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響け、鎌倉! 地域密着型オーケストラを立ち上げた早大生の思い

「大好きな音楽で鎌倉をもっと盛り上げていきたい」

教育学部 3年 阿部 晶太郎(あべ・しょうたろう)

阿部さんのお気に入りの場所、早稲田キャンパス 早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)にて

幼少からの音楽経験を生かし、地元・鎌倉で演奏団体「カマクラシックオーケストラ」(以下、カマクラシック)を立ち上げた阿部晶太郎さん。同団体の代表として、「音楽を通じて鎌倉を好きな人たちの居場所をつくる」ことを目標に、組織運営や広報を中心に活動しています。2024年2月に鎌倉芸術館小ホールにて行われた第1回特別演奏会では、満員の観客を前に小学生から60代までの総勢60人が演奏し、大成功を収めました。また、2025年1月には第2回演奏会を実施することが決定。新たな期待を胸に次回公演へと駆け出した阿部さんに、カマクラシックを立ち上げた経緯や今後の意気込みを聞きました。

――阿部さんが音楽活動を始めたきっかけと、印象に残っている出来事を教えてください。

クラシック音楽が好きな両親に勧められ、4歳のときにピアノを始めました。より主体的に音楽に関わるようになったのは中学生の頃ですね。合唱コンクールで指揮をしたり、ジャズが好きになったことでサックスのレッスンに通ったりしていました。

1歳の頃、楽器店のクラシック音楽コーナーにて。幼い頃から音楽は身近な存在だった

高校の吹奏楽部ではコントラバスを担当したのですが、低音を響かせる感じを気に入った一方で、もっと目立ちたい、必要な存在でありたいという気持ちも強く、「コントラバスを弾く⾃分の存在価値は何だろう」と悩んでいました。そんな時期に定期演奏会で指揮者に挑戦することになったんです。でも正確に指揮をすることばかりに気を取られ、自分がイメージする音色をうまく言葉で伝えることができず、演奏者と衝突してしまったこともありました。それでも高校生活の最後には「あべしょー(阿部さんのニックネーム)が指揮者で良かったよ」と声を掛けてもらえて、うれしかったですね。

高校生のとき、指揮台に立ちポーズをとる阿部さん

――大学入学後、地元・鎌倉でカマクラシックを立ち上げることを決意したのはなぜでしょうか?

大学では早稲田吹奏楽団(公認サークル)に入団して指揮者を担当したのですが、ここでも言葉で伝えることの難しさに直面してしまって。組織の中での自分の存在価値に悩み、そのまま所属し続けることへの不安も募っていきました。そして自分なりに思い至ったのが、既存の組織に所属するのではなく、自分で新しい組織を立ち上げてみるという挑戦でした。

地元に戻ることを決意したのは、中野の国際学生寮WISHへの入寮をきっかけに鎌倉を離れたことで、「自然豊かで、人とのつながりが強い鎌倉が好きだ」という自分の気持ちに気が付いたからです。寮生活は充実していたのですが、サークル運営や起業に取り組む寮の友人たちの姿を見ていて、僕も何かをやってみたい、という気持ちも強くなっていました。

カマクラシックを立ち上げるにあたって大切にしたのは、鎌倉を「新しい文化を生み出していける街」にしたいという思いです。鎌倉は歴史的な観光資源が豊富ですが、新しいコミュニティーや芸術文化でさらに盛り上げることができれば、市民や観光客だけではなく「鎌倉に思い入れがある人」が集う街になる。この思いから、カマクラシックは年齢や出身、音楽経験に関わらず「鎌倉好き」であることを入団条件にしたんです。そして2022年10月に1人で活動をスタートしました。

―― カマクラシックを立ち上げる際に大変だったことはありますか?

