ざるとや夫は嬉しや有がたや六代計といはず共女子の上らぬ山ならばふもとみづから同道だう〱よや武里たけさとと悦び涙にくれ給へばヲヽお嬉しいはお道理〱わしもお供したけれど足手まとひな年寄としより尼夫ならば日のたけぬ内一時も早いのがヲヽ成寸善尺魔すんぜんしやくまのなき中に御親ともに御用意ようゐ早ふ笠はわたしが手の物早速さつそくながら御用に立んとともに用意の折こそあれ表の方に人音足音尼は心得いつもの通仏壇ぶつだんの下戸棚とだなへみだい親子御おやこご入つきやる其間もなく朝方の諸大夫猪熊いのくま大之進家来引具ししばの戸ふみのけどや〱と乱れ入此庵室あんじつに惟盛のみだい若葉の内侍ないしせがれ六代諸共にかくまひ置注進ちうしんによつてめしとりに向ふたり何国いづくに隠せし有やうに白状はくじやうせよとほしをさゝれて主の尼はつと思へどそしらぬ顔是は又御難題なんだい惟盛のみだいとは所縁ゆかりかゝりもなければかくまはふはづもなしといふにそばから小金吾武里たけさとは定庵室あんじつちがひ外を御詮義せんぎ遊ばせと聞もあへずヤア前髪めが小指出た指図さしつうぬは何やつイヤ私すげ笠売ヤア商人あきんどならばとつとゝ帰れと家来にせし絹緒きぬを草履ざうり取出しコリヤあらがはすまい為に家来を所の歩行あるきにして入こま證拠しやうこの為に取たる草履ざうり年寄尼めがあかたれたき物ははきはせまいサア是でもあらがふか奥へ連行せめさいなみ白状させんと主の尼が小がいな取てぐつとねぢ上ソレ家来共拷問がうもんせよとあらけなく

ウ:夫は

ウ:六代

ウ:女子の

フシ:悦びフシ

詞:ヲヽ

地:笠は,ウ:笠は地/ウ

ハル:御用にハル

ウ:俱に

フシ:折こそフシ

地:表の,ウ:表の地/ウ

ウ:尼は

ウ:いつもの

ウ:みだい

ハル:押入ハル

色:其

ウ:朝方の

ハル:猪熊ハル

ウ:家来

色:乱れ入

詞:此

地:星を,ウ:星を地/ウ

ウ:主の

ウ:はつと

色:そしらぬ

詞:是は

地:いふに,ウ:いふに地/ウ

ハル:小金吾ハル

色:武里

詞:夫は

地:家来に,ハル:家来に地/ハル

ウ:絹緒の

色:取出し

詞:コリヤ

地:主の,ウ:主の地/ウ

色:ソレ

ハル:拷問ハル