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私たちが普段歩けること、住めることの「根拠」を探る【法学研究科】

誰もが使う不動産はなぜ当たり前に使えるのか、日々研究を進めています

大学院法学研究科 修士課程 2年 伊藤 優奈(いとう・ゆうな)

道を歩いたり、家に住んだり。不動産とは、誰もが当たり前に利用するものです。それを利用することができる「根拠」を考えてみると、意外と難解であることが少なくありません。

早稲田大学に通っている人の中には、大学の近くにアパートを借りて住んでいる人も多いかと思います。この「借りる」「住む」ということを法律の視点から見てみると、大家さんとの間で「賃貸借契約」を締結し、その契約を原因とする「賃借権」を根拠としてアパートの一部屋を「使用」する権利を行使している、という形になります。要するに、普段「賃貸」と呼んでいるこの貸し借りにも、法律上の根拠があるのです。

私は、このような「他人が所有する不動産を利用する権利」について研究しています。先ほど例として挙げた賃貸借以外にも、法律には多くの「不動産を利用する権利」が定められています。例えば、日本の民法には「地上権」「永小作権」「地役権」「使用貸借」(※)などがあります。それらの権利がどのようにすみ分けられているのかを整理した上で、そのあるべき分類・類型を新たに示すことを目標に目下研究を進めています。この研究を進めることで、人々が土地の利用に関して裁判でその権利の有無や内容を明らかにしようとする際に、より明瞭な基準で審理判断ができるようにし、訴訟の円滑化に加え、当事者にとって不測の不利益が生じることを防ぐことを目指しています。

(※)地上権:他人の土地を工作物や竹木を所有するために使用する権利(民法265条)。
永小作権:小作料を支払って他人の土地で耕作や牧畜をする権利(民法270条)。
地役権:当事者の定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地のために利用する権利(民法280条)。
使用貸借:他人の物を借り、一定期間無償で利用する権利(民法593条)。

大まかな研究対象として「不動産に関する権利」を決めたきっかけは、学部3年生のときの同級生からの何気ない一言でした。当時出された論文課題が「民法改正で新設された、あるいは変更された条文を一つ選んで論じなさい」というもので、どの条文にしようか悩んでいることを同級生に話したところ、六法全書を開いて目に付いた条文を適当に指さしてくれました。それが不動産の賃貸借に関する条文だったんです。このときは、自分が研究者の道に進むとは想像もしていませんでしたが、誰もが利用する不動産について、「どうして当たり前に使えているのか」を改めてじっくりと考えてみるのも面白そうだと思いました。この同級生の一言が、今こうして法学研究科で過ごすきっかけとなったのです。

写真左:早稲田キャンパス2号館にある専修室。研究する法分野(民法、憲法、刑法など)ごとに部屋があり、修士課程・博士後期課程の区別なく学生同士の交流の場になっています
写真右:専修室内の本棚。手前の上2段には私の所有する書籍を置かせてもらっています

大学院では、自ら積極的に研究に取り組む姿勢が求められます。そのため、修士1年の間は、不動産に関する明確な研究テーマを決めるために、どんな書籍や論文を読めばいいのか、暗中模索の日々が続いていました。特に、民法は先行研究や基本書が極めて多く、何に手を付ければいいのかが分かりませんでした。それでも、授業での報告の機会などを通してなんとか研究テーマを「他人が所有する不動産を利用する権利」に定め、今もそれに関連する文献を読んだり、民法の起草過程を追ったり、不動産の利用に関する裁判例を集めたりしています。

また、法学研究科の修士課程では原則として日本法の他、外国法との比較検討を行うことになっているのですが、私はフランス法との比較を行うことにしました。というのも、フランス法は日本法と「体系」が全く違うため、権利の「すみ分け」のあり方について検討するのに適していると考えたからです。私は学部生のときは第二外国語としてドイツ語を選択していたため、大学院に入ってからフランス語を学ぶことになり、その点でも苦労しました。それでも、現在は辞書を使いながらではありますが、判例評釈やフランス語で書かれた基本書を読むことができる程度にはなりました。博士後期課程では、博士論文提出の条件としてフランス語の外国語能力試験に合格する必要があるため、そのための語学の勉強も頑張っています。

ある日のスケジュール
  • 07:00 起床(授業やアルバイトがないときは9:00頃に起きています)
  • 10:30 アルバイト(法学研究科学生読書室で働いています)
  • 13:00 昼食
  • 14:00 研究(図書館や専修室で行います。息抜きに同期や先輩との歓談も)
  • 23:30 帰宅
  • 00:30 就寝

写真左:早稲田キャンパス8号館にある法学研究科学生読書室。手前の席でスタッフとして働いています
写真右:大学ではコンビニで昼食を済ませることが大半ですが、研究報告を終えた日は、自分へのご褒美として少し奮発することもあります。写真は大学の近くにある「都電テーブル」の漬け刺し定食

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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