西宿姿退
西宿姿退
子の別れを悲しんで音をとめたよな人ならぬ身も夫程に子故に物を思ふかと打しほるれば義経公ヲヽ我迚も生類しやうるい恩愛おんあい節義せつぎ身にせまる一日の孝もなき父義朝を長田おさだれ日かげくらまに成長ひとゝなりせめては兄の頼朝にと身を西海の浮沈うきしづみ忠勤ちうきんあたなる御憎しみ親共思ふ兄親に見捨られし義経が名をゆづつたる源九郎は前世のごうも業そもいつの世の宿酬しゆくしうにてかゝる業因こうゐん也けるぞと身につまさるゝ御涙に静はわつと泣出せば目にこそ見へね庭のおも我身の上と大将の御身の上を一口には勿躰もつたい涙に源九郎たもち兼たる大声にわつとさけべば我わが姿をつゝむがすみはれてかたちあらはせり義経御座を立給ひ手づから鼓を取てヤイ源九郎静を預り長々の介抱かいはう詞にはのべがたし禁裏きんりよりたまはり大切の物なれ共是を汝に得さすると指出し給へば何其鼓を下されんとやハア〱〱有がたや忝やこがれしたふた親鼓御辞退じたい申さず頭戴てうだいせんぢうふかき御おんのお礼今より君のかげ身にそひ御身のあやうき其時は一方をふせき奉らん返す〱も嬉しやなヲヽ夫よそれ身の上に取まぎれ申おこたつたり一山の悪僧ばら今夜此やかた夜討にせんとくはだてたり押さする迄もなし我転変てんべん通力つうりきにて衆徒を残らずたばかつて此館へ引入〱真向まつかう割車切又一時にかゝつし時蜘手くもでかくなは十文字あるいは右げさ左げさ上をはらへばしづんて受すそはらはゞひらりと飛けいしやう飛術ひじゆつは得たりや得たり御手に入ほろぼすべし必ぬからせ

地色:人ならぬ,中:人ならぬ地色/中

ウ:子

ウキン:打しほるればウキン

中:義経公

詞:ヲヽ

地:一日の,ハル:一日の地/ハル

中:なき

ハル:義朝をハル

上:日かげ

中:成長

ウ:せめては

ハル:頼朝にとハル

ウ:身を

ウ:忠勤

ウ:親共

ウ:名を

ウ:前世の

上:そも

ウ:宿酬にて

ウ:かゝる

ウ:身に

ウ:静は

中:泣出せば

ウ:目に

ウ:我

ハル:大将のハル

ウ:御身の

ウ:勿躰涙

ウ:たもち

上:わつと

中:我と

ウ:姿を

ハル:春霞ハル

ウフシ:形をウフシ

地色:義経,ウ:義経地色/ウ

ハル:手づからハル

中:上て

色:源九郎

詞:静を

地色:是を,ウ:是を地色/ウ

ハル:指出しハル

詞:何

地:有がたや,ハル:有がたや,ウ:有がたや地/ハル/ウ

ウ:こがれ

ウ:御辞退

中:頭戴

ウ:重々

ウ:今より

ウ:御身の

ハル:一方をハル

色:奉らん

詞:返す〱も嬉

○:ヲヽ,乱序:ヲヽ○/乱序

合:〱真

ノル:真向ノル

合:十文字

合:飛