殿殿
りしかど文の落ちる恐れ有わけて此家の弥左衛門父重盛への恩報おんほうじと我を助て是迄に重々ぢう〱あつき夫婦が情何がな一礼返礼と思ふ折から娘の恋路つれなくいはゞあやまちあらんかへつて恩があたなりとかりの契りはむすべ共女は嫉妬しつとに大事ももらすと弥左衛門にも口留して我身の上を明さずあだな枕も親共へ義理に是迄ちぎりしと語り給へば伏たる娘こたへ兼しか声上てわつと計に泣出すコハ何ゆへとおどろく内侍若君引連のかんとし給へばノウこれお待下されと涙とともにお里はかけ寄々是へと内侍若君上座へなをし私はお里と申て此家の娘いたづらにくいやつと思し召れんわけ過つる春の比色めづらしい草中へに有よふな殿御のお出惟盛様とは露しらず女のあさい心から可愛かはいらしいいとしらしいと思ひそめたが恋のもと父も聞へず母様も夢にもしらして下さつたらたとへこがれて死れば迚雲井にちかき御方へ鮓やの娘がほれられうか一しやう連添つれそふ殿御じやと思ひ込で居る物を二世のかためは叶はぬ親への義理にちぎつたとは情ないお情に預りましたとどうど伏身をふるはして泣ければ惟盛卿は氣のどくの内侍も道理のわび涙かはく間もなき折からに村の役人かけ来り戸をたゝいてコレ〱爰へ梶原様が見へまする内掃除さうぢしておかれいと云捨て立帰る人々

地:仇な,ウ:仇な地/ウ

ハル:契りしハル

ウ:語り給へば

上:こたへ

色:泣出す

ウ:何ゆへ

ハル:し給へばハル

詞:ノウ

地色:涙と,ハル:涙と地色/ハル

ウ:先

色:直し

詞:私は

地:過つる,ウ:過つる地/ウ

ハル:草中へハル

ウ:絵に

ウ:惟盛様とは

ウ:可愛らしい

ウ:いとしらしい

ウ:思ひ初たが

中:恋の

詞:父も

地色:夢にも,ハル:夢にも地色/ハル

サハリ:譬,ウ:譬サハリ/ウ

上:雲井に,ウ:雲井に上/ウ

ウ:惚られうか

中:一生連,ウ:一生連中/ウ

ウ:思ひ込で

ウ:二世の

ウ:親への

上:情ない

ウ:預りました

キン:どうど,クル:どうどキン/クル

フシ:身を,中:身を,ノル:身をフシ/中/ノル

ハル:ふるはしてハル

中:泣ければ

地:惟盛卿は,ウ:惟盛卿は地/ウ

ウ:内侍も

フシ:かはくフシ

地色:村の,ウ:村の地色/ウ

ハル:戸をハル

色:たゝいて

詞:コレ

地色:内,ハル:内地色/ハル

ウ:人々