ:さられて

ウ:とゝ様に

ウ:苦に

ウ:どふ

中:有ふ共

ハル:力弥様よりハル

上:わしや

フシ:恋をフシ

地:聞に,ハル:聞に,サハリ:聞に地/ハル/サハリ

中:涙

ウ:覚悟の

ハル:刀ハル

ウ:母様

中:顔を

詞:何事とは

地:悦んで,ハル:悦んで地/ハル

ウ:去れて

ウ:戻ました迚

ウ:といふて

中:せにや

中:仕様,フシ:仕様,ノル:仕様中/フシ/ノル

地:殊に,ハル:殊に地/ハル

ウ:わしとは

ウ:どふも

ウ:ゐられぬ

ウ:此