未来への追善⊗サア其追善は冥途の供と⊗もぎ取刀をしつかと持添夫勘平連判には加へしかど敵一人も討とらず未来で主君に云訳有まじ其云訳はコリヤ爰にとぐつと突込畳の透間⊗下には九大夫肩先ぬはれて七顛八倒⊗それ引出せの⊗下知より早く縁先飛おり平右衛門朱に染だ骸をば無二無三に引ずり出しヒヤア九大夫めハテよい氣味とひつ立て目通へ投付れば⊗起立せもせず由良助髻をつかんでぐつと引寄獅子しんちうの虫とは儕が事我君ゟ高知を戴莫太の御恩を着ながら敵師直が犬と成て有事ない事よう内通ひろいだな四十余人の者共は親に別れ子にはなれ一生連添女房を君傾城の勤をさするも亡君の怨を報じたさ寝覚にも現にも御切腹の折からを思ひ出しては無念の涙五臓六腑をしぼりしぞや取わけ今宵は殿の逮夜口にもろ〱のふ浄をいふても慎に慎を重る由良助によう魚肉をつき付たなアいやといはれずおふといはれぬ胸のくるしさ三代相恩のお主の逮夜に咽を通した其時の心どの様に有ふと思ふ五体も一度に脳乱し四十四の骨々も砕る様に有たはやいヘヱヽ獄卒め魔王めと土に摺付捻付て無念涙にくれけるがコリヤ平
未来への追善⊗サア其追善は冥途の供と⊗もぎ取ル刀をしつかと持チ添夫ト勘平連判には加へしかど敵一人ンも討とらず未来で主君ンに云訳有ルまじ其云訳はコリヤ爰にとぐつと突込畳の透間⊗下には九大夫肩先キぬはれて七顛八倒⊗それ引出せの⊗下知より早く縁先キ飛おり平右衛門朱に染だ骸をば無二無三に引ずり出しヒヤア九大夫めハテよい氣味とひつ立て目通リへ投ケ付クれば⊗起キ立タせもせず由良ノ助髻をつかんでぐつと引寄セ獅子しんちうの虫とは儕レが事我君ゟ高知を戴莫太の御恩を着ながら敵師直が犬と成て有ル事ない事よう内通ひろいだな四十余人の者共は親に別れ子にはなれ一ツ生連添女房を君傾城の勤をさするも亡君の怨を報じたさ寝覚にも現にも御切ツ腹の折からを思ひ出しては無念の涙五臓六腑をしぼりしぞや取リわけ今宵は殿の逮夜口にもろ〱のふ浄をいふても慎に慎を重る由良助によう魚肉をつき付ケたなアいやといはれずおふといはれぬ胸のくるしさ三代相恩のお主の逮夜に咽を通した其時の心どの様に有ふと思ふ五体も一チ度に脳乱し四十四の骨々も砕る様に有たはやいヘヱヽ獄卒め魔王めと土に摺付ケ捻付ケて無念ン涙にくれけるがコリヤ平
地色:サア,ハル:サア地色/ハル
ウ:もぎ取刀ウ
色:持添夫勘色
詞:夫詞
地:ぐつと,ハル:ぐつと地/ハル
ウ:下にはウ
ウ:七顛八倒ウ
詞:それ詞
地:下知より,ウ:下知より地/ウ
ハル:朱にハル
ウ:九大夫めウ
ウ:目通へ投ウ
中:投付れば⊗起中
ウ:起立せもせずウ
ハル:髻をハル
色:引寄獅子色
詞:獅子詞
地:五臓六腑を,ハル:五臓六腑を地/ハル
フシ:しぼりしぞフシ
地:ヘヱヽ獄,ハル:ヘヱヽ獄地/ハル
ウ:魔王めとウ
上:土に上
ウ:捻付て無念ウ
スヱ:無念スヱ
中:くれけるが中
詞:コリヤ詞