Waseda Weekly早稲田ウィークリー

News

ニュース

学生歴代3位! マラソンサークル出身、異色の早大生ランナー 実業団目指した4年間

「世界の舞台で走れる選手を目指したい」

法学部 2024年3月卒業 小林 香菜(こばやし・かな)

写真左:「第43回大阪国際女子マラソン大会」での様子
写真右:戸山キャンパス 学生会館にて

2024年1月に行われた「第43回大阪国際女子マラソン大会」で、全体12位の2時間29分44秒でゴールし、学生歴代で3位相当の記録を残した小林香菜さん。なんと体育会の競走部には所属せず、主にランニングサークル「早稲田ホノルルマラソン完走会」で活動してきたという珍しい経歴の持ち主です。これまで「富士山マラソン」や「秋田100キロチャレンジマラソン」など、多くの大会で輝かしい結果を残してきました。大学卒業後は、念願だった実業団選手として新たなステージへ歩を進める小林さん。今回は陸上競技を始めたきっかけから、マラソンを続けてきた4年間の苦楽、今後の目標などについて聞きました。

――陸上競技を始めたきっかけを教えてください。

陸上は中学2年生の頃に、陸上部への途中入部という形で始めました。1年生の頃は水泳部に所属していたのですが、昔から運動はかなり苦手。自分が陸上をやるなんて夢にも思っていませんでしたね(笑)。走ることに興味が湧いたのは、毎年秋ごろに中学校で行われている駅伝練習がきっかけです。練習には運動系の部活に所属する生徒は参加することが通例で、私も嫌々ながら参加することになりました。しかし、いざ走ってみると、身体が長距離走に向いていたのか、結構楽しかったんです。放課後に自主練まで行うようになり、頑張った分だけ結果が返ってくる長距離走のことがいつの間にか大好きになりました。その後、陸上部に転部し、本格的に長距離走の練習に取り組むように。地道に練習を重ねたことで、3年生の頃には3000mの選手として陸上競技の全国大会に出場することもできました。

写真左:中学3年生のときに参加した「群馬県駅伝競走大会」での様子。先頭を走るのが小林さん
写真右:同時期に参加した「群馬県陸上記録会」での様子。最後まで力強く走り、当時の自己ベストを大幅に更新した

高校でも陸上部に入部しましたが、あまり結果は振るわず…。私自身が中学での記録に満足していたことに加え、交通事故で大けがをし、走る機会も体力も激減してしまったんです。思うように結果を残せず、高校時代には大きな悔いが残りました。そのような背景から、自分が好きになった陸上の楽しさをもう一度感じたいという思いが芽生え、大学でも競技を続けることにしたんです。

中学卒業後は早稲田大学本庄高等学院に進学し、陸上部で駅伝の練習に励んだ(写真中央が小林さん)

――体育各部の競走部ではなく、サークルを選んだ理由はなんだったのでしょう? また、サークルの普段の活動や雰囲気を教えてください。

もちろん最初は競走部への入部も視野に入れていたのですが、女子部員が少ないため駅伝大会に参加できないことが分かったんです。5000mの長距離選手として入部しようか迷いましたが、もっと長い距離を走ってみたいという思いから、高校の先輩も所属していた「早稲田ホノルルマラソン完走会(以下、ホカン)」に入会することにしました。

ホカンは「箱根企画(箱根駅伝の往路コースを12人前後で駅伝するイベント)」をはじめとするマラソンイベントの開催や、市民大会への参加を主な活動としているインカレのランニングサークルです。サークルは和気あいあいとした雰囲気で、普段は毎週末に皇居や代々木公園周辺を走っています。

サークルメンバーと「箱根企画」に参加したときの様子(写真前列、右から二人目が小林さん)

――サークル活動を楽しみながらも、難関の実業団への入団を考えるようになったのはいつ頃でしたか?

ホカンでの活動はとても楽しかったのですが、だんだんと物足りなく感じてきてしまい、2年生になる頃には自主練習を毎日行うようになりました。また、市民大会に出場する機会も年10回ほどに増え、より本格的にマラソンに打ち込む中で、実業団選手という進路を意識するように。入学前は公務員を志望しており、大学3年生の頃には省庁のインターンシップに参加するなど、本格的に就活に打ち込んだ時期もありました。しかし、就活を続ける中で、高校や大学で陸上を主軸にした道を選択しなかったことへの後悔に気付いたんです。悩みに悩みぬいた末、今度こそ勇気を出して陸上を本気でやろうと決心し、親を説得して、実業団選手という道を進むことにしました。

ただ、実業団に声を掛けられるような学生は大学の部活に所属しているのが普通で、個人で走ってきた私は周囲と比較してハードルが高い。おまけに、多くの実業団はスカウトの際に5000mや10000mなどトラックでの記録を参考にするのですが、私はトラック競技が大の苦手。少しでもマラソン大会などで結果を残そうと、より一層練習に励むようになりました。

