無念の涙はら〱〱判官の末期の一句五臓六腑にしみ渡り扨こそ末世に大星が忠臣義心の名を上し根ざしは斯としられけり薬師寺は突つ立上り判官がくたばるからは早々屋敷を明渡せイヤさはいはれな薬師寺いはゞ一国一城の主ヤ旁葬々の義式取賄ひ心しづかに立退れよ此石堂は検使の役目切腹を見届たれば此旨を言上せんナニ由良助殿御愁傷察し入用事あらば承はらん必心おかれなと並居る諸士に目礼し悠々として立帰る此薬師寺も死骸かた付る其間奥の間で休息せう家来参れと呼出し家中共からがくた道具門前へほうり出せ判官が所持の道具俄浪人にまげられなと館の四方をねめ廻し一間の内へ入にける御臺はわつと声を上扨も〱武士の身の上程悲しい物の有べきか今夫の御最期に云たい事は山々なれと未練なと御上使のさげしみが恥しさに今迄こらへて居たわいのいとをしの有様やと亡骸に抱付前後もわかず泣給ふ力弥参れ御臺所もろ共亡君の御骸を御菩提所光明寺へ早々送り奉れ由良助も跡より追付葬々の義式取行はん堀矢間小寺間其外の一家中道のけいご致されよと詞の下より御乗物手舁にかきすへ戸をひらき皆立寄て御死骸涙と倶にのせ奉りしづ〱と
無念の涙はら〱〱判官の末期の一ツ句五臓六腑にしみ渡り扨こそ末世に大星が忠臣義心ンの名を上し根ざしは斯としられけり薬師寺は突つ立上り判官がくたばるからは早々屋敷を明ケ渡せイヤさはいはれな薬師寺いはゞ一ツ国一城の主シヤ旁葬々の義式取賄ひ心しづかに立退れよ此石堂は検使の役目切ツ腹を見届たれば此旨を言ン上せんナニ由良ノ助殿御愁傷察し入ル用事あらば承はらん必心おかれなと並居る諸士に目礼し悠々として立帰る此薬師寺も死骸かた付ケる其間奥の間で休息せう家来参れと呼出し家中共からがくた道具門前ンへほうり出せ判官が所持の道具俄浪人にまげられなと館の四方をねめ廻し一ト間の内へ入にける御臺はわつと声を上扨も〱武士の身の上程悲しい物の有べきか今夫の御最期に云たい事は山々なれと未練なと御上使のさげしみが恥しさに今迄こらへて居たわいのいとをしの有様やと亡骸に抱付キ前ン後もわかず泣給ふ力弥参れ御臺所もろ共亡君の御ン骸を御菩提所光明寺へ早々送クり奉れ由良ノ助も跡より追ツ付キ葬々の義式取行はん堀矢間小寺間其外の一ツ家中道のけいご致されよと詞の下より御乗物手舁にかきすへ戸をひらき皆立寄て御死骸涙と倶にのせ奉りしづ〱と
ウ:はらウ
ウ:判官のウ
ウ:五臓ウ
ハル:扨こそハル
上:忠臣上
フシ:根ざしは,中:根ざしはフシ/中
ハル:しられけりハル
地:薬師寺は,ハル:薬師寺は地/ハル
色:突つ立上り色
詞:判官が詞
地色:用事,中:用事地色/中
ウ:承はらんウ
ハル:心ハル
ウ:並居るウ
フシ:悠々とフシ
詞:此詞
地:家来,ハル:家来地/ハル
色:呼色
詞:家中共か詞
地:館の,ハル:館の地/ハル
フシ:一間のフシ
地:御臺は,上:御臺は地/上
ウ:扨もウ
ウ:悲しいウ
ウ:今ウ
ウ:未練なとウ
中:恥しさに中
ウ:今迄ウ
ハル:居たわいのハル
上:いとをしの上
ウ:亡骸にウ
キン:抱付キン
フシ:前後も,中:前後もフシ/中
ハル:わかずハル
詞:力弥詞
地:詞の,ハル:詞の地/ハル
ウ:手舁にウ
ウ:皆ウ
フシ:涙とフシ
中:のせ,キン:のせ中/キン