官高定是も家来を残置乗物道に立させ譜代の侍早の勘平朽葉小紋の新袴ざは〱ざはつく御門前塩冶判官高定登城成とおとなひける門番罷出先程桃井様御登城遊ばされ御尋只今又師直様御越にて御尋早御入と相述るナニ勘平最早皆々御入とや遅なはりし残念と勘平一人御供にて御前へこそは急ぎ行奥の御殿は御馳走の連謡の声播磨がた高砂の浦に着にけり〱うたふ声々門外へ風が持くる柳かげ其柳より風俗はまけぬ所体の十八九松の緑の細眉もかたい屋敷に物馴しきどく帽子の後帯供の奴が挑燈は塩冶が家の紋所御門前に立休らひコレ奴殿やがてもふ夜も明るこなた衆は門内へは叶はぬ爰からいんで休んでやと詞に従ひナイ〱と供の下部は帰りける内を覗いて勘平殿は何してぞどふぞ逢たい用が有と見廻す折から後かげちらと見付おかるじやないか勘平様逢たかつたにようこそ〱ムヽ合点の行ぬ夜中といひ供をも連ず只一人さいなあ爰迄送りし供の奴は先へ帰したわし独残りしは奥様からのお使どふぞ勘平に逢て此文箱判官様のお手に渡しお慮外ながら此返哥をお前のお手から直に師直様へお渡しなされ下さりませと伝へよしかしお取込の中間違ふまい物でなしマア今宵はよしにせうとのお詞わたしはお前に逢たい望何の此哥の一首や二首お届なさるゝ程の間のない事は有ま
官高定是も家来を残置キ乗物道に立させ譜代の侍イ早の勘平朽葉小紋の新袴ざは〱ざはつく御門ン前塩冶判官高定登城成リとおとなひける門ン番罷出先キ程桃ノ井様御登城遊ばされ御尋只今又師直様御越シにて御尋早御入と相述るナニ勘平最早皆々御入とや遅なはりし残念ンと勘平一人御供にて御前へこそは急ぎ行奥の御殿は御馳走の連謡の声播磨がた高砂の浦に着にけり〱うたふ声々門外へ風が持テくる柳かげ其柳より風俗はまけぬ所体の十八九松の緑の細眉もかたい屋敷に物馴しきどく帽子の後帯供の奴が挑燈は塩冶が家の紋所御門ン前に立休らひコレ奴殿やがてもふ夜も明ケるこなた衆は門内へは叶はぬ爰からいんで休んでやと詞に従ひナイ〱と供のモ下部は帰りける内を覗いて勘平殿は何してぞどふぞ逢たい用が有ルと見廻す折から後かげちらと見付ケおかるじやないか勘平様ン逢たかつたにようこそ〱ムヽ合点の行ぬ夜中といひ供をも連ず只一人さいなあ爰迄送りし供の奴は先キへ帰したわし独残りしは奥様からのお使イどふぞ勘平に逢て此文箱判官様のお手に渡しお慮外ながら此返ン哥をお前のお手から直クに師直様へお渡しなされ下さりませと伝へよしかしお取リ込の中間違ふまい物でなしマア今宵はよしにせうとのお詞わたしはお前に逢たい望何ンの此哥の一首や二首お届ケなさるゝ程の間のない事は有ルま
ウ:是もウ
ハル:乗物ハル
中:立させ中
ウ:譜代のウ
ウ:小紋のウ
ハル:新袴ハル
ウ:ざは〱ウ
詞:塩冶詞
地色:遅なはりし,ウ:遅なはりし地色/ウ
ウ:勘平ウ
ハル:御供にてハル
フシ:御前へこそはフシ
地:奥の,ハル:奥の地/ハル
ウ:連謡のウ
色:磨がた色
謡:高砂の謡
地:うたふ,ハル:うたふ地/ハル
中:門外へ中
ハルフシ:風がハルフシ
色:柳色
ウ:其ウ
ハル:まけぬハル
小ヲクリ:松の小ヲクリ
ウ:かたいウ
ハル:物馴しハル
ウ:供のウ
フシ:塩冶がフシ
地:御門前に,ハル:御門前に地/ハル
色:立色
詞:コレ詞
地:詞に,ハル:詞に地/ハル
色:ナイ〱色
フシ:供のフシ
地:内を,ウ:内を地/ウ
ハル:勘平殿はハル
ウ:どふぞウ
中:見廻す中
ハル:後ハル
ウ:ちらとウ
詞:おかるじや詞
地色:わたしは,ウ:わたしは地色/ウ
ハル:何のハル
ウ:お届ウ