井駿河立隔押隔つれば忠信も我君に暇乞互に無事をと黙き合歎静を押退〱心づよくも主従四人山崎越に尼が崎大物さして出給ふコレなふ暫し待てたべと行をせいしとゞむれば御行方を打守り御顔ばせを見る様で恋しいわいのと地にひれ伏正躰もなく泣ければヲヽ道理〱去ながら別れも暫し此鼓君の筺と有からは君と思ふて肌身に添うさをはらさせ給へやと下し給はる御着長ゆらりと肩にひつかたげなだめ〱て手を取ば静はなく〱形見の鼓肌身に添盡ぬ名残にむせかへり涙と俱に道筋をたどり〱て〽行空の夜毎日ごとの入船に浜辺賑ふ尼が崎大物の浦に隠れなき渡海や銀平海をかゝへて船商売店は碇帆木綿上り下りの積荷物はこぶ船頭水主の者人絶のなき船問屋世をゆるかせに暮しける夫は積荷の問屋廻り内をまかなふ女房おりう宿かり客の料理拵所から迚網の物塩がらな塩梅もあまふ育し一人娘お安がついの転寝に風ひかさじと裾に物奥の襖をぐはらりと明風呂敷わいがけ旅の僧によき〱と立出れば是はまあお客僧様今御膳を出しますにどこへお出なさるゝぞされば〱西国への出日和待て連共迄もほつと退屈只居よよりは西町へいて買物をしてきませう是は〱残り多い外のお客へは鳥貝
井駿河立チ隔押シ隔つれば忠信も我君に暇乞互イに無事をと黙き合イ歎ク静を押シ退〱心づよくも主従四人山崎越に尼が崎大物さして出給ふコレなふ暫し待ツてたべと行をせいしとゞむれば御行方を打守り御顔ばせを見る様で恋しいわいのと地にひれ伏シ正躰もなく泣ければヲヽ道理〱去ながら別れも暫し此鼓君の筺と有からは君と思ふて肌身に添うさをはらさせ給へやと下し給はる御着長ゆらりと肩にひつかたげなだめ〱て手を取レば静はなく〱形見の鼓肌身に添盡ぬ名残にむせかへり涙と俱に道筋をたどり〱て〽行空の夜毎日ごとの入船に浜辺賑ふ尼が崎大物の浦に隠れなき渡海や銀平海をかゝへて船商売店は碇帆木綿上り下りの積荷物はこぶ船頭水主の者人絶のなき船問屋世をゆるかせに暮しける夫トは積荷の問屋廻り内をまかなふ女房おりう宿かり客の料理拵所から迚網の物塩がらな塩梅もあまふ育し一ト人リ娘お安がついの転寝に風ひかさじと裾に物奥の襖をぐはらりと明ケ風呂敷わいがけ旅の僧によき〱と立出れば是はまあお客僧様今御膳を出しますにどこへお出なさるゝぞされば〱西国への出日和待ツて連レ共迄もほつと退屈只居よよりは西町へいて買物をしてきませう是は〱残り多い外のお客へは鳥貝
中:我,ウフシ:我中/ウフシ
ヒロイ:互にヒロイ
ウ:黙き合ウ
ハル:歎ハル
中:〱中
ウ:心づよくもウ
ハル:山崎ハル
フシ:大物フシ
地色:コレ,上:コレ地色/上
ウ:行をウ
中:とゞむれば中
ハル:御行方をハル
ウ:打守りウ
ウ:御顔ばせウ
上:恋しいわいの上
スヱ:正躰もスヱ
詞:ヲヽ詞
地:別れも,ウ:別れも地/ウ
ハル:此ハル
ウ:有からはウ
ウ:思ふてウ
ウ:肌身にウ
ウ:身ウ
ウ:給へやとウ
ウ:下しウ
色:ひつかたげ色
ハルフシ:なだめハルフシ
中:手を,ウ:手を中/ウ
ヒロイ:静はヒロイ
ウ:形見のウ
ウ:見ウ
ハル:肌身にハル
上:盡ぬ上
ノル:涙とノル
中:道筋を,ウ:道筋を中/ウ
上:〱て,上:〱て上/上
上:行上
地:夜毎,ハル:夜毎地/ハル
ウ:浜ウ
中:尼が崎中
ウ:大ウ
ハル:渡海やハル
ウ:海ウ
ウ:上ウ
中:積荷物中
ウ:はウ
ハル:水主のハル
ウ:人ウ
フシ:世をフシ
地色:夫は,ウ:夫は地色/ウ
中:積荷の中
ハル:内をハル
ウ:おりうウ
ウ:宿ウ
中:料理拵中
ウ:所から迚ウ
ハル:塩梅もハル
ウ:あまふウ
中:一人娘中
ウ:お安がウ
ウ:安ウ
ウヲクリ:風ウヲクリ
ウ:裾にウ
ハル:ぐはらりとハル
色:立色
詞:是は詞