云て給はつたと引よせ〱抱しめ火に入水に溺るゝも先の世の約束なれば未来の誓まし〱て天てらす太神へ御暇乞と東に向はせまいらすれば美しき御手を合せ伏拝給ふ御有様見奉れば氣も消々ヲヽよふお暇乞なされたのふ仏の御国はこなたぞとゆひ指方に向はせ給ひ今ぞしるみもすそ川の流には波の底にも都有とはと詠じ給へばヲヽおでかしなされたよふお詠遊ばした其昔月花の御遊の折からかやうに哥を詠給はゞ父帝は申に及ばず祖父清盛公二位の尼君取わけて母門院様なんぼう悦び給はんに今はのきはに是がまあ云にかひなき御製やとかきくどき〱涙のかぎり声限り歎くどくぞ道理なる局は涙の隙よりも御髪かき上かき撫て今は早極楽への御門出を急がんと帝をしつかとだき上て磯打波にもすそをひたし海の面を見渡し〱いかに八大竜王がうがの鱗安徳帝の御幸なるぞや守護し給へとうづまく波に飛入んとする所にいつの間にかは九郎義経かけよつて抱留給へばのふ悲しや見ゆるして死せてたべとふり返つてヤアこなたは声立なと帝を小脇にひんだかへ局の小腕ぐつと捻上無理無躰に引立〱一間の〽内に入給ふかゝる所へ知盛は大わらはに戦ひなし鎧に立矢はみのけのごとく威も朱に染なして我家の内に立帰れば跡をしたふて武蔵坊表の方に立聞共しらず
云て給はつたと引よせ〱抱しめ火に入水に溺るゝも先キの世の約束なれば未来の誓まし〱て天てらす太神へ御暇乞と東に向はせまいらすれば美しき御手を合せ伏拝給ふ御有リ様見奉れば氣も消々ヲヽよふお暇乞なされたのふ仏の御国はこなたぞとゆひ指方に向はせ給ひ今ぞしるみもすそ川の流レには波の底にも都有とはと詠じ給へばヲヽおでかしなされたよふお詠遊ばした其昔月花の御遊の折からかやうに哥を詠給はゞ父帝は申に及ばず祖父清盛公二位の尼君取わけて母門院様なんぼう悦び給はんに今はのきはに是がまあ云にかひなき御製やとかきくどき〱涙のかぎり声限り歎キくどくぞ道理なる局は涙の隙よりも御髪かき上かき撫て今は早極楽への御門出を急がんと帝をしつかとだき上て磯打ツ波にもすそをひたし海の面テを見渡し〱いかに八大竜王がうがの鱗安徳帝の御幸なるぞや守護し給へとうづまく波に飛入ラんとする所にいつの間にかは九郎義経かけよつて抱留給へばのふ悲しや見ゆるして死せてたべとふり返つてヤアこなたは声立なと帝を小脇にひんだかへ局の小腕ぐつと捻上無理無躰に引立〱一ト間の〽内に入給ふかゝる所へ知盛は大わらはに戦ひなし鎧に立ツ矢はみのけのごとく威も朱に染なして我カ家の内に立帰れば跡をしたふて武蔵坊表テの方に立聞ク共しらず
ウ:引よせウ
キン:〱キン
中:抱しめ中
ウ:火にウ
ウ:先のウ
ハル:約束なればハル
ウ:未来のウ
色:まし〱て色
詞:天てらす太神へ詞
地色:東に,ハル:東に地色/ハル
中:まいらすれば中
平家:美しき,ウ:美しき平家/ウ
ウ:伏拝給ふウ
ハル:御有様ハル
上:見,ウ:見上/ウ
クル:消クル
詞:ヲ,ナヲス:ヲ詞/ナヲス
平家:ゆひ,中:ゆひ平家/中
上:今ぞ上
入:流には入
ウ:波のウ
ウ:都ウ
ナヲス:詠じ,フシ:詠じナヲス/フシ
詞:ヲヽ詞
地色:今はの,ハル:今はの地色/ハル
上:云に上
ウ:かきくどきウ
ウ:〱ウ
ウ:声ウ
フシ:歎くどくぞ道理なるフシ
ノル:くどくぞノル
地色:局は,ウ:局は地色/ウ
ハル:御髪ハル
中:今は中
平家:極楽への,ウ:極楽への平家/ウ
ウ:帝をウ
ハル:しつかとハル
中:打中
ハル:海のハル
中:〱中
ナヲス:いかに,詞:いかに,ノル:いかにナヲス/詞/ノル
地色:守護,ウ:守護地色/ウ
ハル:飛ハル
色:所に色
ウ:いつのウ
ウ:かけよつてウ
ハル:のふハル
ウ:見ウ
ウ:ふり返つてウ
色:ヤア色
ウ:声ウ
ハル:局のハル
ウ:無理ウ
ヲクリ:一間のヲクリ
ハルフシ:かゝるハルフシ
地色:知盛は,ハル:知盛は地色/ハル
中:戦ひ中
ウ:鎧にウ
ウ:威もウ
ハル:染なしてハル
ウ:我家のウ
中:立帰れば中
ウ:跡をウ
ハル:立聞ハル
ウ:しらずウ