ござるかはいござる了簡してお助なされて下さりませヱヽおまへはお若いによつてまだお子もござるまいがやんがつてお子を持て御らうじませ親仁がいひおつたは尤じやと思し召て此場を助さしやつて下さりませマア一里行ば私在所金を婿に渡してから殺されましよ申〱娘が悦ぶ顔見てから死たうござりますこれ申アヽあれ〱〱と呼はれど跡先遠く山びこの谺に哀催ふせりヲヽ悲しいこつちやはまつことこぼへヤイ老ぼれめ其金でおれが出世すりや其めぐみでうぬが躮も出世するはやい人に慈悲すりやわるうはむくはぬアヽかはゐやとぐつとつくうんと手足の七顛八倒のたくり廻るを脚にて蹴かへしヲヽいとしやいたかろけれどおれに恨はないぞや金がありやこそ殺せ金がなけりやなんのいの金が敵じやいとしぼや南無阿弥陀南無妙法蓮花経どちらへ成とうせおろと刀もぬかぬいもざしゑぐり草葉も朱に置露や年も六十四苦八苦あへなく息は絶にけりしすましたりと件の財布くらがり耳の掴よみヒヤ五十両エヽ久しぶりの御対面忝しと首に引かけ死骸を直に谷底へはね込蹴込泥まぶれはねは我身にかゝる共しらず立たる後より逸散にくる手負猪是はならぬと
ござるかはいござる了簡してお助ケなされて下さりませヱヽおまへはお若いによつてまだお子もござるまいがやんがつてお子を持ツて御らうじませ親仁がいひおつたは尤じやと思し召て此場を助ケさしやつて下さりませマア一チ里行ば私シ在所金を婿に渡してから殺されましよ申シ〱娘が悦ぶ顔見てから死たうござりますこれ申アヽあれ〱〱と呼はれど跡先キ遠く山びこの谺に哀催ふせりヲヽ悲しいこつちやはまつことこぼへヤイ老ぼれめ其金でおれが出世すりや其めぐみでうぬが躮も出ツ世するはやい人に慈悲すりやわるうはむくはぬアヽかはゐやとぐつとつくうんと手足の七顛八倒のたくり廻るを脚にて蹴かへしヲヽいとしやいたかろけれどおれに恨はないぞや金がありやこそ殺せ金がなけりやなんのいの金が敵じやいとしぼや南無阿弥陀南無妙法蓮花経どちらへ成リとうせおろと刀もぬかぬいもざしゑぐり草葉も朱に置ク露や年シも六十四苦八苦あへなく息は絶にけりしすましたりと件の財布くらがり耳の掴よみヒヤ五十両エヽ久しぶりの御対面忝しと首に引かけ死骸を直クに谷底へはね込ミ蹴込泥まぶれはねは我身にかゝる共しらず立ツたる後より逸散にくる手負猪是はならぬと
地色:呼はれど,ハル:呼はれど地色/ハル
フシ:谺に,ノル:谺にフシ/ノル
中:哀中
ハル:催ふせりハル
詞:ヲヽ詞
地色:ぐつと,ウ:ぐつと地色/ウ
ウ:うんとウ
ハル:七顛八倒ハル
ウ:のたくり廻るウ
色:蹴かへし色
詞:ヲヽ詞
地:どちらへ成と地
ウ:刀もウ
ウ:草葉もウ
ウ:年もウ
フシ:あへなくフシ
地色:しすましたり,ウ:しすましたり地色/ウ
ハル:くらがりハル
色:掴よみ色
詞:ヒヤ詞
地色:忝しと,ウ:忝しと地色/ウ
ハル:谷底へハル
ウ:蹴込ウ
ウ:はねはウ
色:後より色
ウ:逸散にウ
ハル:手負猪ハル