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女性アスリートにおける月経と女性ホルモン

日本体育大学児童スポーツ教育学部 教授
須永美歌子

月経と女性ホルモン

月に一回月経(生理)がくるというのは、面倒くさいし、邪魔なものだと思う人もいるかもしれません。しかし、月に1回決まった期間で生理が来るというのは様々なホルモンの分泌が正常にコントロールされていることを示しており、健康な成人女性ならではの生理現象といえます。月経の起こる仕組みを図1に示しました。

図1. 月経が起こるしくみ

図をみてわかるとおり、脳の一部である視床下部が多くのホルモンの分泌を調節して月経を起こしています。ところが、利用可能エネルギー不足やストレスが高い状態が長期間続くと、視床下部のはたらきが低下し、各ホルモンの分泌量を正しくコントロールできなくなって無月経となります。このような状態は、非常に危険です。もし、今まであった月経が3ヶ月以上止まってしまったら、婦人科を受診するようにしてください。

女性ホルモンの代表的なものとして、エストロゲンが挙げられます。女性ホルモンというと、乳腺や子宮など生殖機能と関連のある部分に働くというイメージが強いかもしれません。しかし、実際には骨格筋、心臓、血管、神経細胞など多くの組織に作用します。エストロゲンは、月経周期にともない大きく増減し、月経中に低く、月経が終わってから一週間後ぐらいに非常に高い値を示します。さらに排卵後に少し低くなりますが、また月経前に高い値を示します(図2)。このようなエストロゲンの変化は、運動時の生理機能に影響を与えると考えられています。

図2. 月経にともなう女性ホルモンの変化1)

女性ホルモンの変化と運動

われわれの研究室では、女性ホルモンの変化が運動時生理反応に与える影響について研究を行っています。例えば、月経周期を考慮してレジスタンストレーニングの頻度を変えた場合、筋肥大にどのように影響するかについて検討しました2)。卵胞期(低エストロゲン、低プロゲステロン)と黄体期(高エストロゲン、高プロゲステロン)でそれぞれトレーニング頻度を変えるという方法を用いました。その結果、筋肥大率は、異なるトレーニングプロトコル間で有意な差はありませんでした(図3)。エストロゲンは、筋タンパク質合成を促進させる作用を持つことが多く報告されており3) 4)、この研究では12週間という短いトレーニング期間でしたが、長期間継続した場合には黄体期にトレーニング効果が高くなる可能性が示唆されました。

図3. 月経周期を考慮したレジスタンストレーニングプログラムの比較

また、最近では、月経周期が血中カルニチン濃度と持久性パフォーマンスに与える影響について検討した論文を発表しました5)。カルニチンの血中濃度が卵胞期に比べて黄体期に低くなり、そのことが持久性パフォーマンス低下につながる可能性があるという結果でした。カルニチンは、脂質をエネルギーとして使う際に脂肪酸をミトコンドリアへ輸送するために必要な物質です。したがって、カルニチンが低くなると、持久性運動時の各組織へのエネルギー供給に影響を与えることが要因であると考えられます。

将来的には女性ホルモンの変化を考えながら、トレーニングプログラムを調整する必要性が明らかになるかもしれません。しかしながら、筋肥大や持久性パフォーマンスには様々な因子が影響を与えますので、今後多くの研究がなされ、多角的に検討することが必要です。

参考文献

1)
日本体育大学体育研究所「女性の健康とスポーツに関する研究プロジェクト」.はじめての月経コンディショニング学, https://www.nittai.ac.jp/kenkyujo/projects/
2)
Sakamaki-Sunaga M, Min S, Kamemoto K, Okamoto T. Effects of Menstrual Phase-Dependent Resistance Training Frequency on Muscular Hypertrophy and Strength. J Strength Cond Res. 2016 Jun;30(6):1727-34. PMID: 26554551.
3)
Kahlert S, Grohé C, Karas RH, Löbbert K, Neyses L, Vetter H. Effects of estrogen on skeletal myoblast growth. Biochem Biophys Res Commun. 1997 Mar 17;232(2):373-8. PMID: 9125184.
4)
Vasconsuelo A, Milanesi L, Boland R. 17Beta-estradiol abrogates apoptosis in murine skeletal muscle cells through estrogen receptors: role of the phosphatidylinositol 3-kinase/Akt pathway. J Endocrinol. 2008 Feb;196(2):385-97. PMID: 18252962.
5)
Matsuda T, Furuhata T, Ogata H, Kamemoto K, Yamada M, Sakamaki-Sunaga M. Effects of the Menstrual Cycle on Serum Carnitine and Endurance Performance of Women. Int J Sports Med. 2020 Jun;41(7):443-449. PMID: 32059242.

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