殿殿
とくに呼出し我手にかけんと思ひしが我最期さいごをとげさして死後しご貞女ていじよと云せたくわざと自滅じめつと見せかけしよふ抜身をばひあつぱれ健氣けなげな女中やとよそほむるも心は涙義経間近く立寄給ひかくあらんと思ひし故わざと川越が血筋ちすじを顕はし平家の縁をのぞかんと思ひし甲斐かひもなき最期さいごあさましの身の果よしなきちぎりをかはせしと御目に余る涙の色静御前も諸共にあなたこなたを思ひやり泣しづみ給ふにぞ手負ておひは君を恋しげに打ながめ〱一つならず二つ迄大切な云訳いひわけ立残る一は平家と縁組其とがわたしが皆なすわざ恋慕こひしたふ身をお見すてなう是迄はいかゐお情世につれないとはかないは明日あすさだめぬ人の命みじかふおわかれ申ます静殿我君様を大切に頼むぞやいのとせき上てわつと計に泣けるがサア川越殿平大納言時忠が娘の首頼朝様へお目にかけ御兄弟の御和睦わぼくそれが冥途めいどへよいみやげと首さしのばす心根を思ひやる程川越太郎胸にみちくる涙をばのみこみ〱そばに立より似合ざるたとへなれ共玄宗げんそうきさき楊貴妃やうきひ馬嵬ばぐはいが原にて哥舒翰かじよかんに討れ天下のわづらひをはらふ御兄弟確執くはくしつとならば万民の嘆き清き最期さいごも天下の為でかされたあつぱれ々あかの他人の某が介錯かいしやくしてしんじやうと刀するりと抜はなすノウ其

地色:我と,ウ:我と地色/ウ

ハル:死後にハル

詞:わざと

地:よそに,ウ:よそに地/ウ

フシ:心はフシ

地:義経,中:義経,ウ:義経地/中/ウ

ハル:立寄ハル

詞:かく

地:あさましの,ハル:あさましの地/ハル

ウ:かはせしと

ウ:御目に

ウ:静御前も

上:あなた

スヱテ:泣しづみスヱテ

中:給ふにぞ

地:手負は,中:手負は地/中

ハル:打ながめハル

中:ながめ

フシ:〱フシ

詞:一つならず

地:其,ウ:其地/ウ

ハル:恋慕ふハル

クル:是クル

色:お情

ウ:世に

ウ:明日を

ハル:人の命ハル

ウ:短ふ

色:申ます

詞:静殿

地:頼むぞやいの,上:頼むぞやいの地/上

ウ:わつと

中:計に

ハル:泣けるが,中:泣けるがハル/中

詞:サア

地:首,中:首地/中

ハル:心根をハル

ウ:思ひ

上:胸に

ウ:涙をば

色:立より

ウ:似合ざる

ハル:喩なれ共,色:喩なれ共ハル/色

詞:玄宗の

地:介錯,ウ:介錯地/ウ

ハル:刀ハル

色:抜はなす

詞:其