読者の皆さんは趣味を持っているだろうか。筆者は、学生時代に取り組んでいたピアノを40代になって独学で再開してから2年がたつ。再開のきっかけは、子育て中の気分転換だった。学生時代に弾いていたショパンのピアノ曲にもう一度挑戦してみたいという軽い気持ちで始めたのだが、この趣味から多くのことを学んでいる。
例えば、自分の練習方法は正しいのか、なぜ理想の演奏に近づけないのか、といった問いに、時間を気にせず真剣に向き合う日々は、非常に充実したものだ。調べてみると、ショパンのピアノ曲の練習法について30分にわたる解説動画を公開しているポーランドのピアニストがいて、その内容も素晴らしかった。また、SNSを活用すると、ピアノの上達に関するさまざまな情報が自然と集まってくる。
思えば、筆者が学生だった20年前には動画サイトもSNSも存在せず、ピアノを独学で学ぶことは、もっと手探りで進むような感覚があった。しかし、現代ではネット上に豊富な教材があふれていることに改めて気付かされた。
さて、自分の仕事を振り返ってみると、研究も教育も日々の上達が求められるが、ピアノに向き合うときのように課題にじっくりと取り組めているだろうか。また、日々接する学生たちにも「あなたの研究方法や学習方法は正しいのか」「理想の研究や学習に近づくためにはどうすれば良いのか」と問い掛けられているだろうか。
時間を気にせずじっくりと自分に向き合い、成長することを、筆者は趣味から改めて教わった。読者の皆さんにも、ぜひ趣味を大切にしてほしいと思う。
(MM)
第1172回