所弓矢神の御恵にて一劫立たる勘平息の有中郷右衛門が蜜に見する物有と懐中ゟ一巻を取出しさら〱と押ひらき此度亡君の敵高の師直を討取んと神文を取かはし一味徒党の連判かくのごとしと読も終らず苦痛の勘平其姓名は誰々成ぞやヲヽ徒党の人数は四十五人汝が心底見届たれば其方を指加へ一味の義士四十六人是を冥途の土産にせよと懐中の矢立取出し姓名を書印勘平血判心得たりと腹十文字にかき切臓腑を掴でしつかと押サア血判仕たアヽ忝や有がたや我望達したり母人歎いて下さるな舅の最期も女房の奉公も反古にはならぬ此金一味徒党の御用金といふに母も涙ながら財布と倶に二包二人が前に指出し勘平殿の魂の入た此財布婿殿じやと思ふて敵討のお供に連てごさつて下さりませヲヽ成程尤也と郷右衛門金取納め思へば〱此金は嶋の財布の紫摩黄金仏果を得よと云ければアヽ仏果とはけがらはし死ぬ〱魂魄此土にとゞまつて敵討の御供すると云声も早四苦八苦母は涙にかきくれながらナフ勘平殿此事を娘にしらしせめて死目に逢はしてやりたいイヤ〱〱親の最期は格別勘平が死だ事必知して下さるなお主の為に売たる女房此事聞てぶ奉公せばお主にふ忠するも同然只其侭に指置れよサア思ひ置事なしと刀の切先咽にぐつと指貫きかつぱと伏て息絶たりヤアもふ婿殿
所弓矢神の御恵にて一劫立たる勘平息の有中チ郷右衛門が蜜に見する物有と懐中ゟ一チ巻ンを取出しさら〱と押シひらき此度亡君の敵高の師直を討取ラんと神文を取かはし一チ味徒党の連判ンかくのごとしと読も終らず苦痛の勘平其姓名は誰レ々成ぞやヲヽ徒党の人数は四十五人汝が心底見届たれば其方を指加へ一味の義士四十六人是を冥途の土産にせよと懐中の矢立テ取出し姓名を書キ印シ勘平血ツ判心得たりと腹十文字にかき切臓腑を掴でしつかと押シサア血ツ判仕ツたアヽ忝や有がたや我望達したり母人歎いて下さるな舅の最期も女房の奉公も反古にはならぬ此金一味徒党の御用金といふに母も涙ながら財布と倶に二包二人が前に指出し勘平殿の魂の入た此財布婿殿じやと思ふて敵討チのお供に連レてごさつて下さりませヲヽ成程尤也と郷右衛門金取納め思へば〱此金は嶋の財布の紫摩黄金仏果を得よと云ければアヽ仏果とはけがらはし死ナぬ〱魂魄此土にとゞまつて敵討の御供すると云声も早四苦八苦母は涙にかきくれながらナフ勘平殿此事を娘にしらしせめて死目に逢はしてやりたいイヤ〱〱親の最期は格別勘平が死ンだ事必知ラして下さるなお主の為に売たる女房此事聞てぶ奉公せばお主にふ忠するも同然只其侭に指置カれよサア思ひ置事なしと刀の切ツ先キ咽にぐつと指貫きかつぱと伏て息絶たりヤアもふ婿殿
地:弓矢神の,ウ:弓矢神の地/ウ
ハル:勘平ハル
ウ:息のウ
ウ:懐中ゟ一ウ
ウ:さら〱と押ウ
色:押ひらき色
詞:此度詞
地色:読も終,ウ:読も終地色/ウ
ハル:苦痛のハル
ウ:姓名はウ
色:成ぞやヲ色
詞:ヲヽ詞
地:懐中の,ハル:懐中の地/ハル
ウ:姓名をウ
色:書印色
詞:勘平詞
地:心得たりと,ハル:心得たりと地/ハル
ウ:臓腑をウ
色:しつかと色
詞:サア詞
地:いふに,ハル:いふに地/ハル
ウ:財布とウ
詞:勘平殿の詞
地:婿殿じやと,ハル:婿殿じやと地/ハル
ウ:敵ウ
フシ:ごさつてフシ
詞:ヲヽ詞
地:思へば,ウ:思へば地/ウ
ハル:紫摩黄金ハル
ウ:仏果をウ
色:云ければア色
詞:アヽ詞
ウ:勘平殿ウ
ウ:せめてウ
色:やりたい色
詞:イヤ詞
地:刀の,ハル:刀の地/ハル
フシ:かつぱとフシ
詞:ヤア詞