れし心はいかにヤアおろかな尋兄頼朝のみだい政子は北条が娘時政氏は平家に有ずやイヤ夫は主君頼朝伊豆の伊東に御座有時北条一家を味方に付ん計略の御縁組ヤアいふな〱元卿の君は汝が娘平大納言へ貰はれ育たは時忠肉身血を分た親は其方なぜ夫程の事鎌倉にて云訳せざるや但義経と縁有と思はれては身の瑕墐と思ひ隠し包だか卑怯至極と仰を聞より川越太郎居たる所をどつかと居なをりヤアお情ない義経公清和天皇の末流九郎義経を聟に持たは恐日本の舅頭五十に余る川越が名を惜んで禄を貪らふや今肉親をあかせばこなたの云訳するも暗縁者の證拠と成故にヲ鎌倉では隠した包んだかげに成日向に成云くろむれ共御前には讒者の舌は強くなり智者といはれし秩父さへ力に及ばぬ平家と縁組今に成て川越が娘といふて得心有ふか卑怯至極と思しめす御心根も面目なし皺腹一つが御土産と指添手早に抜はなすノウこれ待てと卿の君かけ出て手にすがり其云訳は自と刃物もぎ取我咽へぐつと突立どうと伏是はと驚義経公静もかけ出抱起し薬よ水よとうろたへて涙より外詞なし川越は見向もせず出かされた時忠の娘そふなうては御兄弟御和睦の願ひも叶はず
れし心はいかにヤアおろかな尋兄頼朝のみだい政子は北条が娘時政氏は平家に有ラずやイヤ夫レは主君ン頼朝伊豆の伊東に御座有ル時北条一ツ家を味方に付ケん計略の御縁ン組ヤアいふな〱元ト卿の君は汝が娘平大納言へ貰はれ育たは時忠肉身血を分ケた親は其方なぜ夫レ程の事鎌倉にて云訳せざるや但シ義経と縁有と思はれては身の瑕墐と思ひ隠し包だか卑怯至極と仰を聞より川越太郎居たる所をどつかと居なをりヤアお情ない義経公清和天皇の末流九郎義経を聟に持たは恐日本の舅頭五十に余る川越が名を惜んで禄を貪らふや今肉親をあかせばこなたの云訳するも暗縁者の證拠と成ル故にヲ鎌倉では隠した包んだかげに成リ日向に成リ云くろむれ共御前には讒者の舌は強くなり智者といはれし秩父さへ力ラに及ばぬ平家と縁ン組今に成ツて川越が娘といふて得心有ふか卑怯至極と思しめす御心根も面目なし皺腹一トつが御土産と指添手早に抜キはなすノウこれ待ツてと卿の君かけ出て手にすがり其云訳は自と刃物もぎ取我カ咽へぐつと突立どうと伏ス是はと驚義経公静もかけ出抱起し薬よ水よとうろたへて涙より外詞なし川越は見向キもせず出かされた時忠の娘そふなうては御兄弟御和睦の願ひも叶はず
地:卑怯,ウ:卑怯地/ウ
ハル:川越ハル
ウ:居たるウ
色:居なをり色
詞:ヤア詞
地:指添,ウ:指添地/ウ
ハル:ノウハル
ウ:云訳はウ
ウ:刃物ウ
ウ:どうとウ
ウ:是はウ
フシ:涙よりフシ
地:川越は,ウ:川越は地/ウ
ハル:見向もハル
色:せず出色
詞:出かされた詞