いつも小林さんが練習していた杉並区の和田堀公園第二競技場。自宅から6kmある距離を、毎日自転車に乗って通っていたそう

ホカンの活動には積極的に参加し、自主練として毎朝近所の陸上競技場で10kmほど走ってから大学に通っていました。しかし、コーチも仲間もなく、ひたすら一人で走り続けるというのは精神的にかなりつらく…。部活と違い、コーチから指導を受けられる訳でもなく、自分で全てのトレーニングメニューを考え、苦しくなったらいつでも止められてしまう。弛(たる)んでしまわないよう自分に活を入れ、練習だけでなく、市民大会に積極的に出場するなどして、自分なりにモチベーションを保ってきました。心が折れてしまいそうなときもありましたが、本気でやろうと自分で決めたことから逃げたくはなかったんです。

また、色々な伝手を頼っていくつかの実業団に連絡し、練習に参加させてもらったこともあります。時には、サークルで陸上をやってきたことに不信感を抱かれたこともありましたが、それでも諦めず実業団への道を目指しました。最終的には3年生のときに出場した「第42回大阪国際女子マラソン」などでの結果が認められ、4年生の7月に大塚製薬陸上競技部から内定をいただけたんです。孤独に努力した日々が報われたようで、本当にうれしかったです。

「第43回大阪国際女子マラソン大会(2024年1月)」には、大会の育成枠「ネクストヒロイン」として出場した(写真後列左端が小林さん)

――小林さんは「大阪国際女子マラソン」をはじめ、多くの結果を残していますが、特に印象に残っている大会を教えてください。

これまで数十回と大会に参加してきましたが、自分にとって初のフルマラソンは富士河口湖町で行われている「富士山マラソン」でした。2年生の頃に友達と出場し、レース途中の休憩所でスイーツなどを食べながら楽しく走ったことは今でも大切な思い出です。その後、3年生、4年生と女子24才以下の部で連続優勝を決め、大会記録も更新できました。

ホカンのメンバーと優勝の喜びを分かち合った(写真後列中央が小林さん)

もちろん、「大阪国際女子マラソン」も印象深い大会の一つですね。国内でも特に有名で、一定基準の公認記録がないと参加できないハイレベルな大会です。「実業団に進む足掛かりになれば」と3年生の頃に初めて参加しましたが、レースの前半を調子良く走ることができ、好タイムの記録を残せました。今年はあまりコンディションが良くなかったものの、応援に来てくれたホカンの友達が励ましてくれたおかげで、昨年の記録を更新できています。他にも、ホカンのメンバーと共に参加した「秋田100キロチャレンジマラソン」や私の地元で行われていた「ぐんまマラソン」など、マラソンを通して多くの思い出ができた4年間でした。

写真左:「第43回大阪国際女子マラソン」での様子。当日はサークルの友人が手作りうちわで応援してくれたそう(中央が小林さん)
写真右:「秋田100キロチャレンジマラソン2022」では初出場ながら好ペ―スで走り、女子の部で見事優勝を果たした(前列左から2人目が小林さん)

――大学ではどのようなことを学んでいたのでしょうか? また、早稲田での4年間を振り返って、今思うことを教えてください。

入学前は公務員を志望しており、法律にも興味があったことから法学部を選びました。さまざまな法を学びましたが、特に印象に残っているのは加藤雅之先生の民法ゼミでの活動ですね。主に民法に関する討論を行っており、かなり難しい内容でしたが実りのある時間を過ごせました。

学問やサークルなど、充実した4年間を過ごしてきましたが、やはりマラソンに出合ったことが自分にとって一番の収穫です。「競走部に入ればよかった」と後悔することも多々ありましたが、ホカンの仲間たちに支えられながらどうにか腐らずに続けることができました。これまで応援してくれた方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

――最後に、実業団での意気込みや、今後の目標を教えてください。

実業団での競技継続は私にとって新たな挑戦です。大学ではほとんどの時間、ずっと一人で走り続けてきたので、先輩方に囲まれての練習では多くの刺激を受けることになるはず。まずは、環境の変化に慣れていき、一日でも早く結果を出せるように頑張りたいです。かねての課題である、トラック競技の記録も伸ばしていきたいですね。将来的には、世界レベルの走りができる選手になりたいです。もちろん、今のままでは実力不足ですし、自分よりもレベルの高い選手もたくさんいます。コツコツと練習を重ね、一歩ずつ進んでいけたらと思います。

実業団での練習風景。最初に参加した際は練習レベルの高さに驚いたそう(小林さんは一番左)

第860回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 2024年3月卒業 佐久間 隆生

【プロフィール】
群馬県出身。早稲田大学本庄高等学院卒業。ランニングサークル「早稲田ホノルルマラソン完走会」で、陸上競技に注力していた。アウトドア系の活動に以前から憧れがあったそうで、大学入学時に思い切って登山サークル「山小屋研究会」(公認サークル)にも入会。3年間で槍ヶ岳や日本アルプスなどの山に登頂した。

2022年8月に槍ヶ岳に登頂したときの様子(写真後列の右から2人目が小林さん)

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる