便殿
させコリヤ権太弥左衛門一のやつらしばらなんぢに預るお氣遣ひなされますな貧乏びんぼうゆるぎもさせませぬハテ扨健氣けなげな男めとほめそやして梶原平蔵なは〽ひつ立帰るアヽこれ〱其次手に褒美ほうびかね忘れまいぞと見送透間すきま油断ゆだん見合せ弥左衛門にくさも憎しとひんだかへぐつと突込つゝこむうらみやいばうんとのつけにそり返る見るに親子はハツはつとにくいながらも悲しさの母は思はずかけ寄て天命しれやかうつみ思ひしれやと云ながら先物は涙にて伏沈ふししづみてぞ泣居たる弥左衛門はがみをなし泣な女房何ほへる不便びんなの可愛かはいのといふてこんなやつを生て置世界せかいの人の大きな難義門端かどばたふますなと云付たに内へ引入大事の〱惟盛様をころし内侍様や若君をよふ鎌倉へ渡したな腹が立て〱涙がこぼれて胸かさくる三千世界に子を殺す親といふのはおれ計あつぱれ手がらな因果ゐんくは者によふしおつたと抜身のつかくだくる計にぎつめゑぐりかけるも心は涙いがみにいがみし権太郎刃物はものおさへてコレ親父殿なんじやこなたの力で惟盛を助る事はかなはぬ〱コリヤいふなけふ幸と別れ道のかたはら手負ておひの死人よい身がはりと首討もどり此中に隠しコリヤ是を見おれと鮓桶取て打明ればぐはらりと出たる三貫目ヒヤアこりや

詞:コリヤ

地色:ハテ,ウ:ハテ地色/ウ

ハル:誉そやしてハル

ヲクリ:縄ヲクリ

フシ:ひつ立立フシ

詞:アヽ

地色:見送る,ウ:見送る地色/ウ

ハル:油断ハル

ウ:憎さも

ウ:うんと

色:反返る

ウ:見るに

上:ハツ

ウ:憎いながらも

ウ:母は

ウ:天命

ウ:思ひしれや

ウ:先立

スエテ:伏沈みてぞスエテ

中:泣居たる

地:弥左衛門,ハル:弥左衛門地/ハル

色:はがみを

詞:泣な

地:三千世界に,ハル:三千世界に地/ハル

ウ:親と

ウ:遖

ウ:よふ

ウ:砕る計に

ウ:ゑぐり

ウ:いがみに

ウ:権太郎

色:おさへて

詞:コレ

地:コリヤ,ウ:コリヤ地/ウ

ハル:打明ればハル

ウ:ぐはらりと

詞:ヒヤア