臨機応変に対応する力が身に付いた
社会科学部 3年 髙橋 唯梨(たかはし・ゆいり)

早稲田大学漕艇部のマネージャーをしています
2025年4月13日(日)、東京都の隅田川・新大橋~桜橋間にて、第94回早慶対校競漕大会(通称、早慶レガッタ)が開催されました。早慶レガッタは1905年に隅田川で開催されて以来、毎年春に行われている伝統ある大会で、野球・ラグビーと並ぶ「三大早慶戦」の一つとされています。また、英国のオックスフォード大学対ケンブリッジ大学、米国のハーバード大学対イェール大学に並ぶ、「世界三大レガッタ」とも称されています。
レガッタ、すなわちボート競技は漕手(そうしゅ)がオールを使って艇(てい)をこぎ進め、その速さを競うレース競技です。一般にボートと聞くと公園の手こぎボートをイメージする方も多いと思いますが、競技用ボートの大きな特徴は座席が前後にスライドする点です。これによりオールを軸にしながら脚力を使って艇を進めることが可能になり、競技中の速度は時速20kmを超えます。
大会当日は早稲田・慶應両校の選手が、全長3,750mのコースを舞台に、それぞれの誇りを懸けた白熱のレースを展開しました。これまでの対戦成績は、早稲田大学49勝、慶應義塾大学41勝、同着1回と拮抗していましたが、本年は男子対校エイト、男子第二エイト、女子対校エイトの3種目全てで早稲田が勝利し、7年ぶりの完全優勝を達成! 記念すべき50勝目を挙げることができました。

早慶レガッタの花形種目である”対校エイト”が勝利した瞬間。艇をこぐ漕手8名と艇の舵を操作するコックス(舵手)1名が搭乗しています
本大会で私は運営委員会の学生総務として大会運営の統括を担いました。総務の業務は、関係各所への申請や訪問、レーススケジュールの調整、必要備品の手配など多岐にわたります。大会の半年前頃から、卒部生の方や慶應義塾大学の総務担当者とともに、東京都庁・墨田区、台東区、江東区、中央区役所・警視庁・消防庁をはじめとする関係各所への後援・協力依頼や、企業への協賛依頼に伺う他、隅田川でのレース開催に必要な水路使用許可の申請なども行いました。
漕艇部の日常的な部活運営や学業と並行してこれらの業務をこなすことは、想像以上に大変でした。しかし隅田川でのレースは、120年にわたる伝統と信頼の下、「早慶レガッタ」のみに与えられた特別な舞台です。そのような歴史ある大会を成功へと導くため、懸命に奮闘しました。
計画通りに進むとは限らない
順調に準備が進行していると思っていても予期せぬトラブルが発生することも多く、こうした試練は大会当日まで続きました。当日は雨が降る中、複数のトラブルが同時に発生し、私のスマートフォンは終日鳴りやまず、対応に奔走する1日でした。
何か不測の事態が発生した際には、大会運営統括の立場としてその後の対応方針を迅速かつ的確に判断し、関係者へ指示を出す必要があります。対応に追われ、レースを観戦する余裕はほとんどありませんでしたが、卒部生の方々や部員、関係各所と連携しながら全てのレースを無事に終えることができた時は、深い安堵と達成感に包まれました。

レース開始直前、チーム早稲田が川岸で応援する姿
今回の経験を通じて、どれほど入念に準備を重ねていても、当日の状況により計画通りに進むとは限らないことを痛感しました。与えられた業務を遂行するだけでは、このような突発的な事象を的確に対処することは困難です。常に先を見据え、起こりうる状況を想定して行動し、状況に応じて柔軟に対応することが求められます。かつての私は、想定外の事態に動揺してしまうこともありましたが、本大会の運営経験によって、こうした力を実践的に身に付けることができ、私自身にとって大きな成長へとつながりました。
また、大会を通して改めて実感したのは、私たちの活動が本当に多くの方々の支えによって成り立っているということです。卒部生の皆さまをはじめ、地域の方々や、各関係機関の方々のご協力なくして、大会の開催は実現しませんでした。
来年度は幹事校総務として、引き続き大会全体の運営統括を担います。今年の経験を糧に、より円滑で安全な大会運営を実現するとともに、早稲田の連覇に貢献できるよう誠心誠意努力していきます。そして恵まれた環境に感謝しながら、自分自身をさらに成長させていきたいです。

閉会式にて、早稲田大学漕艇部一同で