殿
殿
てはござりませぬお暇乞いとまごひに参りましたソリヤ何で私はとをい所へ参ります程に親父様もおまへにも随分ずいぶんおまめで〱としほれかければ母はおどろき遠い所とはそりやとこへどふしわけで何しに行と根問ねどひは親のだまされこぐちサアしてやつたと目をしばたゝき親の物は子の物とお前へこそ無心申せついに人の物はしかたしいがんだ事も致しませぬに不かうばち夜前わたしは大盗人に合ましたヒヤア其中に代官所へ上る年貢銀ねんぐかね三貫目といふ物盗取云訳いひわけもなく仕様もなくお仕置に合ふよりはと覚悟かくご極めておりまする情ないめに合ましたとかます袖をば顔にあてしやくり上ても出ぬ涙はな邪魔じやまして目のふちへとゞかぬ舌ぞうらめしきあまい中にもわけて母親まことと思ひともに目をすり鬼神横道わうだうなしと年の銀を盗れ死ふと覚悟かくごはまだでかした災難さいなんにあふも親のばちよふ思ひしれよアイ〱思ひしつてはおりますけれどどうで死ねば成ますまいコリヤやいあい〱つねの儕性根しやうね故是もかたりかしらね共しやうぶ分にと思ふた銀親父殿に隠してやろ是でほつとり根性こんじやうなをせとそろ〱戸棚とたなへ子のかげで親も盗をする母のあまいぢやうさへ明兼るついがん首でこち〱がよござりまするとしなれたるおのが手わざおしゆかう親は我子が可愛かわいさに地獄ぢごくたねの三貫目跡をくろめて持て出何

地色:随分,ハル:随分地色/ハル

色:母は

詞:遠い

地色:どふした,ハル:どふした地色/ハル

ウ:根問は

ウ:だまされ

ウ:してやつたと,ウ:してやつたとウ/ウ

フシ:目をフシ

詞:親の

地色:情ない,ハル:情ない地色/ハル

ウ:かます

上:しやくり上ても出

ウ:鼻が

ウ:とゞかぬ

フシ:舌ぞフシ

地:あまい,ハル:あまい地/ハル

ウ:実と

中:目を

詞:鬼神に

地:そろ〱,ウ:そろ〱地/ウ

ハル:子のハル

ウ:親も

ウ:する

ウ:あまい

詞:つい

地色:ござりまする,ウ:ござりまする地色/ウ

ハル:教るハル

ウ:親は

ウ:跡を

ウ:何ぞ