駿殿
駿殿
たら又おころ俱々とも〲わびと取なしあれば義経公性懲しやうこりもなき坊主め急異見ゐけんかさねあら氣を出さぬ様静もともにと座を立給ひ駿河亀井と引連て一間へこそは入給ふ静は嬉しくサアいそいで武蔵殿をよびましてと女中をはしらせ御前のお詞そふた故有がたう存じますと挨拶あいさつすればイヤそもじのお願ひ故と互辞義じぎも恋の義理悋氣嫉妬りんきしっとかとなく丸い天窓あたまの武蔵坊こしもとはしたに引立られこはい〱で七尺のからだも三尺八九寸四尺に余る大太刀を引ずらしてぞはひ出るこしもと共口々にさりとては片意路かたゐじな坊様アレ御らうじませ跡ぢより計致されますとつけ口いへば是さ〱其様に悪くいはぬ物弱身よはみへ付こんでむごいわたち人にはむくひが有ぞよと見廻す目玉にアレ又にらまれますコレサ細目ほそめだ〱と目顔しかめて身をちゞむ静は手を取御前へ連出モウ堪忍かんにんしておやりなされて下さりませと半分笑ひの取なしにけうの君はしとやかに君は船也臣は水なみ時はおのづから君のお船をくつがへ家来のわざ云訳いひわけないぞ重て急あら氣をやめおとなしう成たらよかろと子供異見ゐけんに弁慶はたゞアイ〱ともみ手してあやまり入し風情ふぜい也然る所へ遠見とおみの役人篠しのはら藤内あはたゞ敷出今日大津坂本のほとり順見じゆんけん致せしに忍び〱に鎌倉武士都へ入こみ候中に土佐坊とさぼうぞん海野うんのゝ々太郎行永熊野まふでいつはり我君の討手に向ふともつぱ風聞ふうふん

ハル:取ハル

中:義経公

詞:性懲も

地:静も,ウ:静も地/ウ

ハル:駿河ハル

フシ:一間へフシ

地:静は,ウ:静は地/ウ

ハル:女中をハル

ウ:御前の

ウ:有がたう

フシ:挨拶フシ

詞:イヤ

地:互の,ウ:互の地/ウ

ハル:恋のハル

中:悋氣

色:武蔵坊

ハル:妼ハル

色:こはい

ハル:〱でハル

中:七尺の

下:九寸

ハル:四尺にハル

下:大太刀を

フシ:引ずらしてぞフシ

地:妼共,ハル:妼共地/ハル

色:口々に

詞:さりとては

地:告口,ハル:告口地/ハル

色:是さ

詞:其

地:人には,ウ:人には地/ウ

色:目玉に

詞:アレ

地:目顔,中:目顔,ウ:目顔地/中/ウ

フシ:身をフシ

地:静は,ウ:静は地/ウ

ウ:堪忍

ハル:半分ハル

ウ:卿の君

中:しとやかに

詞:君は

地色:子供,ハル:子供地色/ハル

色:たゞ

ハル:もみ手ハル

フシ:誤りフシ

地:然る,ウ:然る地/ウ

ハル:あはたゞ敷ハル

色:罷出

詞:今日,ノリ:今日詞/ノリ