駿
片時へんしも早く帝の供奉ぐぶを頼む〱とよろぼひ立ばヲヽ我は是より九刕の尾形方へおもむく也帝の御身は義経がいづく迄も供奉ぐぶせんと御手を取て出給へば亀井駿河武蔵坊御跡に引そふたり知盛完尓くはんじと打ゑみてきのふのあたはけふの味方あら心安や嬉しやな是ぞ此世の暇乞いとまごひとふり返つて竜顔りやうがんを見奉るも目に涙今はの名残に天皇も見返り給ふ別れの門出とゞまるこなたはめいどの出船三途の海の瀬踏せぶみせんいかりを取てかうべにかづきさらば〱も声計渦巻うづまく波に飛入てあへなくきへたる忠臣義臣其亡骸なきがらは大物の千尋ちひろそこ朽果くちはてて名は引しほにゆられ流〱て跡白波とぞ成にける第三三芳野みよしのは丹後武蔵むさしに大和やわけて名高き金峯山きんぶせん蔵王弥勒ざわうみろくの御宝物ほうもつ開帳かいちやう迚野も山もにぎはふ道のかたはら茶店ちやみせかまへて出花くむ青前垂あをまへだれの入ばなは女房ざかり器量きりやうよし五つか六つの男の子そばに付そひかゝ様といふではなが香もさめにけれかれ残る身はいとゞ猶枝おりや若葉の内侍ないし若君は主馬しゆめの小金吾武里きんごたけさとがさがのが遁れて惟盛これもりの若や高野かうやと心ざし旅の用意ようゐの小風呂敷ふろしきせな忍海おしうみ吉野なる下市村につきけるが若君六代疳疾かんしつになやみ給へば幸茶店ちやみせしばら床几せうぎへおやすみない

地色:頼む,ウ:頼む地色/ウ

ハル:〱ハル

フシ:よろぼひフシ

地:ヲヽ,ウ:ヲヽ地/ウ

ウ:帝の

ハル:御手をハル

ウ:亀井

フシ:御跡にフシ

地色:知盛,ハル:知盛地色/ハル

中:打笑て

ウ:きのふの

ハル:味方ハル

ウ:あら

ウ:是ぞ

ウ:見

ウ:今はの

ウ:見返り給ふ

中:別れの

ハル:門出ハル

中:とゞまる

ウ:めいどの

コハリ:三途のコハリ

ウ:碇を

ウ:さらば

ハルフシ:あへなくハルフシ

中:消たる

ハル:忠臣ハル

上:其

ウ:千尋の

ウ:名は

ウ:跡

歌:三芳野は,キン:三芳野は,ハル:三芳野は歌/キン/ハル

ウ:丹後

ウ:大和路や

中:わけて

ハル:名高き,ナヲス:名高きハル/ナヲス

ウフシ:金峯山ウフシ

地:蔵王,ウ:蔵王地/ウ

ハル:御宝物ハル

ウ:御開帳迚

中:山も

ウヲクリ:賑ふウヲクリ

ハル:傍にハル

長地:茶店長地

ウ:出花

ウ:入ばなは

中:器量よし

ウ:五つか

ハル:男の子ハル

ウ:傍に

:付添

フシ:いふでフシ

地:かれ,ウキン:かれ地/ウキン

ハルフシ:身はハルフシ

中:若葉の内侍

ハル:若君はハル

ウ:主馬の

中:武里が

ウ:さがを

ハル:惟盛のハル

スヱ:若やスヱ

キン:旅の,ヲクリ:旅のキン/ヲクリ

フシ:下市フシ

地色:若君,ウ:若君地色/ウ

ハル:幸のハル

ウ:暫く

中:お休と

ウ:内