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減量とエネルギー代謝

早稲田大学スポーツ科学研究科
管理栄養士 三浦希美

アスリートはパフォーマンス向上やコンディション調整のためにウエイトコントロールに取り組むことが多くありますが、思う通りに減量できないことも多いのではないでしょうか。

アスリートは単に体重を減少させるのみでなく、パフォーマンスに影響する筋肉などの除脂肪量を低下させないことが重要です。しかし、極端な食事制限や不十分なエネルギー摂取が継続すれば、除脂肪量の低下を招いて競技力に悪影響を及ぼすのみでなく、エネルギー代謝機能や内分泌機能を抑制することが明らかになっています(参照:女性アスリートの三主徴スポーツにおける相対的エネルギー不足)。

減量時のエネルギー代謝の変化に関しては、食事や運動による減量介入試験において、体重減少量は予想されたよりも少なく、エネルギー消費量を節約するという代謝適応が起きていることが報告されています1)。すなわち、減量による代謝抑制により、同じように減量に取り組んでも、さらなる減量効果を発揮することが難しくなってしまうということです。

これは、減量により除脂肪量を低下させてしてしまうことが一因として挙げられます。アスリートにおいて、除脂肪量が基礎代謝量に最も影響を与える因子であることが明らかとなっており2)、減量により体脂肪とともに除脂肪量が減少すると、基礎代謝量の低下を招くことも報告されています3)。したがって、長期的な減量効果を考えると、除脂肪量と基礎代謝量を維持しつつ脂肪量を減少させることが望まれます。女性アスリートは、低エネルギー状態や代謝抑制を避けるために、約500 kcal /日のエネルギー制限により、約0.5 kg/週で徐々に体重を減らすことが推奨されています4)

さらに、低エネルギー状態が続いた場合、摂取したエネルギーは主に生命維持に関わるもの(心拍や呼吸・体温の維持など)に分配され、それ以外の成長や生殖機能に関わるものを制限し、エネルギー消費の節約をはかるようになります。エネルギー代謝を亢進させる働きをする甲状腺ホルモンについても、低エネルギー状態により血中濃度が低下し、エネルギー代謝を低下させる一因となります。

極端な食事制限や急激な減量は、かえってパフォーマンスに悪影響を与えたり、健康を害したりします。体重、体脂肪率、除脂肪量をモニタリングしつつ、計画を立ててウエイトコントロールを行うようにしましょう。本サイト上の身体組成のモニタリングページもご活用ください。

参考文献

1)
Müller MJ, Enderle J, Pourhassan M, Braun W, Eggeling B, Lagerpusch M, Glüer C, Kehayias JJ, Kiosz D, Bosy-Westphal A. Metabolic adaptation to caloric restriction and subsequent refeeding: the Minnesota Starvation Experiment revisited. Am J Clin Nutr. 102(4):807-19, 2015. doi: 10.3945/ajcn.115.109173.
2)
Taguchi M, Ishikawa-Takata K, Tatsuta W, Katsuragi C, Usui C, Sakamoto S, Higuchi M. Resting energy expenditure can be assessed by fat-free mass in female athletes regardless of body size. J. Nutr. Sci. Vitaminol., 57(1): 22-29, 2011. doi: 10.3177/jnsv.57.22.
3)
Stiegler P, Cunliffe A. The role of diet and exercise for the maintenance of fat-free mass and resting metabolic rate during weight loss. Sports Medicine. 36:239–262, 2006. doi: 10.2165/00007256-200636030-00005.
4)
Sundgot-Borgen J, Meyer NL, Lohman TG, Ackland TR, Maughan RJ, Stewart AD, Müller W. How to minimise the health risks to athletes who compete in weight-sensitive sports review and position statement on behalf of the Ad Hoc Research Working Group on Body Composition, Health and Performance, under the auspices of the IOC Medical Commission. Br J Sports Med. 47:1012–1022, 2013. doi:10.1136/bjsports-2013-0929661.

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