平成29年度(2017) 成果報告4

演劇映像関連資料のデジタル化と共有化

非フィルム媒体に記録された映像資料及び演劇博物館が多数所蔵する紙媒体の一次資料(台本、雑誌、草稿等)のデジタル化と公開による資料の共有化を促進し、国際的な学術交流の場となる新しいデジタルアーカイブのかたちを提起することで、拠点としての機能強化を図る。


伊藤道郎関連資料の公開

本年度は、昨年度の成果である「伊藤道郎関連資料データベース」の拡充を図り、12冊のスクラップブックのデジタルデータによる館内公開作業を行った。この資料は伊藤道郎のアメリカ時代以後の新聞・雑誌記事、パンフレットなどの膨大な資料を収めたもので、彼の活動を具体的に検証するうえで極めて重要な資料群である。本事業によってスクラップ内の1400 項目を超える量の多岐にわたる資料の目録が作成されたことで、膨大な資料群の検索が可能となり、昨年度の成果として公開した写真アルバムと併せて横断検索もできるようになった。デジタル公開によって2 種類の研究資源の可能性を飛躍的に高めることで、伊藤道郎をめぐる研究環境の刷新を図った。

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※「伊藤道郎関連資料データベース」は2018年度6月より「早稲田大学演劇博物館文化資源データベース」に移行しました。(2018年6月18日追記)


パンフレット(伊藤道郎スクラップブック添付資料)


草創期テレビ台本のデジタル化

今年度は演劇人である坪内逍遙や坪内士行に関連するテレビ台本(『マクベス』『真夏の夜の夢』『役の行者』等)、著名な映画評論家で草創期のテレビでも活躍した飯島正によるテレビ台本(『帰って来た人』等)、さらには映画監督の小津安二郎によるテレビ台本『青春放課後』のデジタル化と公開作業を進めた。草創期のテレビ作品と既存の演劇や映画などの隣接ジャンルとの関係を捉えるうえでも極めて貴重な資料群であり、こうした境界事例に改めて光を当てることで、テレビ研究、演劇研究、映画研究の全体を活性化させることを企図した。


『青春放課後』資料


演劇博物館所蔵の映像資料のデジタル化

本年度は演劇博物館が所蔵する貴重な映像資料のなかから8mmビデオの映像資料などとともに、現存未確認の映画作品『乃木将軍』の35mmフィルムのデジタル化を行った。これはトーキー映画として作られながらサイレント映画に再編集された貴重なバージョンのフィルムである。これらは今後の利活用とさらなる研究が期待される資料である。