水素社会と燃料電池:実現のキーとなる電極触媒の創製

内田 裕之
山梨大学 クリーンエネルギー研究センター・教授 センター長

再生可能エネルギーをうまく使うには?

CO2排出削減と同時に、自然災害にも強い分散電力システム構築に向けて、太陽光、風力発電等の再生可能エネルギー発電の導入が急速に増加しています。ただし出力変動が大きいことが欠点です。蓄電池に充放電して調整できますが、大規模電力を長時間貯めるにはコストと設置体積が過大になります。

大規模電力の貯蔵媒体として水素が有望視されています。水電解により水を製造・貯蔵し、必要な時に燃料電池で発電して安定な電力と熱エネルギーが得られます。水素は輸送可能で、燃料電池自動車にも供給できます。

このような水素社会の実現に向けて、2014年6月に経済産業省は世界に先駆けて「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を公表しました。2040年頃の最終ステージでは、再生可能電力を用いた水素製造・輸送・貯蔵の本格化が計画されています。

固体高分子形燃料電池(PEFC)と水電解(PEWE)用の三刀流電極触媒

水素社会の実現には、高効率な燃料電池と水電解が必要です。出力密度が高く起動停止が容易な固体高分子形燃料電池(PEFC)と水電解(PEWE)では、図1の反応が進行します。

たちは、これらの効率と耐久性を高めるキーとなる電極触媒の研究・開発を進めています。従来の電極触媒は、PEFC、PEWEともに水素側は白金(Pt)で決まり。PEFCの酸素還元にはPtかPtCo合金で、PEWEの酸素発生は酸化イリジウムでした。どれも高コストであり、使用量を減らすには活性と耐久性を大幅に上げる必要があります。最近、PtCo合金ナノ粒子表面に数原子層のPtを制御析出すると、水素酸化、酸素還元、水素発生の3つの反応に対して、従来触媒の2倍以上の高い活性と、これまでにない高い耐久性を発見しました。まさに、“三刀流”電極触媒の登場です。電子顕微鏡で見ると粒径は約3 nmに揃っています(図2)。企業と共同でこの触媒の実用化を進めつつ、そのような機能の発現機構をナノスケールで多角的に解析して、さらに高性能・高耐久な次世代材料開発を目指しています。

固体酸化物形燃料電池(SOFC)と水蒸気電解(SOEC)用の高性能・高耐久電極

他方、セラミック電解質を用いて高温で作動する燃料電池(SOFC)は頻繁な起動停止は苦手ですが、PEFCよりも高い発電効率が特徴です。これを逆作動すると水蒸気を電解して90%以上の効率で水素製造できます(SOEC)。私たちはそのような可逆交互作動セル用電極の研究開発を進めています。従来にない高い性能と高耐久性を両立した複合酸化物酸素極、これを電解質と良好に接合する緻密で均一な中間層、ならびにnmサイズのNi-Co合金触媒を高分散したセリア触媒層にμmサイズの集電層を積層した高性能水素極を開発しました。企業と共同で実用サイズのスタック(積層セル)開発にも取り組んでいます。

図1 固体高分子型燃料電池(PEFC)と固体高分子形水電解(PEWE)における電極反応

 

図2 Ptスキン層を制御析出したPtCo合金ナノ粒子触媒の電子顕微鏡写真
READ MORE

内田 裕之

うちだ ひろゆき

山梨大学 クリーンエネルギー研究センター・教授 センター長

プログラム担当者
専門:電気化学、物理化学

KEYWORD
燃料電池(PEFC, SOFC)用高性能・高耐久電極触媒の研究開発
水素製造(PEWE, SOEC)用高性能・高耐久電極の研究開発
燃料電池および水電解反応のナノスケール・多角的解析
略歴
大阪大学 工学部 応用化学科 1977/03/31 卒業 日本
大阪大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 修士 1979/03/31 修了 日本鳥取大学 工学部 助手 1979/04/01-1989/03/31
大阪大学 工学部 講師 1989/04/01-1993/03/31
山梨大学 工学部 助教授 1993/04/01-2001/09/30
北海道大学 触媒化学研究センター(現在 触媒科学研究所) 客員助教授 (併任) 1999/04/01-2000/03/31
山梨大学 工学部 教授 2001/10/01-2003/03/31
山梨大学 大学院医学工学総合研究部 教授 2003/04/01-2008/03/31
山梨大学 クリーンエネルギー研究センター 教授 2008/04/01
山梨大学 評議員 2009/04/01-2015/03/31
山梨大学 クリーンエネルギー研究センター 教授, センター長 2009/04/01
お問い合わせ

教授へのお問い合わせ

※教員へメールが届きます
※必要事項をご入力の上、送信ください