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アスリートにおける骨と栄養

早稲田大学スポーツ栄養研究所 招聘研究員
公認スポーツ栄養士 浜野純

アメリカスポーツ医学会(American College of Sports Medicine:ACSM)及び食事と栄養のアカデミーカナダ栄養士会によるスポーツ栄養学に関する共同声明において、低エナジー・アベイラビリティー(Low Energy Availability: LEA)によって低骨密度や疲労骨折のリスクは高まると言われています1)。すなわち、選手のみなさんが、ケガをしない強い骨を作るためには、適切なエネルギー摂取が重要であり、そのうえで骨の形成に必要かつ不足しやすい栄養素であるカルシウムとビタミンDを十分に補給することが大切となります。

①適切なエネルギー摂取

トレーニング量の増加や食欲減退、減量などによって、相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sport: RED-S)となることで、多くの健康問題を引き起こすことが報告されています2)(RED-Sの詳細については、このHP「女性アスリートの諸問題」「相対的エネルギー不足(RED₋S)」をご参照ください)。このような問題は、男女ともに起こりうることですが、女性の場合、相対的エネルギー不足により、無月経の状態が続くと、骨代謝に関係する女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減少し、骨密度の低下を招きます。そのため、無理な減量は避け、運動に見合ったエネルギーを摂取することが大切です。

②選手におけるカルシウムの摂取の現状と目標量

選手のカルシウムの摂取の現状は、日本人の食事摂取基準(2020年版)の1日の推奨量(女性15歳以上)の650 mgを下回ることも多く、日本人の選手を対象とした調査において、1日のカルシウム摂取量は審美系、球技系、筋力/瞬発系選手で500-600 mg程度、高校生長距離、短距離の選手で600 mg程度であることが報告されています3)。一方でカルシウム摂取と骨の状態を調べた研究では、低エネルギー・アベイラビリティーまたは月経障害の選手において骨を最適化するのに必要な摂取量は、カルシウム1500 mg/日4)、ビタミンD1500-2000 IU/日(38-50 μg/日)5)と示されています。大学生女性選手の調査においては、クエン酸Ca1000 mgとビタミンD400 IU(10 μg)の錠剤を16週間摂取させたところ、脚の骨密度が若干上昇したことを報告しています6)。これらのことからも、骨密度を上昇させ、骨のケガを予防するためには、「ビタミンDの摂取とともに、カルシウムの摂取は少なくとも1000 mg以上であることが望ましい」と考えられます。

➂ビタミンDの摂取目標量

ビタミンDは紫外線により皮膚下でも合成されますが、食事からの摂取も欠かせません。特に、紫外線量が少ない冬場や日焼け止めクリームの使用、室内競技の場合は、より食事から補給が求められます。「平成30年国民健康・栄養調査報告」(厚生労働省)でのビタミンDの摂取量は、女性の平均が5 μg前後であるのに対して、日本人の食事摂取基準(2020年版)で示す1日の目安量(女性15歳以上)は8.5 μgであり、日本人は日常的に摂取不足の状態です。そのため選手の場合、少なくとも目安量を超える摂取量が確保できるように食事内容を留意しましょう。

参考文献

1) 
Nutrition Working Group of Medical and Scientific Commission of the International Olympic Committee: Nutrition for Athletes -A practical guide to eating for health and performance-,2016
2) 
Mountjoy M ,Sundgot-Borgen J, Burke L, Carter S, Constantini N, Lebrun C, Meyer N, Sherman R, Steffen K, Budgett R, Ljungqvist A. The IOC consensus statement: Beyond the Female Athlete Triad–Relative Energy Deficiency in Sport (RED-S). Br J Sports Med 48:91–497, 2014. doi: 10.1136/bjsports-2014-093502.
3) 
田口素子 平成27₋28年度 スポーツ庁委託事業 データ集
4) 
Kitchin B. Nutrition counseling for patients with osteoporosis: a personal approach. J Clin Densitom. 16:426-31,2013. doi: 10.1016/j.jocd.2013.08.013.
5) 
Holick MF, Binkley NC, Bischoff-Ferrari HA, Gordon CM, Hanley DA, Heaney RP, Murad MH, Weaver CM; Evaluation, treatment, and prevention of vitamin D deficiency: an Endocrine society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab, 96:1911-30, 2011. doi: 10.1210/jc.2011-0385
6) 
Mehlenbeck RS, Ward KD, Klesges RC, Vukadinovich CM.: A pilot intervention to increase calcium intake in female collegiate athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab, 14:18-29, 2004. doi: 10.1123/ijsnem.14.1.18

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