非常用電源機能を有する 電力・水素複合エネルギー貯蔵システム

津田 理
東北大学 大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻・教授

2011年3月の東北地方太平洋沖地震では、停電が約4日間も続いた上に、石油備蓄基地が被害を受けて物流が遮断されたため、燃料確保が困難となり、仙台市の主要な浄水場では機能を維持するのが大変であった。これらの浄水場では、非常用電源として軽油や灯油を用いた自家発電機が使用されていたが、大規模な自然災害が発生すると輸送を伴う燃料確保が困難となるため、長期停電に対応するには、大容量のタンクを設置し、燃料を備蓄しておく必要がある。しかし、非常用電源用の自家発電機は通常時には使用しないため、タンク内の燃料が経年変化し、非常時の動作不良につながりやすい。このため、定期的に燃料を交換する必要があるが、燃料タンクが大きくなると、燃料入れ替え時期の判断や燃料の消費・再充填が容易ではなくなる。また、今後の化石燃料の高騰や枯渇、CO2排出量削減を考えると、化石燃料に依存しない大容量非常用電源を早期に構築する必要がある。一方、大規模自然災害等により長期間停電する場合は、わずかなエネルギーでも大変貴重になり、東北地方太平洋沖地震時は、太陽光発電がエネルギー確保の面で大きく貢献した。このため、全国の6万箇所以上の指定避難所に太陽光発電装置を設置しておくことは、今後発生する大規模自然災害に対して有効であると考えられる。しかし、太陽光発電電力を非常時においても有効活用するには、太陽光発電出力の変動を補償する必要があり、これにはエネルギー貯蔵装置が不可欠となる。以上を踏まえ、電力貯蔵装置と水素貯蔵システムを組み合わせた図1の様な「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を考案し、実用化に向けた研究開発を実施している。そして、同システムが、非常用電源として高品質・高安定な電力を長期間供給できることや、同システムを用いた高精度な変動補償により、再生可能エネルギーの有効利用が可能になることを実証するために、仙台市茂庭浄水場に図2の様な20kWの実証システムを構築し、現在実証試験を実施している。

図1 電力・水素複合エネルギー貯蔵システム

 

図2 仙台市茂庭浄水場における実証試験用システム

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津田 理

つだ まこと

東北大学 大学院工学研究科 電気エネルギーシステム専攻・教授

プログラム担当者
専門:電気エネルギーシステム工学、超電導工学

KEYWORD
エネルギー貯蔵装置を活用した高効率・高信頼電力システムの研究
高効率・高信頼な次世代電力輸送システムの研究
超電導技術を活用した高効率電力機器の開発
略歴
2005年4月 - 現在
東北大学大学院工学研究科
2004年4月 - 2005年3月
山口大学産学公連携・創業支援機構大学院ベンチャービジネスラボラトリー教育研究施設 助教授 施設主任(2004-2005)
2000年4月 - 2004年3月
山口大学工学部 助手
1999年4月 - 2000年3月
早稲田大学理工学総合研究センター 客員講師(専任扱い)
1997年3月 - 1999年3月
日本学術振興会 海外特別研究員
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