下川研究室

研究メモ・お知らせ

中国の有機認証ラベルに関する論文
研究小話2021年03月02日

中国湖北省で現地調査をした有機認証ラベルに関する論文が、3回のR&Rを経てなんとかAgricultural Economicsに受理されました。「通常ならR&Rは1回までなのだが…」と言いつつ、チャンスをくれたEditorに感謝です。

今回は、投稿してから受理まで約1年半かかりました。Ag Econの前にも別の雑誌で2回R&Rの末にRejectされて1年以上費やしているので、結局トータルで3年近くかかったことになります。合計で5回もR&Rしたので、色々とマシになったと思います。

この論文の売りの一つは、都市と農村の両地域で無作為に抽出された世帯を訪問して離散選択実験(DCE)を実施した点です。関連する先行研究ではオンラインや都市部のスーパーマーケットでDCEを実施することが多く、サンプルが高学歴や高所得の人に偏っていました。そのような偏りは、都市・農村格差の大きい中国や他の途上国では実態を見誤る要因となります。たとえば、我々の農村調査では高卒以上が16.6%で非識字者が9%おり、教育水準の分布は国家統計局の調査とかなり似ています。一方、先行研究の農村調査では4割近くが高卒以上で非識字者は含まれていません。

この論文のキモは、都市および農村地域の幅広い教育水準の世帯に対してDCEを実施することで、有機食品に対する需要の都市・農村格差を説明する要因として、所得よりも食品ラベルに関する知識の方がボトルネックになっていることを実証した点です。これにより、経済成長によって所得が上昇するだけでは有機食品の需要は十分に増えず、食育などによって食品ラベルの知識を向上させることも重要であることが示されました。