廿姿便
と見た故油断ゆだんして一ぱいくふて帰りしはわざはひも三年と悪性根しやうねの年の明時生れ諸勝負しよしやうぶたましゐうばはれけふもあなたを廿両かたりたる物の内にうや〱敷高位の絵姿ゑすがた弥助が顔に生うつし合点がいかぬと母人へかねの無心をおとりに入こみしのんで聞ば惟盛卿御身にせま難義なんぎの段々此度性根あらためずばいつ親人の御機嫌きけんあづか時節じせつも有まいと打てかへたる悪事のうら惟盛様の首は有ても内侍若君のかはりに立る人もなく途方とほうにくれし折からに女房小せんがせがれを連親御の勘当かんどうしうへ忠義何うろたへる事が有わしと善太をコレかうと手を廻すれば躮めもかゝ様と一所にとともに廻してしばなはかけても〱手がはづれむすんだ縄もしやらほどけいがんだおれがすぐな子を持たは何因果ゐんぐはじやと思ふては泣しめては泣うしろ手にした其時の心は鬼でも蛇心じやしんでもこたへ兼たるの涙可愛かはいや不便びんや女房もわつと一其時に血をはきましたと語るにぞりきみ返つて弥左衛門聞へぬぞよ権太郎孫めに縄をかける時血をはく程の悲しさをつねに持てはなぜくれぬ廣い世界によめ孫といふのもあいつ一子供が大ぜひ遊んで居れば親の顔を目印ににがみのはしつた子が有かと尋て見てはコレ〱子供衆権太が息子むすこは居ませぬかととへど子供はどの権太家名いへな

地色:禍も,ハル:禍も地色/ハル

ウ:悪い

中:明

ウ:生れ付て

ハル:奪はれハル

ウ:けふも

ウ:あなたを

中:廿両

詞:衒

地:此度,ウ:此度地/ウ

ウ:親人の御機嫌に

ウ:預る

ウ:惟盛様の

ウ:内侍

ウ:途方に

中:折からに

詞:女房

地色:手を,ハル:手を地色/ハル

上:嚊様と

ウ:俱に

ウ:かけても

ウ:結んだ

ウ:いがんだ

ウ:持たは

ウ:思ふては

ウ:しめては

ウ:後手に

ウ:心は

ウ:蛇心でも

ウ:こたへ

キン:可愛やキン

ウ:わつと

ウ:其

ウ:吐ました

ウ:りきみ

色:弥左衛門

詞:聞へぬぞよ

地色:廣い,ウ:廣い地色/ウ

ハル:孫ハル

色:あいつ