と引かへに娘を連ていのふといふてなれど親父殿に逢ての上と訳をいふても聞入ず今連ていなしやる所どふせうぞ勘平殿是は〱先以て舅殿の心づかひ忝いしたがこちにもちつとよい事があれ共それは追て親父殿も戻られぬに女房共は渡されまいとはなぜにハテいはゞ親也判がゝり尤夕部半金の五十両渡されたでも有ふけれどイヤこれ京大坂を俣にかけ女護嶋程奉公人を抱る一文字や渡さぬ金を渡したといふて済物かいのまだ其上に慥な事が有てや是の親仁が彼五十両といふ金を手拭にぐる〱とまいて懐に入らるゝそりやあぶない是に入て首にかけさつしやれとおれがきてゐる此一重物の嶋のきれで拵へた金財布借たればやんがて首にかけて戻られうヤア何とこなたが着て居る此嶋のきれの金財布かヲヽてやあの此嶋でや何と慥な證拠で有ふが聞よりはつと勘平が肝先にひしとこたへ傍辺に目を配り袂の財布見合せば寸分違はぬ糸入嶋なむ三宝扨は夕部鉄砲で打殺したは舅で有たかハアはつと我胸板を二つ玉で打ぬかるゝよりせつなき思ひとはしらずして女房コレこちの人そは〱せずとやる物かやらぬ物か分別して下さんせヲヽ成程ハテもふあの様に慥にいはるゝからはいきやらずば成まいかアノとつさんに逢いでもかへイヤ〱親父殿にもけさちよつと逢た
と引かへに娘を連ていのふといふてなれど親父殿に逢ての上と訳をいふても聞入レず今連レていなしやる所どふせうぞ勘平殿是は〱先ツ以ツて舅殿の心づかひ忝いしたがこちにもちつとよい事があれ共それは追ツて親父殿も戻られぬに女房共は渡されまいとはなぜにハテいはゞ親也判がゝり尤夕部半金の五十両渡されたでも有ふけれどイヤこれ京大坂を俣にかけ女護ノ嶋程奉公人を抱る一文字や渡さぬ金を渡したといふて済物かいのまだ其上に慥な事が有てや是の親仁が彼五十両といふ金を手拭にぐる〱とまいて懐に入らるゝそりやあぶない是に入て首にかけさつしやれとおれがきてゐる此一重物の嶋のきれで拵へた金財布借たればやんがて首にかけて戻られうヤア何ンとこなたが着て居る此嶋のきれの金財布かヲヽてやあの此嶋でや何と慥な證拠で有ふが聞クよりはつと勘平が肝先にひしとこたへ傍辺に目を配り袂の財布見合せば寸ン分ン違はぬ糸入嶋なむ三宝扨は夕部鉄砲で打殺したは舅で有たかハアはつと我胸板を二つ玉で打ぬかるゝよりせつなき思ひとはしらずして女房コレこちの人そは〱せずとやる物かやらぬ物か分別して下さんせヲヽ成ル程ハテもふあの様に慥にいはるゝからはいきやらずば成まいかアノとつさんに逢いでもかへイヤ〱親父殿にもけさちよつと逢た
地:聞よりは,ハル:聞よりは地/ハル
ウ:傍辺ウ
中:見合せば中
ウ:寸分ウ
ハル:なむ三宝ハル
ウ:扨は夕ウ
ウ:はつとウ
ウ:二つ玉でウ
ウ:とはウ
色:女房色
詞:コレ詞