とにかく人を集めるのが大変でした。当初はSNSを使って広報をしていたのですが、オーケストラを編成できる人数を集めるには、もっとカマクラシックの存在を知ってもらわなければと思い、2023年5月に鎌倉海浜公園で⾏われた「鎌人いち場」というコミュニティーマーケットに出展してチラシを配りました。暑い中チラシを1枚1枚配るのはとても大変でしたが、そのときに鎌倉市長の松尾崇さんにお会いできたのはうれしかったですね。実はその頃、演奏会のアンコールで市長が鎌倉市歌の指揮をしてくださったら面白い試みになるのではないか、と考えていて。とっさにお願いしたところ、その場でご快諾いただけたんです!

友人と7時間チラシを配布した「第23回 鎌人いち場」のブースの前で。左が阿部さん、中央が松尾市長

――2024年2月に行われた「カマクラシックオーケストラ 第1回特別演奏会」の感想を教えてください。

プロジェクトを立ち上げてから1年4カ月、少しずつ積み上げてきたものが演奏会という形になったことをうれしく思っています。演奏会を実施するにあたり、地元の複数の企業から協賛していただけて、地域密着型オーケストラであることを実感することができました。

一方で、演奏会までの活動を通して、カマクラシックのコンセプトをより明確にアピールしたい、という課題も見つかりました。僕が代表を務めていることから「若い人だけでやっているオーケストラ」という印象を持たれてしまうことがあって。「鎌倉好き」という共通点を持った幅広い年代の方が参加しているのがカマクラシックの良さであることを広めていきたいですね。

第1回特別演奏会の様子 。チケットは前売り時点で完売に。山田耕筰『序曲ニ長調』などを演奏。アンコールでの松尾市長の指揮も大好評

――大学ではどのようなことを学んでいますか?

専攻は生涯学習ですが、他にもいろいろな授業を受講しています。音楽だけではなく芸術文化全般に関心があるので、「舞踊史」(文学部設置科目)や「ロシア芸術の現在1・2」(文学部設置科目)などの講義も受講しました。カマクラシックの代表を務める上では、「起業家養成講座」(商学部設置科目)や「パブリックリレーションズ概論・特論」(GEC設置科目)での知見や、知り合った学生たちの活躍がとても刺激になっています。

また、早稲田大学に入って、人間関係が広がったのはとても良かったですね。授業や寮で築いた交友関係はもちろんですが、大学の校友(卒業生)の団体である中野稲門会や鎌倉稲門会に参加したことで年配の方々と交流したり、カマクラシックをアピールする機会をいただけたりもしました。

――2025年1月に第2回演奏会の実施が決定しましたね。カマクラシックオーケストラ、そして阿部さんの今後の目標について教えてください。

第1回から参加してくれた方々に加えて新たなメンバーも加入してくれたので、より居心地の良い団体となるように努めていきたいです。

次回の演奏会は、もっと地域全体を巻き込んで盛り上げていきたいです。例えば、会場である鎌倉芸術館で地元のお店のブースを出展してもらうなど、ホールの中でクラシック音楽を聴くだけではない、いろいろな角度から鎌倉を楽しめるようなコンサートにしたいと思っています。第1回の会場は小ホールでしたが 、第2回は1,500席もある大ホールを押さえたので、より多くの人に楽しんでいただきたいですね。

僕自身は、カマクラシックの活動と就活の両立を模索中です。カマクラシックを運営する中でマーケティングの思考を意識するようになり、企画や PR を考える仕事に興味を持っています。大学卒業後もカマクラシックの活動は続けて、ライフワークとして大切にしていきたいですね。音楽の力で鎌倉をさらに盛り上げていけるように、精いっぱい頑張っていきたいです。

第873回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
文学部 4年 加藤 志織

【プロフィール】
神奈川県鎌倉市出身。横須賀市立横須賀総合高等学校卒業。好きな作曲家はチャイコフスキー。趣味は読書、バレエ鑑賞、日向坂46を推すこと。鎌倉市長になることが将来の目標。写真は、FMヨコハマのラジオ番組に出演し、カマクラシックを紹介したときのもの。

カマクラシックオーケストラのX:@kamaclassic2022

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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