殿殿
殿殿
うしろからヲヽイ〱親仁殿よい道連と呼はつておの九大夫がせがれ定九郎身の置浪や此街道かいだうの夜ばたらきだんびら物を落し指さつきにから呼声が貴様のみゝへははいらぬか此ぶつさうな街道をよい年をして太膽だいたん〱連にならふと向ふへ廻りきよろ付目玉ぞつとせしがさすがは老人是は〱お若いに似ぬ御奇特きどくな私もよい年をして一旅はいやなれどサアいづくの浦でも金程大切な物はない去年ねんぐつま詰り此中から一家中の在所へ無心にいたれば是もびたひらなか才覚さいかくならずらちの明ぬ所に長居はならずすご〱一戻る道と半分いはさずヤイやかましい有様が年おさまらぬ其相談さうたんを聞にはこぬコレ親仁殿おれがいふ事とくと聞しやれやマアかうじやはこなたのふところに金なら四五十両のかさ嶋の財布さいふに有のをとつくりと見付てきたのじや借て下され男か手を合す定めて貴様も何つまらぬ事か子が難義なんきに及ぶによつてといふ様な有格うかくな事じやあろけれどおれが見込だらハテしよことがないとあきらめかして下され〱とふところへ手を指入引ずり出す嶋の財布さいふアヽ申それはそれはとは是程爰に有物とひつたくる手にすがイヱ〱此財布は跡の在所で草鞋わらちかふ端銭はしたを出しましたが跡に残るは昼食らうじき握飯にぎりめし霍乱はくらんせんやうにと娘がくれた和中散わちうさん反魂丹はんごんたんでござりますおゆるし

色:後から

詞:ヲヽイ

地:よい,ウ:よい地/ウ

ハル:呼はつてハル

ウ:身の

ウ:此

フシ:だんびら物をフシ

詞:さつきにから

地色:連に,ウ:連に地色/ウ

ウ:きよろ付

ハル:ぞつとハル

色:老人

詞:是は

地:半分,ハル:半分地/ハル

色:やかましい

詞:有様が

地色:〱,ウ:〱地色/ウ

ハル:引ずり出すハル

色:アヽ

詞:それはとは

地:ひつたくる,ハル:ひつたくる地/ハル

色:縋り付

詞:イヱ